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荻原博子が問題視する「保険のオプション」 老後も健康保険だけで十分と語る理由

荻原博子(経済ジャーナリスト)

2025年03月03日 公開

老後に保険には加入しておくべきか、健康のために何をすべきか...悩んでいる方は多いのではないでしょうか。本稿では近著『65歳からは、お金の心配をやめなさい』が話題の経済ジャーナリスト・荻原博子さんにお話しを聞きました。

 

保険選びのポイント

――荻原さんは以前より"健康保険だけで十分"と主張されており、『保険ぎらい』という書籍も出されているほどですが、それでもやっぱり保険に入っておきたいという方も多いかと思います。そんな方に向けて、アドバイスはありますか?

保険は、財産が1銭もないけれど、死んだときにお金を残さなきゃいけないという状況の方なら入っておけばいいのではないでしょうか。しかし、普通は60歳を過ぎたら貯金がそれなりにあって、金銭的には周囲に迷惑をかけないという方が多いですよね。そういう場合は保険にたくさん入る必要はありません。

どうしても不安な人は、お守り代わりにちょこっと入っておけばいいでしょう。加入する場合は、共済は60歳を過ぎると少し高くなるので、インターネットで入れる一番安い保険で十分だと思いますよ。

生命保険は死んだらお金が出るという話で、当然、保険に入るから死なないわけではありません。オプションもつければつけるほどお金がかかるので、つけなくて良いです。

病気になっても、高額医療制度があります。会社に勤めている場合は、病気で休んでいる間も傷病手当金が出ます。傷病手当金は最長1年半、給料の3分の2が出ます。給料が30万円だったとすると、病気で休んでる間はずっと20万円ずつ出るわけです。それだけ出たら何とか食べていけますね。

――給料の3分の2が出るのは大きいですね。

高額医療制度を使うと、例えば100万円の治療を受けたとしても、健康保険対象の場合は自己負担は9万円ぐらいです(2025年1月時点)。3ヶ月間は9万円ですが、4ヶ月目からは4万4000円になります。半年入院しても50万円にもなりません。

しかも病院だってあまり長期間入院させてくれません。もしがんの手術をしても、1週間ぐらいしか置いてくれないので入院費はそこまでかからないのです。

一方で、保険はせいぜい1日5000円程度のお金を60日貰えるようなものが多いですよね。ベッド代も個室に入れば高いけれど、大部屋なら大してかかりませんし、そのあたりを考えると保険加入の必要はないかと思いますよ。

――心配になって先進医療の特約なんかもつけがちですね...。

先進医療と言っても、使えるのはごく限られた治療で、ほとんどのものは対象外です。その治療が必要な状況になる可能性はとても低いですよね。だから先進医療のためにお金を使う必要はないと思うし、そもそも先進医療って特約でつけても200円ぐらいです。それだけ安いということは、誰も使わないってことの表れですよ。

 

老後をどう生きるか

――老後の心配を減らすためにも、健康寿命について真剣に考えることは必須だと思います。荻原さんは健康のために青汁を毎日飲んでいるそうですが、その他にも何か実践していることはありますか?

犬の散歩で毎日朝夕は歩いています。散歩は健康に良いですね。そしてよく眠ることです。あんまり人に言えるようなことは何もやっていませんが、睡眠・食事・運動といった基本的なことには気を遣っています。

そして大きいのは「嫌なことはやらない」こと。人間にとってストレスはとても大きい影響を与えます。病気になったり、うつ病になったり...。嫌な奴とも付き合わないとかね。何よりもストレスを溜めないようにするのが健康の秘訣だと思いますね。

――これまで仕事一筋だった方が、定年退職後に何をしたら良いのかわからず途方に暮れてしまうという話も耳にします。

人生一度しかありません。65歳になると頑張れてあと20年ぐらいですよね。ですから、今まで自分が何がやりたかったのかをよく考えてみてください。

例えば、帯広に花の楽園のような場所があるのですが、そこのおばあちゃんは60歳のときに夫と死に別れて孤独になったそうです。しかし、その時改めて自分は一体何をやりたかったかを考えた時に、昔、野原で綺麗な花を摘んでお母さんにあげたらすごく喜ばれたことを思い出したようです。

そこで広大な帯広の土地を買って、花の楽園のような場所を作り、今では観光名所になっています。若い従業員を何十人も雇っていて、雇用まで生み出しています。

そういう風に、本当に自分が好きなことを突き詰めてやってみましょう。もっと電車に乗りたかったなと思う人は、心ゆくまで鉄ちゃんをやればいいです。この間定年退職をした友達の夫は、釣り好きなので海の近くに引っ越していました。毎日釣り三昧で楽しそうですよ。そういう人生も良いですよね。

精一杯やりたかったことをやって、楽しい人生を送りましょう。お金を残すことは考えないで良いのです。老後は、夫婦仲良く、そして好きなことを思いっきりやるのが一番幸せだと思いますよ。

 

(取材・編集 PHPオンライン編集部 小林実央)

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