めんどくさいのはやる気がないからではない?テキパキ動く意外なコツ
2022年07月28日 公開
最初だけやってみればめんどくさいは消える
めんどくさいことの代表格である、夕食の片づけ。この場面に注目して、夕食後の行動を区切ってみてみましょう。
夕食を食べ終える/ソファに座る/テレビを観る/夕食の片付けをする……
わかりやすい区切りができましたね。この中の、「テレビを観る」から「夕食の片づけをする」の間にある壁を乗り越えることが難しく、ここで「めんどくさい」が発生します。
行動の流れが途切れてしまう壁が見つかったら、区切りの後の行動を分解してみます。
食器を流しに運ぶ/食器を洗う/食器を拭く/食器棚にしまう……
夕食の片づけを「めんどくさい」と感じるということは、その最初の区切りである「食器を流しに運ぶ」がめんどくさいということになります。では、それを「夕食を終える」の後ろにくっつけるのはどうでしょう。
夕食を食べ終える/食器を流しに運ぶ/ソファに座る/テレビを観る/食器を洗う……
これでも「テレビを観る」と「食器を洗う」の間に「めんどくさい」が発生しそうですね。では今度は、1つの工程の作業量を減らして連結させてみます。
「お皿を1枚だけ」流しに運ぶ/食器を洗う/食器を拭く/食器棚にしまう……
これを、「夕食を食べ終える」の後にくっつけてみます。
夕食を食べ終える/お皿を1枚だけ流しに運ぶ/1枚だけ洗う/1枚だけ拭く/1枚だけ食器棚にしまう/ソファに座る/テレビを観る/残りの食器を片づける
こうして並べてみると、「1枚だけやるんだったら、全部やっちゃったほうが、後がラクじゃない?」と思うかもしれませんね。先ほどまでとは、だいぶ印象が変わりました。
これを実験すると、1枚だけならすんなりできますし、テレビを観た後の片づけもそれほど「めんどくさい」と思わない、という体験ができます。ぜひ、体験してみてください。
この仕組みは、脳の中で、動作を連結させて保存する帯状回、補足運動野が担っています。「めんどくさい」が発生する壁が見つかったら、順番を変えるか、めんどくさい作業を分解して量を最小にして、関連する作業の最後にくっつけると、そのまま保存されます。
一連の動作が保存されているので、後はそれを出力するだけ。これは脳に通じる命令なので、すんなり動けるわけです。
とにかく手で触れ!
「めんどくさい」の正体の1つは「わからない」、つまり、脳にとって情報不足になっているということです。
ということは、わかりやすい情報を脳に届けてしまえば、それは脳に通じる命令になります。
脳にとってわかりやすい情報が2つあります。
それは、触覚と固有感覚です。
触覚とは、触った感触のことです。
触覚は、視覚や聴覚とは違って、塞ぐことができない感覚です。何もしていないときでも、衣類や座面の感触、空気の流れという情報を脳に届けています。
固有感覚とは、筋肉の動きの感覚のことです。
例えば、被検者に、目を閉じたまま右手を顔の前に上げてグッドの形をつくってもらいます。検査者が被験者の右手を持って別の場所に動かし、その場所で右手を動かさないようにします。「左手で右手の親指をつかんでください」と言うと、被検者は迷うことなく右手の親指をつかむことができます。
目で見えていなくても、手足が動かされると、手足の位置がわかります。その動きを担っている筋肉が脳に情報を送ったからです。
触覚と固有感覚が脳に送っている情報は、自分が今ここに存在しているという情報、いわゆる「体で感じた情報」です。
脳は、外の世界のことを知ろうと情報を集めているので、これほど頼りになる情報はありません。
この情報を使って、めんどくささを解消しましょう。
洗っていない鍋を見て「めんどくさい」と思ったら、ひとまずその鍋を触ってみましょう。触りさえすれば、そのまま鍋を洗ってしまうこともあるかもしれません。とにかく触る。それだけです。
または、エアー作業でいいので、鍋を洗うジェスチャーをしてみてください。これだけでも「めんどくさい」が消えて、鍋を洗う気になることもあります。
めんどくさい物がどんな物体で、どんな動作で臨めばいいのか。その触覚や固有感覚の情報は、脳に通じる命令なので、体は動きます。