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親の介護費で貯蓄がない...50代で「資産を見直さない人」の悲劇的な末路

池田健三郎(経済評論家/政策アナリスト)

2023年09月25日 公開

長らくデフレが続いていると思っていたら、いつの間にかインフレが襲来し、所得が必ずしも十分に増えない中で身近な商品・サービスが次々に値上がりしています。人生100年時代、少しでもゆとりある生活を送りたいなら、今この瞬間から「お金」に対する考え方を改める必要があります。

インフレ下でも資産を減らすことなく、持続可能でゆたかな生活を確保するめの「基本となる考え方」について、元日銀マンであり、経済評論家・政策アナリストの池田健三郎氏の著書『「新しい資本主義」の教科書』から一部抜粋してお伝えしていきます。

※本稿は、池田健三郎著『「新しい資本主義」の教科書』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

50歳を過ぎたら人生のシナリオの再設計を

日本の場合、政治家は短期的な支持率の上下や次の選挙での表面的な印象作りのことばかり考えて、将来を見据えた正論を唱えることは滅多にありません。

与野党ともに大なり小なり、「社会保障はしっかり。しかし、負担増は国民に求めず」といった、実現不可能な理想を述べ立てるだけで、その言説にはまったくサスティナビリティ(持続可能性)がないのですが、あえて問題の本質から目を背そむけ、痛みを伴う課題解決を先送りし続けていることは明確に分かります。

これでは次世代に問題を先送りするだけで(その次世代の人口が激減しているから気にしないのかもしれませんが)、欧州型の福祉国家に近づくこともできなければ、米国のような力強いイノベーションを生み出す国にもなれません。

結局、目先の帳尻合わせの世界の中で縮小均衡に甘んじ、社会主義的な思想でチャレンジやイノベーションが生まれにくい緩慢な経済運営を続けざるを得ないように思われます。

年金受給をみても、国は受給開始年齢を弾力化する等の施策を打ち出していますが、要するになるべく支給したくないのは明らかです。

国としては、元気で働けるうちは年金を受給しないでくれ、というのが本音で、これを受けて、65歳から受給する人は金額が小さくなり、70歳まで我慢したら若干上乗せし、75歳まで受給を控えればさらにインセンティブを付ける、といったシステムが当たり前になってくるとみられます。

先進国トップのスピードで進行する、日本の急激な高齢化を踏まえれば、今後の年金受給環境が好転する可能性はまったくありません。それゆえ、将来的に相当悪化することを現時点で見越して、自分なりの人生のシナリオを設計し、資産やマネープランをどうするかという現実的な戦略策定をしていきましょう。

その際、重要なのは、「どう生きるか」という戦略と予見が先にあり、そのために資産やマネープランをどうするか、が次に来るという順序で検討するということです。

 

実現可能性やリスクを勘案して考えていく

「お金がこうなるから、こう生きなければならない」では本末転倒なのですから。

例えば、自分は60歳過ぎて、90歳近くの親を介護しなくてはいけないとなったときに、住むところはどうするのか、仕事はどうするのか。親は施設に入れるのか。65歳から年金を受給するとしても、60歳で定年を迎え、その後5年間の収入をいかに確保するか。

とくに地方であれば、勤務先として考えられる企業は多くないが、農業ならばできる、その場合はどうするのか―といったことが検討事項になるでしょう。

生活の基礎となる、自分の努力では変えられない条件を先にピックアップして、次に選択できる要素がどの程度あり、それぞれの実現可能性やリスクを勘案して考えていくのが現実的でしょう。

例えば、空き家に無償で入居できる自治体だから住宅には困らないとか、近隣に職場となるような企業がなければテレワークが可能な仕事を今から身につけていくとか、それに合わせて資産運用もどうしていくのか、等を考えていきます。

退職金の有無や金額、使途や運用方針など、考えをまとめておくべき事柄は少なくありません。現状が賃貸住宅の場合、従来の家賃や食費に加えて、ある時点から親の介護費が発生する可能性もあるでしょう。

したがって、リタイア後も何らかのキャッシュを生み出すような手段(投資はもちろん、例えば健康に問題なければ再就職や起業、農業、あるいはユーチューバー等も視野に入るかもしれません)を講じておかないと、退職金や貯蓄は次第に目減りして、枯渇していくだけともなりかねません。

そこにインフレが追い打ちをかければリスクは数倍に膨れ上がる可能性もあるのです。

現在の中高年層にとって幸いなことは、わが国は若者の労働力が増えることが期待できない状況にあり、中高年や女性の労働力に依存し続けながら経済成長を確保していかざるを得ないという現実です。

当面、日本社会全体としての労働力不足は変わらないわけですから、元気で働ける限り、自分はどのように社会に対し付加価値を提供できるかという視点で見つめなおすと、より多くのキャッシュを生みやすい発想が出てくるかもしれません。

自身の資産運用について、額の多寡にかかわらず、じっとして何もしないとか、固定のもの、元本保証のものを「長年やっているから」といった理由だけで、経済情勢に合わせて点検・再検討もせず惰性で継続するのは、今後のリスクを無視した極めて過激かつ危険な選択です。

これらは非常にリスキーでパッシブ(受動的)な考え方が染み付いた結果であり、生活防衛も資産防衛も成り立たないため、ひとたびインフレが襲来すれば「負け組」入りは確実です。

今まで苦労して働き、築いてきた資産の価値を一挙に崩壊させる可能性もあるでしょう。これを契機に、いったん気持ちを切り替え、アクティブに生活防衛、資産防衛を考えていきましょう。

 

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