「休日も仕事のことを考えている人」の方が、生産性が低いワケ
2024年06月24日 公開
伝説の戦略コーチ、ダン・サリヴァンが提唱した「10x」は、同じ時間で10倍の成果を出すための仕組みです。やりたい仕事で10倍の成果を出しつつ、働く時間を減らして、豊かな人生を手に入れることを目的としています。
「10x」では、心身の活性化のために、仕事をいっさいしない「自由の日」を設けることが推奨されています。本稿では、「10x」実践者である名郷根修さんが、自由の日を持つ効能について語ります。
※本稿は、名郷根修著「10x 同じ時間で10倍の成果を出す仕組み」(日本実業出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
休日に仕事のことを考えてしまっていませんか?
私は「自由の日」を取り入れようとしたとき、仕事をいっさいせずに過ごそうと意気込んでいたのですが、最初はまったくうまくいきませんでした。
というのも、「自由の日」にどうしても仕事のことが気になり、仕事のメールやチャットツールを開いたとたん、返信が止まらなくなってしまいました。そして気づけば1日の大半が終わってしまっている、ということもざらにありました。
休みの日は、出勤日に比べて時間に余裕があり、この時間を使って遅れている仕事をしたり、まとまった時間を使って資料づくりをしたりするのが習癖になってしまっていました。
また、休みの日に仕事などの依頼が入ってきたときは、なるべく休み明けに連絡するようにしたり、自分が休み中であることを通知できるITツールを使ったり、休み中には別の担当者が代わりに対応できる体制にしたりしていますが、緊急の仕事が入って、対応せざるを得ないケースもありました。
とはいえ、休みの日にも仕事をしているとオンオフの切り替えがないため、心身の疲れが取れず、クリエイティビティを活かした発想ができなくなってしまったり、仕事に対して受動的な姿勢になりやすいのも事実です。
そこで「自由な日」に仕事をしない、というのも、まずは100パーセント完璧ではなく、80パーセントくらいを目指しましょう(80パーセントルール)。
仕事の生産性を高め、自由な時間を生み出す3種類の日
「10x」に基づく「時間の使い方」は、「集中の日」「予備の日」「自由の日」の3種類の日で構成されています。
・集中の日: 自分にとってユニークアビリティを活かせる最重要の活動、とくに収益性のある活動を行う日。この日には「好き」で「得意」で「人の役に立つ」「お金を生む」活動にフォーカスする。
(※ユニークアビリティ:「好き」「得意」「人の役に立つ」「お金を生む」という4つの条件を満たす能力)
・予備の日: ビジネスを運営するためのルーティンの書類仕事、スケジュールを立てる、仕事を任せる、引き継ぐ、仕事関係の研修や教育活動を行う日。
・自由の日: 心身の活性化のための日。仕事をいっさいせずに家族や友人、地域の人たちや同じ興味を持つコミュニティの人たちと過ごし、レジャーや余暇、慈善活動などを行う。仕事以外のメールやメッセージ、電話、考えごとはこの日にする。
疲れたから休暇を取るのではなく、疲れる前に休暇を取る
もし、あと1年で人生が終わるとしたら、あなたはもっと仕事をしたいですか?
人生の終わりに「もっと仕事をすれば良かった」と後悔する人はほとんどいないそうです。その代わりに、多くの人は「仕事ばかりするのではなく、もっと自分のやりたいことをやれば良かった」「もっと大切な人と過ごす時間を持てば良かった」と思うそうです。
そして多くの人は、人生の終わりに自分の人生を振り返り、その質について考えるそうです。「自分が本当に生きたい人生を生きたか?」「それとも、仕事ばかりの人生だったか?」と。
「自由の日」は「自分が本当に生きたい人生を生きたか?」という観点からは、3種類の中でも最も重要な日です。
多くの人の休暇の取り方は、仕事をし続けて、疲労が蓄積してきて、その報酬として休暇を取得するというような考えに基づいています。「10x」に基づく休暇の取り方は、先に休暇を設定します。
なぜなら、心身を休めたり活性化できたりする時間を過ごせれば、休暇後にクリエイティビティと生産性が高い状態で仕事に注力できるからです。定期的に「自由の日」を過ごすことで、身体的にも、精神的にも、感情的にも仕事を行ううえで良い状態を保てるようになります。
仕事を続けて疲れが出てくると、クリエイティビティやエネルギーが徐々に下がってきて、その状態が長く続くと受け身の仕事しかできないような状態になってしまいます。そうなる前に、次の「自由の日」を過ごせるようにスケジュールしておくわけです。
「自由の日」に仕事をいっさいせず、心身を休め活性化すると、クリエイティビティもエネルギーも高く、今までとは同じやり方ではなく、リスクを伴うようなチャレンジングな仕事にも取り組めるようになります。
「自由の日」を持つことの効能とおすすめの過ごし方
「自由の日」をあらかじめ設定し、残りの日を「集中の日」と「予備の日」に割りあてます。そうすることで、自分が仕事のために使える時間が限られていると認識できます。時間が有限だとわかるからこそ、いかに効率的かつ効果的に使うかという意識にもスイッチが入るのです。
その結果、「集中の日」には収益を生み出す最重要の仕事に取り組み、「予備の日」には「集中の日」の生産性を高める活動に取り組めるようになります。
「自由の日」を持つ効能はこれだけではありません。あなたが休みを取ることで、チームメンバーが成長します。あなたが「自由の日」を過ごしている間、あなたのチームメンバーはあなたの助けを得ることができないため、自分たちで考え、あなたがいないところで判断することになるからです。
チームメンバーは、ときに失敗することもあるかもしれませんが、その経験から学ぶことができます。そうやってチームメンバーは、より仕事に対する責任感を持つことができます。ひいては、それがまたチームの力の底上げになるのです。
とはいえ、あなたが不在のときの対応をチームメンバーにいきなり任せるのではなく、「予備の日」を使って「10x」による「仕事の割り振り方」を参考にしながら段階的に仕事を任せるようにしてください。
その結果、チームメンバーはあなたに依存することなく、自立して対応できるようになり、あなたが不在の間も滞りなくビジネスが回るようになります。そうなると、あなたも「自由の日」に安心して休暇を過ごすことができるでしょう。
「自由の日」は仕事をいっさいせずに心身を休め活性化する日であるとお伝えしましたが、私の経験上、最初は「自由の日」に仕事をまったくしないで過ごすのが難しかったです。ついつい仕事のことが気になって、メールをチェックし、早めに対応したほうが良いと思うメールを読んで、休日にも仕事をすることもありました。
しかし、休日はいっさい仕事をせずに、心身を休め活性化する過ごし方をしたほうが生産性は上がります。これは私が仕事とプライベートのオンとオフのスイッチを上手に切り替えられるようになって実感したことです。
最初から完璧に仕事をしないというのは、とくに真面目な人にとっては難しいかもしれませんが、徐々にオフに切り替えられるよう休める時間を意識的に増やしてください。
「自由の日」におすすめするのは、仕事以外で自分が本当にやりたいことができる時間を過ごすことです。私の場合は、家族や友人たちと旅行をしたり、バーベキューやキャンプ、ハイキング、サーフィンなどをして過ごしています。
私にとっては旅をすることや、ふだん会わない人と会って一緒に何かをすることで、新しいアイデアやノウハウ、インスピレーションを得ることができ、意見交換もできるので良い刺激となり、クリエイティビティを高められる効果があると感じます。また、本を読んだり、映画を観たり、美術館へ訪れたりもしています。
「自由の日」の夕方には、心身を活性化するために、ジムに行って、筋トレ、ストレッチ、水泳をしてから、サウナに入ることがルーティンになっています。人によって、やりたいことはさまざまだと思いますので、自分が心から満足できる活動をしてください。
逆におすすめしないのは、「自由の日」に心から満足できる活動をしないことです。たとえば、SNSを何となく眺めていたり、たまった家事をしなくてはならなかったり、人から頼まれた用事があったりして1日が終わってしまうのは、心身を休めたり活性化したりする「自由の日」にはなりません。
なぜ「自由の日」の存在を知ることとなったのか?
・働き方を変えるために「10xアンビションプログラム」への参加を決意
どうしたら仕事で成果を出すと同時に、家族との時間も大切にできるライフスタイルを実現できるか。そのことを探究するようになってから、脳には自分の興味関心のある情報を無意識に集める「RAS」という機能があるようで、ある情報が入ってきました。
それは、多くの起業家や経営者を指導してきた「伝説の戦略コーチ」と呼ばれるダン・サリヴァンが共同創業したストラテジック・コーチ社による、「10xアンビションプログラム」という「10倍の成果を出しながら自由な時間を増やす方法」を教えるプログラムです。
このプログラムは当時、年に4回、カナダのトロントにあるストラテジック・コーチ社の本社オフィスでの参加を必須としていました。
東京からトロントまでの移動時間は片道のフライトで最低12時間かかることもあり、プログラムに参加するための時間や費用の捻出も含め、相当のコミットメントが必要とされるものでした。しかし、「本気で働き方を変える」と決意した自分にとっては必要なプログラムだと確信して、参加を決めました。
ストラテジック・コーチ社は30年以上にもわたり、2万人以上の起業家や経営者を指導してきた会社で、「10xアンビションプログラム」でダン・サリヴァンがうたっている「10倍の成果を出すのは2倍の成果を出すより簡単」という考え方に惹かれたからです。
事前にプログラムの内容について理解した範囲では、今までの延長線上で目標を立てて長く働いて成果を出すのではなく、「10倍の目標を達成する」と考えることで創造性を発揮して、これまでのやり方とは異なる革新的な方法を生み出し、大きな成果を出しながら、プライベートの時間を増やせるとのこと。まさに自分にとって必要なことだと思い、期待を胸にトロントへ出発しました。
実際に10倍の成果を出している人たち
成田国際空港からトロントのピアソン国際空港まで約12時間のフライトを終え、トロント市内のホテルで1泊した後、「10xアンビションプログラム」の初日に参加しました。
会場のストラテジック・コーチ社のオフィスに到着すると、すでにたくさんの起業家や経営者が集まっていて、受付で登録してからプログラムの資料を受け取り、講義が行われる部屋に行きました。
そこには50人くらいの受講者がいて、年代は40代から50代くらいの年齢層が多く、男女比は 7:3くらいで男性が多い印象でした。
講義が始まるまでの間に数人の参加者とコーヒーを飲みながら雑談をしていると、さまざまな分野の起業家や経営者が事業を10倍にしながら自由な時間を増やす方法を求めて参加していることがわかりました。
中には5年や10年以上参加していて、すでに事業が10倍以上になって自由な時間を得られるようになっても学び続けている方もいました。
10倍の成果を出すのは2倍の成果を出すより簡単!?
「10xアンビションプログラム」を受けるまでは、「10倍の成果を出すなんて本当にできるのだろうか? それってすごく大変なことなんじゃないか?」と正直思っていました。プログラムは、このように考えることから解き放たれることから始まります。まず多くの人は「10倍の成果を出すのは難しい」という思い込みにとらわれているからです。
とは言っても、10倍の成果を出すと聞いたら、大変なことだと思いますよね。たとえば「もし2倍の成果を出すとしたら?」と考えたときに、これまでの2倍仕事をして成果を出すと考える人が多いと思います。
「2倍の成果を出すこと」が「2倍働く」とイコールになると直感的にイメージするわけです。この時点で「2倍の成果を出す」というポジティブで意欲的な言葉が、「2倍長く働かなければならない」というネガティブなイメージに変換されます。
一方、「もし10倍の成果を出すことができたら?」と考えたら、まったく別の反応が起こります。10倍の成果を出すために10倍働くのは不可能であり、長く働いて成果を出す考え方とは別の考え方を必要とするからです。
「同じ時間で10倍の成果を生み出す仕組み」に基づいて仕事をするには、従来の延長線上にはない発想を起点として、チームワークやほかの人からのサポートを得ながら、あなたが最も好きで得意なことに注力します。
「10倍の成果を出す仕組み」に基づいた働き方をすることで、あなたはチームで大きな成果を出しながら自由な時間を増やすことができるのです。
そのため、「同じ時間で10倍の成果を出す」というのは、正しくは時間も大幅に短縮される可能性もありますが、あくまで仮に「同じ時間をかけたとしたら」という意味で用いています。
ダン・サリヴァンから教わった「10倍の成果を出す仕組み」を、「10x(テンエックス)」と呼びます。「x」は英語で「倍」、「10x」は「10倍」ということです。
「10x」によって、10倍の成果を出せる、働く時間を減らせる、プライベートの時間が増やせるのです(これから本書でお伝えしていく「10x」に基づいた働き方はストラテジック・コーチ社による「10xアンビションプログラム」で私が学んだことがベースになっています。
ただし、私が実践し、とくに効果があった内容を厳選してお伝えするとともに、私自身の経験を通して、理解しやすい、実践しやすい方法に変更している内容もあります)
「10x」に基づく「時間の使い方」は、自分の意志で決め、次の3つのことを可能にします。
1.仕事とプライベートの両方を充実させることができる
2.自分のユニークアビリティを発揮して、最高の生産性と達成、貢献、満足感を得られる
3.自分のユニークアビリティを経済的な価値に変換することができる
「自由の日」が「自分の時間」を生む
私たちは「働くために生きる」のではなく、「生きるために働く」のだと思います。
私も仕事を最優先にしていた生活が続いていたら、人生の終わりに「仕事ばかりするのではなく、もっと自分のやりたいことをやれば良かった」「もっと大切な人と過ごす時間を取れば良かった」と後悔するでしょう。
「自由の日」を十分に過ごすと、仕事以外の人生の側面にも気づくことができ、さまざまなものに感謝の念を持つことができます。そうした日々を重ね、人生の終わりに「最高の人生だった!」と思える時間の過ごし方をしていることを心から願っています。