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「音楽は人を救う」の科学的根拠とは? モーツァルトをすすめる7つの理由

小林修三(湘南鎌倉総合病院院長代行/昭和音楽大学客員教授)

2021年05月29日 公開 2024年12月16日 更新

湘南鎌倉総合病院の院長代行である小林修三医師は、無類のクラシック音楽好きだ。大規模病院を統率する傍ら音大の客員教授も務めるほどで、多忙な1日のスキマ時間を見つけてはクラシックを聴く。「ただ好きだから」との理由だけではなく、心身を癒しメンタルケアに有効だからだ。

ここでは、クラシック音楽、とりわけモーツァルトの音楽がどのように心身の不調に役立つのかを、科学的根拠に基づきながらお伝えします。

※本稿は、小林修三著『モーツァルトで免疫力を鍛えるコツ』(PHPエディターズ・グループ)より、一部抜粋・編集したものです。

 

健康な体づくりに重要な「脳への刺激」

健康な体づくりに大切なことは何でしょうか?

それは、脳がうまく刺激されることです。音の刺激も視覚の刺激も、匂いや肌感覚の刺激も脳への刺激となります。ざっくりといえば、耳・目・鼻・口(舌)・皮膚という感覚器官と、もうひとつは腸を刺激するということです。これらは、脳と連動しています。

脳のなかでも大脳、とくに、好き・嫌いや安らぎ、恐怖といった情動をつくりだす「扁桃体」を中心とした「大脳辺縁系(原始的な脳と呼ばれる領域)」がうまく刺激されることが大切です。大脳辺縁系が心地よく刺激されると、大きく2つの方向で体に良い変化が起こります。

ひとつは、大脳から「迷走神経(12対ある脳神経のうちのひとつ。第10脳神経)」を通って、全身の臓器にシシグナルが伝わるということ。迷走神経は、「自律神経」のうちリラックスモードのときに働く「副交感神経」の代表です。

副交感神経である迷走神経が活発になることで、血管が広がり血圧が下がるなど、さまざまな生理学的な変化が起こり、心身のバランスを整えてくれるのです。

もうひとつの体に良い変化は、ホルモン分泌の変化です。大脳辺縁系に心地よい刺激が入ると、ストレスホルモンの分泌が抑えられて、ドーパミンやオキシトシン、セロトニン、β(ベータ)エンドルフィンといった、いわゆる「幸せホルモン」が分泌されるのです。

 

心地よい音楽で増加する「幸せホルモン」

では、音楽と「脳への刺激」の関係をみてみましょう。

音は耳から内耳に入って「内耳神経(脳神経のうちのひとつ。第8脳神経)」に伝わり、「脳幹」を通って、さらに大脳の中に入っていき「視床」と呼ばれる部分に届きます。視床は、視覚、聴覚、皮膚感覚等を中継する、とても重要な部分です。

視床を経由して大脳辺縁系に入り、そこでサンプリングされて、大脳皮質の「聴覚野」へと送られます。聴覚野に届くと、ようやく私たちは音を音楽として感じられるようになります。

音は、おおまかにはこうした経路をたどって届けられるのですが、この経路の途中にある大脳辺縁系の「扁桃体」にシグナルがいったときに、「心地よい」とか「なんだか気持ち悪い」などと、情動が動かされます。感情、情動、恐れ、快感といった瞬間の刺激は、扁桃体で即座に感じてくれます。

たとえば、攻撃されると怖くて逃げます。きれいなものや美しいもの、気持ちのいいものを見たり聴いたりすると、近づきたくなります。和音は、こうした扁桃体を介した情動の変化に影響を与えるのです。

そして、その音楽の刺激が心地よいと感じられれば、視床やその周辺の大脳辺縁系、脳幹などが一体となって働き、ドーパミン、オキシトシン、セロトニン、βエンドルフィンといった「幸せホルモン」が分泌されます。ですから、クラシック音楽を聴くと、こうした幸せホルモンが分泌されるのです。

モーツァルトをはじめとしたクラシック音楽は、まさに大脳辺縁系への心地よい刺激になります。穏やかなクラシック音楽を聴くと、大脳辺縁系が心地よく刺激され、迷走神経が活性化して心身が整うとともに、幸せホルモンも分泌され、不安やストレスの解消へとつながり、免疫力もアップするというわけです。

音楽というのは、単なる空気の振動としての音を超えて、私たちの心身に直接的に、間接的に、さまざまに働きかけてくれます。

私は医師ですが、医師でもどうにもならないことがあります。そんなときに、流れる音楽が、人に勇気と希望、そして安らぎを与えてくれます。音楽で人を救える――私はそう信じています。

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音の性質は脳波に影響を与える

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