ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する』(グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳、かんき出版)。
この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
「努力を最小化して成果を最大化する」
世界的な大ヒット作となっている『エッセンシャル思考』。その続編となる本書『エフォートレス思考』も大きな反響を呼んでいます。前作では、本当に大事なことを選び出す考え方が紹介されました。すべきことであふれ、何に集中するかを考える時間が取れない状況にある人は多く、重要な示唆にあふれた作品でした。
『エッセンシャル思考』の出版後、著者自身が優先順位の低いことを極限まで減らしていっても、忙しすぎるという状況に陥ったと言います。本書の目的は、そんな状況を根本から変えることにあります。「何を」やるかに焦点を当てた前作と異なり、本作では「どのように」やるかが中心的なテーマです。
副題にもあるように、エフォートレス思考という言葉には、努力を最小化して成果を最大化する、という意味が込められています。魅力的ですね。そんなことができたら、余った時間を使って人生でやりたいことがもっとできそうです。
エフォートレス思考とはつまり、レバレッジが効くことに時間を使う、というようにも読み取れます。1の努力で1の成果を単発で生むのではく、1以上の成果を継続的に出す、というようなイメージです。以降で、本書の内容からいくつかのトピックを取り上げていきます。
効率的に成果を上げる「エフォートレスの本質」
エフォートレスという言葉を理解するためには、「頑張る」という言葉との対比をするといいでしょう。本書の記載を引用すると、頑張るとは「大事なことをやるのは死ぬほど大変だ」という考えを持つことです。そして、エフォートレスでは「大事なことをやるのはいちばん簡単だ」という考え方をします。
本書の中では「頑張る」は上り坂で重い球を押し上げていくようなことで、「エフォートレス」は下り坂でその球を転がしていくような絵が描かれています。
どのようにそのエフォートレスを実現するのか、という具体論に進む前に、それを生み出す精神構造を少し考えてみます。私は様々な働く人と接した中で、頑張ることそのものが目的になってしまっているケースを散見してきました。
遅くまで残業をしている人に対しては、「頑張ってるね」というような声はかけやすいものの、「もっと効率的な仕組みを作りたいね」とは言いにくいものです。
傾向として、頑張ることそのものが正義になりやすいのです。私自身も、仕事からの帰り道で、「今日は頑張ったぞ」と自分に慰めの言葉を思い浮かべがちです。ただ、それにはやはり弊害があります。
例えば、事業のような成果で評価されるべきプロジェクトがあったとします。会社ではセールス担当のように明確な数字が結果となる職種はむしろめずらしく、ほとんどの仕事は定性的な面を考慮して成果を見ることになります。人事評価の際に強く成果を意識しないと、毎日遅くまで働いて頑張っている人の評価が高く、同じ程度の成果でも定時で帰る人の評価が相対的に低くなりがちです。
しかし、それが望ましい結果につながらないのは明白でしょう。サービス残業や生活残業がメンバー全体で常態化すると結果としては個人も全体も不幸になります。効率的に成果を上げる。現代社会に生きる私たちは、仕事においてこの原則を無視してはいけないのです。