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富裕層から大衆へ...“平成初期の社交ダンスブーム”の火付け役とは

山本英美(統一全日本ラテンチャンピオン),棚橋健(三笠宮スタンダードファイナリスト)

2023年09月11日 公開

 

映画・テレビの力で競技人口が爆発的に増加


↑映画『Shall we ダンス?』は社交ダンス大ブームの火付け役の1つ

それまで一部の人たちの楽しみだった社交ダンスが、一般層にまで広く知れ渡った背景には、映画にテレビといったメディアの力がありました。

社交ダンスブームの火付け役となった主なものは2つ、1996年に公開された映画『Shall we ダンス?』と、1996年から2002年にかけて日本テレビ系列で放送されていた『ウッチャンナンチャンのウリナリ‼』です。

『Shall we ダンス?』は、社交ダンス教室が舞台となったハートフルコメディで、役所広司演じる生真面目なサラリーマンが、草刈民代演じる社交ダンス教室の講師に惹かれてダンスを始める、というストーリー。

この作品は日本アカデミー賞を総なめにし、配給収入は16億円にも上りました。サラリーマンの冴えない日常に彩を添えてくれるものとして社交ダンスの面白さが再発見され、新たな社交ダンスブームに火を付けました。

『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』では、番組内の企画「ウリナリ芸能人社交ダンス部」にて、有名芸能人たちが忙しい本業の合間を縫って真剣にダンスに取り組み、競技会に出場。

その姿が視聴者に感動と勇気を与え、番組最高視聴率を記録するなど、『ウリナリ!!』ファンだけでなく、多くの人が夢中になりました。この「ウリナリ芸能人社交ダンス部」も、日本国内の社交ダンス人口増加の起爆剤となったことに間違いありません。

 

より広い層がさまざまな楽しみ方ができるようになった現代の社交ダンス

メディアの力によって広く一般層にまで知れることとなり、多くの人に楽しまれるようになった社交ダンス。最近では、その楽しみ方も多様化しています。

競技としての側面から言えば、1997年にIDSF(現・世界ダンススポーツ連盟)がIOC(国際オリンピック委員会)に正式加盟したのをきっかけに、社交ダンスにスポーツとしての側面を強く見るなど、アマチュアのダンスの価値観に変化が生じ始めました。

オリンピック参加への啓蒙活動も行われるなど、アマチュア選手の活躍も業界内で目立つようになっています。

また、メディアの力は現在でも強く、TBS系列で放送されている『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』内の企画「金スマ社交ダンス部」が人気を博し、『月間少年マガジン』(講談社)で2011年より連載されている、社交ダンス(競技ダンス)をテーマにした漫画『ボールルームへようこそ』が2017年にはアニメ化もされるなど、社交ダンスに注目したものがメディアに多く露出するようになりました。

テレビや漫画、アニメの影響で若い年代の人にも社交ダンスが広く知れ渡るようになったのです。

実際に社交ダンスに触れる機会は多くあるものの、いざ自分で始めてみようとするとパートナーがいないことや高単価のスタジオのレッスン料に尻込みしてしまう、というケースも多く、バブル期のなごりなのか、社交ダンス=お金持ちの趣味というイメージもなかなか払拭しきれていないことから、若い人が新たに始める趣味としてはハードルが高い面もあります。

しかし、最近では、初心者でも気軽に参加できる「ヤングサークル」が全国各地に発足するなど、2、30代の若年層でもダンスを継続しやすい環境が整いつつあります。「同じ趣味を持つ仲間が欲しい」「まずは手軽に社交ダンスを楽しみたい」といった、いわゆるライト層にぴったりで、サークル内でパートナーを見つけられるという利点もあります。

また、社交ダンスの楽しみ方は、実際に踊るだけではありません。

SNSの普及によって、世界中のトップアマ、トッププロのダンスを見ることができるようになり、その高いテクニックやきらびやかな衣装は、見ているだけで心躍ります。国内でも数々の競技会が開催されており、間近で選手たちの激しいダンスを観戦することも可能です。

実際の会場の臨場感と熱気はぜひ一度体験していただきたいものです。 

【写真】kaoring*works,【イラスト】IORI KIKUCHI

 

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