1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. 酒,タバコ,菌,コレステロール...老化の最大の原因は何なのか?

くらし

酒,タバコ,菌,コレステロール...老化の最大の原因は何なのか?

南雲吉則(医学博士)

2012年04月27日 公開 2023年01月05日 更新

人生100年時代。少しでも健康寿命を延ばすには、いまから何に気をつければよいのでしょうか。医師の南雲吉則氏によれば、老化の防止には生活全般を根底から見直すことが重要だそう。「コレステロール」「飲酒」「喫煙」が体にどのような影響を与えるのか解説します。

※本稿は、南雲吉則著『実年齢より20歳若返る! 生活術』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

菌は本当に「悪」なのか?

人間の老化を防止するのは、食生活の改善だけではありません。生活全般を根底から見直してこそ「錆びない生き方」ができるというものです。ここでは、そうした意識のあり方についての私の考えを語りたいと思います。

私たちは自分たちの生活環境にとって不利なものを「病」「害」「毒」と呼んで忌み嫌います。たとえば害獣、害虫、病原菌、毒ヘビ、毒キノコ。これらは私たちの生命を脅かすものとして常に警戒されています。害獣、害虫は皆殺しにして、毒ヘビ毒キノコは駆除しなければいけないと考えています。菌やウイルスが付着したものは不潔とみなされ、滅菌・抗菌グッズを買い集め、アルコールを常備している人もいます。

医療に携わる私もまた、これら病・害・毒から患者を守るのが使命だと思ってきました。
しかし、本当にそうなのでしょうか。

「細菌やウイルスは病気を招くもの」と皆さんはひとくくりにしがちですが、腸内を整え消化を助ける乳酸菌や酵母も、これらと同じ細菌類です。それなら、「悪い細菌」と「善い細菌」があるのでしょうか?こうした色分けこそ、人間の勝手な都合の産物ではないでしょうか。

こうした例は他にもありますね。稲を食べるバッタは「害虫」で、バッタを食べるカマキリやクモは「益虫」という表現もそうです。しかし考えてみてください。悪玉菌と呼ばれる菌も、害虫と呼ばれる虫も、人間に危害を与えるために生まれてきたのではありません。

彼らもまた、種の保存のために、必死で生きているだけです。毒とされているものが、薬として活用できることもあります。毒草は漢方薬となり、毒かびは抗生物質となります。新薬開発のためにウイルスを役立てることもあります。

このように、世の中にあふれるものを「毒」か「薬」か、「善」か「悪」か自分の価値観だけで決めつけずに、相手の立場に立って考えることが大切です。それが、錆びない生活習慣を始める際の基本姿勢です。

サプリメントのようによいものと思っていたものが悪く作用したり、抗ガン剤のように毒だと思っていたものが必要となったりすることはしばしばあります。「錆びない生き方」をしよう、と心に決めたなら、そうした柔軟な視点をぜひ、忘れないようにしていただきたいと思います。

 

コレステロールを悪者扱いするな!

実際よりも悪くいわれている生理現象や体内物質は他にもいろいろあります。

コレステロールもその典型です。コレステロールは、細胞の表面の膜、細胞膜を作ってくれる物質であり、なくてはならないものなのだということは前に述べた通り。

「では、善玉コレステロールと悪玉コレステロールとは何ですか?悪玉コレステロールはやはり悪者なのでは?」という質問をよく受けます。しかし善玉・悪玉という考え方がそもそも飽食の人間の都合だけでとらえた、間違った価値観です。

善玉コレステロールとは、末梢にあるコレステロールを肝臓に運ぶ働きをするので、動脈硬化の予防をしてくれるといわれています。悪玉はその逆。末梢のほうへ、体の各部分へとコレステロールを運んでいく性質があるため、血管を錆びさせる原因となるといわれます。

しかし、その働き自体が悪いものなのではありません。例えば、飢餓状態にある人が、細胞を作るのにコレステロールが不足しているというときには、悪玉コレステロールがないと末梢までコレステロールが届きません。たまたま今の日本が飽食社会であるがゆえに、悪玉扱いされていますが、人類の長い飢餓の歴史においては善玉だったのです。

悪玉コレステロールの数値が高いからといって、あわてて薬を飲んでその数値を下げようとするのは間違いです。そんなことをするより、飽食状態から抜け出せばよいだけの話。食事の摂取量を減らすのが解決策です。一日一食や一汁一菜で空腹状態になれば善玉として働いてくれるでしょう。

 

「酒は百薬の長」か?

2008年、英国ケンブリッジ大学の研究チームが面白い調査結果を発表しました。

それは「生活習慣と長生きの秘訣」。45歳から79歳の2万人を対象に、何年間にも渡って生活習慣の調査を行い、死亡との因果関係を調べ上げたのです。

その結果。

1. 毎日30分程度、適度な運動をする
2. 野菜と果物を1日こぶし5つ分(300g程度)とる
3. 飲酒は適度に抑える
4. 喫煙しない

これら4つの習慣を持つ人は、持たない人に比べて死亡率は4分の1、寿命は14年長くなる、という結論が出たのです。

「適度な運動」は先ほど述べた、「よく歩くこと」を心がければOKですね。

「野菜と果物」も、英国人なら「そんなにたくさん食べられないー」といったかもしれませんが、日本人なら「おひたし」にすれば簡単にクリアできます。ちなみにジュースにしてしまうと、抗酸化作用を持った皮を除いてしまうので、効果半減です。

そして「飲酒」。同チームは「ワインなら1週間に14杯までが限度」と定めています。つまり、1日に換算するとグラス2杯です。

このとき、「生涯にどれだけ飲酒したか」も大きな問題です。これまでどれだけの量を飲んできたか、その蓄積によって寿命は左右されます。生涯で摂取してもよいアルコールの許容量は、男性が500kg、女性が250kg。

女性のほうが少ないのは、アルコールへの耐性が低いからです。女性は妊娠したときに子どもに悪影響が出ないよう、毒となりうるものに、より敏感なのです。いずれにせよ、今挙げた範囲内にとどめるならば、酒は「百薬の長」となりうるでしょう。しかしそれ以上となると体を壊し、寿命を縮めます。

日本酒4合瓶は約720cc。アルコール度数が14度なら、アルコール100gに相当します。ワイン1本が750ccでアルコール度数が13度ですから、やはり1本飲めば100gのアルコールを摂取した、という目安になりますね。

では、男性がこの1日1本のペースで飲むとすると何年で限界に達するでしょう。1年で36500g、つまり36.5kgですから、わずか13.7年で満了となってしまいます。女性ならたった7年で極量ですね。たとえ休肝日をとっても、翌日に倍飲めば同じことです。20歳前から飲み始める若者も多いですから、そんな頃からがぶがぶ飲んでいると、30歳過ぎで限界に来てしまいます。

昔は、酒はお祝いごとやお祭のときにだけ飲むものでした。江戸時代の価値観では、1合も飲めばごちそうだったのです。飲み過ぎて吐くなど、ありえないことでした。現代人の飲み方は節度を軽く超えています。肝硬変、肝臓ガンのリスクはそれだけ高いということ。「飲むならグラス2杯」の適量を意識して、ほどほどにたしなむのが理想です。

 

次のページ
喫煙は百害あって一利なし!

関連記事

アクセスランキングRanking