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社会

「コロナを止める最後のチャンス」東京都医師会長の悲痛な叫び

尾崎治夫(東京都医師会会長)&吉澤恵理(医療ジャーナリスト・薬剤師)

2020年08月13日 公開 2022年07月05日 更新

 

ワクチンへの過度な期待…早急な開発、実用化は難しい

加藤勝信・厚生労働相は7日、英製薬大手アストラゼネカ社から日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意したと発表し、新型コロナの特効薬もない現在、ワクチンへの期待は高まる。

「ワクチンに対しては『できればいいですよね』という期待はあります。とはいえ、ノーベル賞を受賞した本庶佑先生などもおっしゃていますが、ワクチンの開発、実用化はすぐにというのは難しい」

一般的にワクチンの開発には10~15年かかる。これに対し、新型コロナウイルスのワクチンの開発は急ピッチで進められており、英製薬大手アストラゼネカ社が開発するワクチンも現在すでに第三層試験(人への臨床試験)まで来ている。ワクチンへの期待の一方でコロナウイルスの特性ゆえの不安要素もある。

「友人の1人である獣医師会の重鎮の話によると猫ではコロナ感染症はすでに10~20年に渡り出ている。猫がコロナウイルスに感染すると重症化すれば腹膜炎などを起こし死に到る。

獣医師たちがこぞってワクチンを作るため奔走してきたがウイルスの変異がありすぎて効果的なワクチンが未だ作れない。新型コロナウイルスにも同様の変異が多く報告されていることがワクチンへの大きな不安要素ではあります」

変異が多いということはようやくワクチンが開発されたとしても『効果がない』という事態に落ちいいる可能性もある。

「例えば、天然痘ウイルスは2本鎖DNAウイルスで非常に安定しており変異が少ない。だからこそワクチンが非常に有効で撲滅することができました。

これに対し毎年、多くの方が摂取するインフルエンザワクチンは変異が多く、インフルエンザワクチンがあってもインフルエンザは撲滅できない。コロナウイルスはインフルエンザワクチン以上に変異があり、ワクチンによる予防は簡単ではないかもしれない」

――ワクチンが救世主とならないなら我々は絶望するしかないのでしょうか...?

「そんなことはありません。免疫学者で大阪大名誉教授の宮坂昌之先生が『人工抗体』が治療薬として期待できるとおっしゃってます。回復した患者から「中和抗体」というウイルスを殺せる抗体だけを取り出し、クローン技術を応用し増やして薬にする。これは技術的にも可能だと思いますし治療効果もできるのではと考えています」

ワクチンの確保も重要だが、日本初の治療薬の研究開発に国は積極的に支援して欲しい。

 

弱毒化の言説は推測の域を出ていない

『コロナの弱毒化』『コロナはインフルよりも死亡者が少ない』などの見解を示す専門家や医師がいる。感染拡大する中、楽観視したい気持ちは理解できるが、そう言った発信は多くの人の感染予防意識を低下させるのではと不安に感じる。

「そういう人たちは経済を動かしたい派だと思います。弱毒化については、世界でそう言ったデータが出ているものもありますが証明されていない。あくまで推測の域を出ない。

日本で言えば、死亡者数が減っているのは軽症、中等症、重症と段階に応じての治療が確立してきているからであって弱毒化の表れではありません。

しかし、そういた情報を都合よく捉えたい人たちがいる。一つ、誤解がないようにお伝えしたいのは『全ての医師が医師会に入っているわけではない』ということです」

医師会は、医師として自身をブラッシュアップするために自主的に入る組織である。東京都の医師は約4万人、そのうち医師会に所属する医師は約2万である。実は医師としての在り方には大きな格差があるのだ。

「医師会に入らず自分勝手にやっている医師はコロナに対しての見解が違うと思います。医師会に入っている医師はJMAT(日本医師会により組織される災害医療チーム)の訓練を受けている人も多い。

感染症療養の講習会もあり、PPE(個人防護具)の脱着訓練もしっかり行っています。そういった訓練をした医師にホテル療養などを担当してもらっています」

また医師会による新型コロナウイルスの段階別症状の共有もしているという。

「医師会で新型コロナの軽〜重症までの情報をしっかり共有していますから、医師会には「コロナは風邪と同じだ」などと思っている医師は一人もいないと思います」

新型コロナウイルスに関する感染予防、治療など様々な情報溢れている現在、重要なのは正しい情報と対策である。個々のネットリテラシー、ヘルスリテラシーを上げることも必要だろう。

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