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部下が本音で話す「たった2つの聞き方」

本間浩輔(Zホールディングス常務執行役員)

2021年04月13日 公開 2023年08月17日 更新

上司と部下とのコミュニケーションの場として近年注目を集めている「1on1」。ともすれば上司からの圧力を感じさせかねないため、上司の質問力や聞く力が問われる場面である。日本ではいち早く、2012年からヤフーに1on1を浸透させてきた本間浩輔氏に、部下が本音で話す質問力について聞いた。(取材・構成:塚田有香)

※本稿は『THE21』2021年4月号より一部抜粋・編集したものです。

 

部下思いの上司ほど「詰問」をしがち

1on1とは、文字通り、上司と部下が1対1で定期的に行なう対話のことだ。日本ではヤフーがいち早く導入したことで話題となり、最近では多くの企業に同様の取り組みが広がっている。

同社の人事の責任者として、社内に1on1を浸透させてきたのが、本間浩輔氏だ。同社では、部下の成長を支援する施策として、この取り組みを続けている。そこで本間氏に、「上司が部下を育てるためには、どんな質問をするべきか」を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

「『質問』って、実は危険なテーマなんですよ。上司が『部下の能力を引き出すために質問しよう』などと考えると、たいてい失敗に終わります。

なぜなら、上司と部下は対等ではないから。上司が投げかける質問は、時に鋭い刃になって部下に刺さってしまう。それを上司が自覚しないまま質問するのは大変危険であることを、まずは認識するべきです」

上司は部下を評価する権限を持つので、部下が上司に気を使ったり、萎縮したりするのは当然のこと。場合によっては、上司の質問が部下を追い詰めることさえある。

「例えば、部下が『昨日、ある雑誌の取材を受けたのですが、うまく話せなくて失敗しちゃったんです』と切り出したとします。

上司がここでやってはいけないのが、質問を畳みかけること。『ちゃんと準備したの?』『受け答えの練習はした?』『会社の広報には報告してあるよね?』と次々に投げかけるうちに、『質問』が『詰問』になるからです。

部下思いで育成意欲の高い上司ほど、あれこれ聞きたくなるのですが、そんなことをしても部下は引くだけ。上司に詰問され続けた部下は、自分で考えずに何でも上司に聞くようになるか、逆に、上司とは何も話さなくなるか。どちらにしても、部下は育ちません」

 

「状況を詳しく教えて?」で部下を内省させる

質問力を高めようと、コーチングやカウンセリングの本を読んで勉強したことがある人もいるだろう。だが、「テクニックに走りすぎるのは危険」と本間氏は指摘する。

「先ほどの例のように部下が失敗を打ち明けた場合、『その出来事からあなたが得た学びを三つ挙げてください』『3年後に振り返ったとき、この経験はどう活かされていると思いますか』というような『模範質問』が、コーチングの教本などでは紹介されています。

でも、上司にこんな質問をされたら、部下は『模範回答』をするに決まっています。『こう答えれば、上司は気に入るだろう』と忖度して、本音は話しません。

これらの質問は、業務上の上下関係がないプロのコーチとクライアントが対等に話す場合なら効果的ですが、職場の上司と部下の間では意味がありません」

では、上司は部下にどのような質問をすればいいのか。本間氏は「難しく考えず、次の2点だけ意識すればいい」とアドバイスする。

「一つ目は、部下自身がそのときの状況をもう1度思い浮かべるような質問をすること。

『昨日、失敗しちゃって』と言われたら、『それって、どんな状況だったの?詳しく教えて』と返せばいいのです。

ヤフーでは1on1の目的を、社員の経験学習を促進することだとしています。経験学習とは、経験から学ぶことに重きを置く人材育成の手法です。これを促進するには『内省(振り返り)』が欠かせません。

社員が具体的経験を振り返り、自分なりの教訓を引き出して学びに変え、それを次の機会に試して、学びが活かせたかどうかをチェックする。このPDCAサイクルを回すことが重要であり、そのための場として1on1を活用しています。

本人に内省してもらうには、具体的経験が自然に思い浮かぶような質問をすること。それは、『そのときの状況を詳しく教えて?』のひと言で十分なのです」

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上司は「壁」に徹するべし

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