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仕事

話がかみ合わない...職場で「意見の対立」が起こる本質的な原因

内田和成(早稲田大学名誉教授)

2023年08月18日 公開

 

図の形を揃えることが「共感」を生み出す

コミュニケーションのもう1つの目的、それは「情報収集」だ。

チーム内でヒアリングを行う際や、識者や顧客にインタビューをする際などは、自分になくて相手が持っている部分について、意識して聞いていくといい。

逆に、互いに共有している土台の部分に関して、これ以上情報を集めたところで新しい展開は生まれない。相手と打ち解けるためにあえて話を振ってもいいが、そこにばかり時間をかけては意味がない。

自分になくて相手が持っている情報を聞き出すことは、単に情報収集のみならず、相手との共感を生むためにも重要だ。

先ほど例に挙げた自動車のセールスの例で言えば、相手の情報、例えば「自動車を何に使いたいのか」「普段は誰が自動車を使うのか」「デザインと性能のどちらを重視するのか」といった情報を聞き出すとともに、顧客の知らない情報をこちらから提供する。そうすれば相手にマッチした提案ができるうえに、相手と自分との間に信頼関係も生まれるだろう。

これは営業に限らず、どんな場面でも有効だ。足りない情報を引き出し、相手との認識を揃える─つまり、この図の形をなるべく一致させることが、コミュニケーションの秘訣となるのだ。

 

議論が紛糾したらあえて「土台に戻ってみる」

コミュニケーションの目的、最後の1つが「情報共有」だ。

前述したように、情報レベルを一致させることは、相手との共感を生む。特にチーム内において、メンバー全員の情報レベルを揃えることは非常に重要だ。意見の対立というものは、情報の判断基準の違いではなく、持っている情報の違いによることが多い。

チームメンバー全員の情報レベルを揃えるだけで、長年の対立が解消することはよくあるものだ。その際、この図はきっと役立つことだろう。

別の使い方として、議論が紛糾した際、一度この土台の共通認識の部分に戻ってみるという手がある。

例えば、自分が営業本部長で相手が生産本部長だとして、こちらがいくら納期の短縮を求めても、相手は品質管理の視点からなかなかそれを受け入れてくれないとする。この状態でいくら議論を重ねたところで、平行線をたどることは目に見えている。

ただ、「会社の利益を最大化する」「お客様により良いものをなるべく早く届ける」などの土台の部分に関しては、双方の共通認識であるはずだ。

そこで、議論が紛糾したらあえて、「そもそも互いに目指すところは利益の追求ですよね」などと、この共通認識に立ち戻ってみるのだ。すると、お互い冷静になり、より広い視野で物事を考えられるようになる。その結果、問題が急に単純化されるということは、しばしばある。

このように、自分の持っている情報と相手の持っている情報を脳内でイメージ化することで、コミュニケーションはぐっとスムーズになるのだ。

 

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