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エジソンの名言「天才は99%の努力」は事実? 研究でみえた“才能”の正体

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年11月30日 公開

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『才能の科学 人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法』(マシュー・サイド 著、山形 浩生、守岡 桜 訳、河出書房新社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

天才を作るのは1万時間の練習と、あとは何か

「あの人は才能が秀でている」「自分にも、もっと才能があったらいいのに」というように、人の才能をうらやましいと一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

例えば私自身は語学の才能はないのだろうな、何か国語も話せる人は才能があるのだろう、と感じてきました。人の才能は生まれたときから違っていて、今の自分にはどうしようもないものだという感じでしょうか。

そのようなことを感じてきた人なら、ガツンと衝撃を受けるだろう一冊が今回ご紹介する『才能の科学』です。端的に言えば、才能の正体は遺伝子ではなく、質の高い努力の蓄積なのだということです。

本書が引用している研究はよく、1万時間の努力をすれば人は一流になれる、と少し単純化されすぎた伝わり方をしています。本書をたどれば、まずその誤解が正されます。その要素について、一つずつ順番に追いかけていきましょう。

 

1万時間練習説を裏付けた研究

著者自身の話から第一章は始まります。なにせ著者のマシュー・サイドは卓球選手として10年近くもの間、強豪イギリスで1位の座を守っていただけでなく、オックスフォード大学の哲学政治経済学部を首席で卒業した人物なのです。

著者のプロフィールを見たときに、この著者は運動神経も勉強の才能も秀でた方なのだろう、と嫉妬に近い感情を持ってしまった人も私だけではないはずです。まず、著者はなぜ卓球のチャンピオンにまで上りつめたのでしょうか。

著者によるとその答えは運と努力にあるといいます。自宅のガレージに卓球台があり、卓球をともに練習する兄がいて、近くに全英トップクラスの指導者がいて、そこに通っていたということです。その指導者がいるクラブがある1本の通りと周辺地域は、イギリス全体の半分以上のトップ選手を輩出しているというのです。

フロリダ州立大学の心理学者アンダース・エリクソンと同僚2人による有名な調査研究があります。

最高のバイオリニストのグループ、優秀なバイオリニストのグループ、先生になる程度のグループという3つに分けて、様々な指標を比較したところ、バイオリンを始めた年齢や教わった音楽教師の数などのほとんどの指標はほぼ等しかったといいます。

しかし、一つだけ明確な差があった指標がありました。そうです。累計の練習時間です。

第一のグループは約1万時間、第二のグループは約8,000時間、第三のグループは約4,000時間という結果になりました。つまり、一流のアーティストは約1万時間の練習を積んでいたのだそうです。

この他にもチェス、音楽家、テニス、ゴルフなどの領域で天才と言われた別々の人物についても、努力の量が抜きん出ていたことが述べられていきます。

その中でも特に、チェスの素人であったポルガー夫妻の3人の娘によるチェスの世界女子選手権等の優勝実績は、努力の威力を信じさせる説得力を持っています。

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「練習の質」も大切

著者紹介

フライヤー(flier)

ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。(https://www.flierinc.com/)

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