宮田愛萌さんは、現在はタレント、そして小説家と、活躍の場を広げています。2023年に発売された初の連作短編集『きらきらし』は、万葉集をモチーフにしており、大きな反響を呼びました。宮田さんが思う、古典作品の魅力とは? お話を聞きました。
写真:吉田和本、取材・文:Voice編集部(田口佳歩)
※本稿は『Voice』(2024年2月号)「令和の撫子」より抜粋、編集したものです。
簡単に読解できない面白さ
タレントとして活動する宮田愛萌さんは、昨年(2023年)2月に初の小説集となる『きらきらし』(新潮社)を上梓し注目を集めた。
大学時代に学んでいた万葉集は、『きらきらし』のモチーフになるほどお気に入り。原文の一語一語を丁寧に読み、複数の辞書や先行研究に当たりながら訳をつくるため、当時でも2、3週間で5首を読み進める程度。簡単に読解できないことこそ宮田さんは楽しんでいる。
「現代語訳した文章にはかならず翻訳した人の意思が含まれます。ただ、自分で原文に当たれば自分の手で意味を感じ取れる。それがすごく楽しいんです。海外の翻訳本の場合、原文が読めないと思って逆に手が伸びなかったり(笑)」(宮田さん)
手っ取り早く教養を得ようとする風潮には、もったいなさを感じるという。
「時間をかけなければ深いところまで理解できないですよね。でも少しでも学問の魅力を知ったなら、その先へ進むきっかけになる。きっとその先はもっと面白いと思うんです」(宮田さん)
昔から本が好きで、今後も本の魅力を広める手伝いがしたいと話す宮田さん。「日本の古典を流行らせたい」という密かな夢もいだく。
「国文学科で万葉集を研究しているのが『王道』と言われるくらいまで人気にできたら(笑)。古典の良さは同時代の資料が少ない分、読み解いたときの快感も大きいこと。時間をかけて訳をつくることができれば、自分だけの歌のように感じられて愛着が湧くはずです。ちなみに万葉集の読解には、文法の知識があまり必要がないというのもポイントですよ」(宮田さん)
一つひとつの言葉にじっくり対峙する真摯さが、宮田さんのまっすぐな瞳の奥にある。