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「感覚的な指導」に効果はある? 元侍ジャパン監督が指摘する“ダメな教え方”4選

仁志敏久(横浜DeNAベイスターズファーム監督)

2021年06月03日 公開 2024年12月16日 更新

現役時代に読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズで強打の内野手として活躍し、数々のタイトルに輝いた仁志氏。引退後は大学院に通い心理学やコーチング理論を学び、侍ジャパンU–12監督に就任。

2020年に開催された「第5回WBSC U–12ワールドカップ」において過去最高成績の準優勝に導いた。現在、横浜DeNAベイスターズファーム監督を務める指導の流儀とは。本稿では、家庭や職場でやりがちな指導の「勘違い」についてご紹介する。

※本稿は、『指導力 才能を伸ばす「伝え方」「接し方」』 (PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。

 

「プロに向けた指導」と「一般人に向けた指導」を区別する

プロ選手は子供のころから目立った成績を収めた人が多く、アマチュア時代もプロに入ってからも多くの修羅場を経験しています。

技術面においても、プロとして一定以上の活躍をできたということ自体、成功体験とも言えるものですから、指導に大きな間違いがあるとは思えません。あるレベル以上の人たちの「感覚」は、指導においても財産と言えます。

たとえば、ボールを上から打ち込むようにと指導する人。こういった人はしっかりとボールを打ち込み、強いライナー性の打球をめざす傾向があり、指導としては一般的で選手のレベルを問わず広く活用できる考え方です。上から打つという表現も、実際にバットはボールよりも上方に構えているので間違いではありません。

一方、子供のうちは小さくまとまらず強く大きく振りなさいと言う人もいる。昨今であればとくに、メジャーリーグからの影響やソフトバンクホークスの柳田悠岐選手のようなフルスイング系のバッティングです。

体を強く回転させ、ボールをより遠くへ飛ばせるようなバットの軌道や下半身の使い方を主流に指導する人もいます。

こういった感覚は、指導者の成功体験に基づいたものですし、その技術に関連するコツも当然もち合わせていますから、トライしてみる価値はあるでしょう。

しかし、ここで指導者が気をつけなければならないのが、"自分の感覚"を伝えているという自覚。

プロ選手の技術のなかには、時として「その人にしかわからない、その人にも明確には言語化できないようなこと」が含まれている場合もあり、ただただ思うままに指導してしまうと相手は「?」となってしまう瞬間があったりもします。

なので、経験に自信がある人ほど、自分なりの感覚を話す場合と、一般的に誰にでも当てはまる指導をする場合とを使い分けないといけないのです。

 

丁寧かつ親切に教える

感覚というコツは大変貴重なものです。そのコツを探すためにプロ選手は毎日試行錯誤を繰り返しているのですから、もし誰かの感覚を聞いてやってみたら上手くはまったという選手がいたとすれば、それは困難な技術の模索を省くことができたということになり、非常にラッキーなケースとなります。そういった感覚を上手く教えてくれる人は貴重な存在でもあります。

逆に、たいへん迷惑なのは、自分の感覚のみで指導してしまうケース。簡単に言うと、言っていることが自分の感覚であるという自覚がなく、あたかも誰にでも当てはまる常識だととらえてしまっている人。

こういった人には、言った通りできないと「あいつはダメだ」「言ったようにやらない」「言うことを聞かない奴は使わない」となることが多い。

自分の感覚がすべてだと思い込むことは、相手にとって迷惑であり、指導者としての視野が狭いことの表れです。自信のない指導も問題ですが、自分の指導は絶対だと過信している指導はもっと問題です。経験がある人ほどそうなりがちなので、注意が必要です。

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"感覚を教える"と"感覚で教える"

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