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プーチンはなぜ、ロシアの「カリスマ」なのか? その素顔とは?

菅野沙織(大和総研アジア事業調査部兼CIS担当副部長)

2012年03月06日 公開 2022年12月27日 更新

ロシアのプーチン首相が、4年ぶりに大統領に返り咲いた。日本では強権的でカリスマ性があるイメージのプーチンだが、ロシア国内ではどのように受け止められているのだろうか。
モスクワ出身で日本に帰化、大和総研に勤める菅野沙織氏にお話をうかがった。
 

菅野沙織
大和総研アジア事業調査部 兼CIS担当副部長。モスクワ生まれ。1991年、中央大学の研究員として来日。98年、経済学博士。2002年、日本に帰化。06年、大和総研入社。著書に『ロシア人しか知らない本当のロシア』、『ジョークで読むロシア』(ともに日経プレミアシリーズ)など。

 

プーチン大統領時代に自信を回復したロシア

 ロシア国民にとって、プーチンが大統領を務めた2000~08年の8年間は「黄金時代」だった。
1991年のソ連崩壊後、エリツィン政権は新生ロシアの民主化を進めたが、98年に通貨危機でデフォルトを起こすなど、経済は混乱した。

「国民は惨めな思いをしていた。かつての『大国』の面影はなく、精神的につらかった」(菅野氏)

そんなときに、ロシアの経済と自信を回復させたのが、プーチンだった。

「運がいいことに、プーチン大統領が就任してから、石油価格が大きく上昇したのです」(菅野氏)

ロシアは、サウジアラビアに次ぐ、世界第2位の石油輸出国だ。
石油の輸出による収益を、プーチンは、真っ先に外国に対する債務の返済に充てた。これにより デフォルトで失われた外国からの信用を回復し、外資の導入が進んだ。

「ソ連時代からの国内企業は、宇宙ロケットはつくれても、自動車や家電などの民生需要に応えるには不十分でした。外資の導入により、民生需要に応える産業が成長したのです」(菅野氏)

また、石油による収益は、直接的にも国民生活を潤した。98年からの10年間で、平均収入はドル換算で約10倍に急増した。
対外的な借用回復と経済成長により、G8にも正式に加わることができ、諸外国との外交も毅然としたものになった。
ロシア国民にとって、プーチン大統領時代の8年間は、まさに「黄金時代」として記憶されているのだ。
 

「一生懸命な努力家」というキャラクター

プーチンが支持される理由はそれだけではない。個人のキャラクターも要因だ。
プーチンといえば、派手なパフォーマンスが目立つ。潜水艇でバイカル湖底に潜ったり、戦闘機やF1カーに乗ったり、優雅にピアノの演奏を披露したこともある。また、元KGBという経歴から、「冷酷な紳士」というイメージもある。
しかし、ロシア国内でのイメージはそれとは違うようだ。

07年の国際オリンピック委員会総会で、ソチ冬季五輪の誘致のため、プーチンは英語やフランス語でもスピーチをした。菅野氏は、その様子をロシアの空港のモニターで観た。

「ドイツ語が得意なことで知られるプーチンの英語でのスピーチとフランス語での挨拶は、その日のために暗記したという印象が強かったが、感動している人が多かった。『不得意なことでも、一生懸命に努力している』というところに、胸を打たれるのです」(菅野氏)

菅野氏は、00年9月、来日したプーチンと経団連との懇談会に、日本側の通訳として立ち会った。そのときの印象も、「いつも忙しく働いている」というものだった。
スポーツをする姿や鍛えられた肉体をみせるパフォーマンスも、「一生懸命に努力している」という印象を与える。
また、記者会見での受け答えなどは、冷淡なものではなく、率直で人間味があるという。
もっとも、パフォーマンス自体はロシア国内でも冷ややかにみる人が多く、ジョークのネタにもされているそうだ。

「海底遺跡に潜って古代ギリシャの壷を引き揚げたことがあるのですが、そのときには、こんなジョークが流れました。『地球外生命体をいちばん早く見つけ」る方法は、大統領選前にプーチンに頼んでおくことさ』。何だってやってみせてくれる、とからかっているわけです」(菅野氏)

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「ほかにいないからプーチン」という選択

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