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日本はゴジラの東京湾上陸を阻止できるか?

未来防衛研究所

2016年09月08日 公開 2016年09月13日 更新

怪獣が敵として認知されておらず、捕捉・追尾が開始されていない場合

この場合は、完全なる不意討ちをくらうこととなる。この場合の問題は、《沿岸部及び陸上において予想され得る怪獣による被害を、いかにして最小限に食い止め得るか》に絞られる。

では、具体的に、東京湾周辺海域及び地域における生命・財産の安全確保のために、どのような措置が取られるのであろうか?

水上警察署の管轄は基本的に港内等、沿岸部に限られているので、怪獣が湾内の中央部を進撃してくるような場合には、まず動くのは海上保安庁所属の諸機関である。認知された事態が何らかの対策を要すると判断された場合、観音崎の東京湾海上交通センターから横浜市の第3管区海上保安本部へと通報され、そこから東京湾内にある各海上保安部へと指令が出され、それによって、海上保安部または海上保安署に所属する船艇、あるいは航空機が出動する手配になっている。

同時に、海上交通センターからは、湾内を航行中、あるいは湾内に錨泊中の各船舶に、船舶無線、あるいは船舶電話を利用した通報が行き、安全な海域への誘導が行われる。

怪獣が港にいちじるしく接近している場合には、海上保安本部から警視庁(都警本部とでも呼ぶべきものであるが、慣習として、警視庁と呼称されている)あるいは県警本部を通じて、現地の水上警察署に連絡が行くこととなる。同様に、東京都消防庁あるいは市区町村の消防本部を通じて、消防艇の待機が要請されることも考えられる。

海上保安庁と業務調整により区域を定め、海事法令違反は海上保安庁が処理し、港内、河川等における警察権行使については原則として水上警察が行っている。

東京都(警視庁)の場合、以前は水上警察署が置かれていたが、現在は江東区青海の東京湾岸署「水上安全課」が業務を引き継いだ。『ふじ』『あさしお』他、警備艇25隻が所属している。

不審船事件以降強化されているとはいえ、海上保安庁所属の船艇の武装では歯が立たないとなれば、自衛隊が後を引き継ぐこととなる。

非常事態に際しては、海上保安庁の全部または一部を防衛大臣の指揮下に入れることが自衛隊法第80条によって認められており、すでに怪獣撃滅を目的として自衛隊に命令が出されている場合であるなら、自衛隊の動員そのものについての問題もなく、海上保安庁は自衛隊を支援する形で作戦に参加することが考えられる。だが、そうでない場合、問題は攻撃したことによって派生し得る被害の予測と、怪獣を野放しにしたことによって生じ得る被害の予測との兼ね合いである。

 

自衛隊法第80条

1.内閣総理大臣は、第76条第1項又は第78条第1項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。
2.内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、防衛大臣にこれを指揮させるものとする。
3.内閣総理大臣は、第1項の規定による統制につき、その必要がなくなつたと認める場合には、すみやかに、これを解除しなければならない。

その生物が東京湾周辺海域及び地域の安全保障にとってよほど脅威である(または、脅威となり得る)という認識がなければ、たとえ自衛隊に要請があったとしても、基本的に、部隊への動員命令の発令は見送られることになる。安全確保という大前提に反するからである。また、突然自衛隊に出動あるいは部隊の派遣が要請されたとしても、その時、時間的、物理的に、現場に急行できる場所に部隊がいなければ、どうしようもない。

対艦、または対地攻撃能力を持つ兵器の使用が有効と考えられるが、そのためにまず、平常配備されている場所から、それらを移動してこなければならない、という問題もある。

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東京湾からの上陸を阻止せよ

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