めんどくさいのはやる気がないからではない?テキパキ動く意外なコツ
2022年07月28日 公開 2024年12月16日 更新
作業療法士の菅原洋平氏は、コツを押さえればすぐにテキパキ行動できるようになるといいます。
練習なしで今すぐに実践できるコツとはなにか?「自分はめんどくさがり」という考えを覆すことができるコツを4つ紹介します。
※本稿は『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
「めんどくさい」と体温の意外な関係
何事もめんどくさいと感じてしまう理由は、意外なところにあります。
それは「体温」。やる気の問題ではなく、行動する体の温度が低いことが理由です。
「自分の体温は正常だけど、テキパキ動く人は体温が高めなの?」ということではありません。
ここでいう体温とは、体の内部の温度である深部体温のことで、私たちが日常的に計測する表面体温よりも1℃程度高いです。そして、私たち人間は、深部体温が高いほど体のパフォーマンスが高くなります。
その深部体温には、1日のうちで上がったり下がったりするリズムがあります。普段の起床時間の11時間後(7時起床ならば夕方の6時)に深部体温が最高になり、起床時間の22時間後(7時起床ならば朝5時)には最低になります。
ここで質問です。起床11時間後に、椅子に座りっぱなしで動かない、または眠気を感じたり、居眠りをしたりすることはありますか?
多くの人は、夕方から夜の早い時間帯に当たると思います。この時間帯にあまり動かないということは、深部体温が上がらないということ。ましてや、眠ってしまうと深部体温は下がってしまいます。
最高体温時の深部体温が低いままだと、夜に向かって下がるはずの深部体温が下がらなくなり、翌朝の深部体温も上がらなくなります。すると、夜になっても眠くならず、眠ったのに疲れがとれず、朝目覚めても元気がない。こんなリズムができあがります。
そもそも動ける元気がない体になってしまったら、たやすいことでも、めんどくさくなりそうですよね。
深部体温は体を動かすだけで上がりますし、体を外から温める入浴や、内部に温かいものを入れる食事でも上がります。
温泉旅行に行ったときのことを思い出してみましょう。
夕方まで観光して、宿に着くとまず温泉に入って、その後食事する。こんなスケジュールだと、夕方の深部体温は特に意識していなくてもしっかり上がっていきます。
すると、夕食後から急激に下がっていくので、いつもより早い時間帯に眠気を感じてぐっすり眠りにつき、いつもより早く目覚めて朝風呂に入る。そこで深部体温が最低体温から速やかに上がって、脳は目覚めてやる気になる。
「旅行に行くときは元気なのに帰ってくると何もしたくなくなる……」
これには、温泉旅行で偶然、夕方の深部体温が上がるスケジュールがつくられていたということが隠れていたのです。
つまり、テキパキ行動できない悩みには、やる気でなく深部体温のリズムという根本的な原因があったのです。
「今これ重要?」一旦立ち止まることが最も効率的
自分はめんどくさがりだ、という人の相談にのっていると、客観的に見ると矛盾している、不可解な行動をしていることがあります。
それは、両手に別の物を持つことです。
同時に複数の作業をしようとして、そのような状態になっているのですが、これは、「今どっちの作業をしようとしているのかわからない」と、脳を混乱させる命令です。
私たち生物の生存戦略は「省エネ」で、基本的には1つのタスクしかこなすことができません。ですから、何かを手に持っているときに、別の作業を思いついたとしても、両手に物を持たないようにしてみましょう。
なぜなら、両手に物を持つと、目にした刺激に注意が奪われて無駄なことをしてしまうからです。
ここでのポイントは、シングルタスクにする=仕事量を減らすではない、ということです。むしろ、シングルタスクにすると、1日を終えたときの達成感は高まるはずです。
ここで質問です。
「効率よい仕事とは、たくさんの仕事ができることだ」と考えてはいませんか?
「効率よい仕事=仕事量が多い」ではなく、「効率よい仕事=重要な仕事を短時間で終える」と、考えを再セットしてみましょう。
仕事でも日常の家事でも、思いついたことは「緊急度の高い」仕事だと感じます。緊急度の高い仕事をこなしていると、交感神経の活動が高まり視野が狭くなるので、「そもそもこの作業は必要なのか?」という自問ができなくなってしまいます。
本当は不要かもしれない作業の量をかせごうとするので、「めんどくさい」の対象になる仕事も増えていきます。
面談ではよく、作業の「重要度」と「遂行度」と「満足度」を分けて点数をつけてもらいます。
これは、作業療法士が使用するカナダ作業遂行測定という方法で、重要度の高い仕事を満足いくようにできたら、生活を豊かにすることができるという考えのもと、その人が「豊かな生活だな」と思える作業とそのやり方を見つけていくときに使います。
これによって、緊急度は高いけど重要度が低い仕事をやめることができます。
例えば、資料にイラストを入れようと思って、ネットで画像検索をして長時間を費やしてしまうという場面。
「今イラストを選ぶのは重要じゃない」と気づければ、その作業をやめて本当に重要なことにエネルギーを配分することができます。
両手に物を持つことをやめれば、緊急度の高い作業がいっぱいあるという「錯覚」に陥るのを避けられます。
両手に物を持ちそうになったら、「今これ重要?」と問いかけてみましょう。