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生き方

「内向的な人」より「外向的な人」の評価が高くなる根深い理由

榎本博明(心理学博士)

2022年11月08日 公開

 

環境や自己への変革意識が旺盛

人類は、地球上に出現して以来、厳しい自然環境と戦いつつ生きぬいてきた。一方では環境に順応し、他方では自分たちの過ごしやすいように環境を変えてきた。

今、われわれは非常に快適な、豊かな環境のもとにある。人間が創り出した人工的環境としての社会、文化への適応に悩む者はあっても、厳しい自然環境がわれわれの生活の前に立ちはだかるということはまずないだろう。

これは、われわれの祖先たちが、受身で自然環境に順応するのでなく、心のなかに描く理想郷をこの世に創りあげようという積極的な姿勢で努力を積み重ねてきたからに他ならない。

人間には、自分の思い描く理想を何とか現実のものにしたいという欲求がある。とくに内向的人間は、この欲求を強く持つようだ。

現実を生きれば、さまざまな矛盾にぶつかる。正直者が損をすることもあれば、強者が弱者をねじ伏せることもある。人間的価値より経済的価値を追求する者たちが巷にあふれている。

こんな現実に直面して、外向的人間は、とりあえず環境の力に従おうとする。企業のあり方に、自分の職務に、サラリーマン人生に疑問を持ってもしようがない。

批判的な目を向けるよりも、世の中こんなもんさとそのなかをうまく泳ぐことを企てる。忠実に職務をこなし有能な人材として認められることを求める。まず現状を受容しそこで自分を最大限生かそうというわけだ。

これに対して、内向的人間は現実をありのままに認めることができない。内向的人間が見ているのは、目の前の現実でなく、心のなかの理想なのだ。したがって、現実の矛盾を容認できない。

まずはじめに「いかにあるべきか」を問い、それに照らして現状を変えていこうとする。周囲にほぼ無条件に溶けこむ外向的人間と較べて、社会適応が悪いのは当然のことと言える。

現実はなかなか理想通りに動いてくれない。社会ばかりでなく、そのなかに生きる自分自身さえ理想とはかけ離れた存在になりがちだ。ゆえに、内向的人間は、絶えず世直し意識や自己変革の意識に悩まされることになる。

これも強い向上心と理想主義のあらわれなのだから、喜んで悩むのがよい。外から見て同じような職業生活を送っていても、現状を乗り越えるべく小さな努力を重ねている者とそうでない者では、生の密度が違ってくる。

ひとつ気をつけなければならないのは、理想を追求するあまり、他人にも非寛容になりがちなところだ。現実に生きる人間は、だれも完璧ではありえない。弱い面、いたらない面を持つだろう。

それは自分自身を振り返ってみればすぐわかることだ。人それぞれに顔かたちが違うように、胸に秘めている自己および社会の理想像もひとつとて同じものはないはずだ。

せっかく持ち合わせた旺盛な完成への欲求をカラ回りさせないためには、社会や他人を批判するよりも、自分の成長をめざすのがよい。

自分の思い通りに動くのは、そして動かす権利のあるのは、自分だけなのだから。

 

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