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不動産のプロが教える「資産性が落ちにくい住居」4つの条件

長嶋修(不動産コンサルタント),さくら事務所

2024年07月26日 公開 2024年12月16日 更新

マンションの価格高騰が止まらず、都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新している。しかしその中でも、資産性を維持できる「選ばれるマンション」と資産性を落とす「選ばれないマンション」の物件格差がかつてないほど広がっているという。本稿では、不動産購入で重視すべきポイントを書籍『マンションバブル41の落とし穴』より紹介する。

※本稿は、長嶋修著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

都心の新築・大規模・タワマンの価格が下がるのを待つべき?

目下、人気が高い不動産の特徴は次の4点に集約されます。

都心、駅前・駅近、大規模、タワー。つまり、都心の駅周辺の大規模タワマンが大人気だということです。

かつては郊外の一戸建てに住むことがステータスでしたが、今は都心のタワマンに住むことがステータスです。比較的収入の高いパワーカップルなどの実需に加え、富裕層や国内外の投資家も条件を満たす物件を求めており、引き合いはかなり強くなっています。

タワマンには高いステータス性に加えてホテルライクな生活ができること、セキュリティ面での安心感、眺望の良さなど、さまざまな魅力がありますが、特に大きなメリットと言えるのが生活利便性の高さです。

多くのタワマンは駅のすぐそばや駅直結の立地で、周辺に商業施設なども充実しています。駅に近いということは不動産価格を大きく左右するポイントなので、駅前・駅近のタワマン人気は、これからも長く続いていくでしょう。

都心部にある職場のすぐ近く、たとえば千代田区・中央区・港区の都心3区の大規模タワマンに住みたいと思っている一般ファミリー層の方もいらっしゃるでしょうが、そのためには相当の資金力が必要になります。

2023年7月、1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の新築マンションの平均価格が9940万円に達し、1億円に迫る勢いを見せたことが話題になりました。これは都内の高額物件の販売開始が相次いだことが影響しています。

東京23区に限定すると、新築マンション平均価格は2023年の上半期時点で1億円の大台に初めて到達。平成バブル期を超えて、前年比60%超の1億3000万円弱となりました。もっとも、これは一部の超高額物件が引き上げた結果なので、平均価格を見ることにはあまり意味がないとも言えます。

東京23区のなかでもとりわけ新築マンション平均価格が高いのは、前述の通り都心3区です。建物の床面積1坪(約3.3㎡)あたりの価格を算出したものを坪単価と呼びますが、2024年現在、都心3区では坪単価が1000万円を超える、途方もない高額物件が多く売出されています。

最近話題になったのは、2023年11月に開業した東京都港区の麻布台ヒルズの超高額物件です。麻布台ヒルズにはオフィス、商業施設、ホテル、住宅、文化施設などが入っていますが、そのなかに大阪のあべのハルカスを抜いて日本一の超高層ビルとなった麻布台ヒルズ森JPタワーがあり、54〜64階部分が住宅エリアになっています。

この住宅エリアは「アマンレジデンス 東京」という名称で、世界有数のラグジュアリーホテル・アマンとの提携によって作られたもの。販売価格は明らかにされていませんが、1戸あたり20億円前後と見られており、もっとも広い最上階の住戸は200億円とも300億円とも噂される、異次元の価格設定です。

このような超高額物件は一般公開されず、一部のVIPに紹介制で販売されます。住宅ローンで借りられる金額には限度があるので、顧客の多くは現金一括で購入できるケタ外れの富裕層か投資家です。

特に海外の投資家は、昨今の円安で日本の不動産への投資に積極的です。彼らからすると、日本は「物価の安いお買い得な国」であり、なかでも東京は、さまざまな魅力を備えた投資妙味のある都市と見られています。

東京の不動産は、世界の大都市──たとえばシンガポールや香港などの不動産よりも割安です。それらの大都市でハイエンドな物件を買おうとするとかなり高くつくため、海外の投資家は東京の高級物件に目をつけるわけです。

かつては東京のなかでも、湾岸エリアのタワマンに対する需要が旺盛でしたが、最近のターゲットは都心3区に移っています。その結果、今では都心3区、及びその周辺の一部エリアの不動産だけが、グローバル基準に近い水準で売買されるようになりました。アマンレジデンス 東京はその象徴と言えます。

東京の例を挙げましたが、2023年には大阪の一等地にある25億円のタワマン住戸が早々に売れるなど、好立地エリアのタワマンの強さが目立ちました。日本の不動産価格全般が下落するような局面でも、このような物件が大きく値下がりする可能性は低いでしょう。

不動産デベロッパーも、もはや一等地では一般ファミリー層への売却を念頭に置いていません。強気の価格設定は揺るがないはずです。

 

永住予定のため、資産性を考慮する必要はない?

不動産市場は三極化し、価格を維持、もしくは価格の上昇も見込めるような地域は、全体の10〜15%に過ぎません。残りの9割近くが、程度の差こそあれ将来的に値下がりしていくのが、日本の不動産市場の実情です。

値下がりしにくい地域で不動産を買うためには、先に紹介した4つのトレンド条件をなるべく満たす必要がありますが、完璧に条件に合った物件はすでに高額です。そのため、少しずつ条件を緩和しながら、予算と見合う物件を探すことになるでしょう。

もっとも「永住の予定だから、将来的に売却するつもりもないので、不動産価格が下落したとしても別に構わない」と考えるのであれば、郊外の駅から離れたエリアなどで、手頃な物件を見つけることはできます。

ただ将来的に相続の発生や、高齢になって介護施設への入居が必要になったり、若いときに気に入っていた住環境が、高齢になって合わなくなることもあるはずです。自分が年をとって、周囲はファミリーだらけだと居心地が悪くなるかもしれませんし、若いときには気にならなかった駅や病院からの距離を、負担に感じるかもしれません。

そこで持ち家を売ろうとしても、もともと不動産価格が下落傾向のエリアで家を買っていると、資産性が損なわれて売るに売れないリスクがあります。実際、老人ホームに入るために家を売ろうとしても売れず、苦労したというような話はそこかしこで耳にします。

投資として不動産を購入する場合は、いかに物件を高く売却するかという「出口戦略」を念頭に置きます。一方、居住用不動産を買う場合には、売るときのことを視野に入れていない人が多くいます。最初は永住するつもりでも、状況がそれを許さなくなるケースが往々にしてあるので、売却の可能性も頭の片隅に置きつつ、物件探しをすべきでしょう。

といっても、出口を考えて人気のタワマンを無理して買うのが正解とは限りません。収入に見合わない住宅ローンを背負うと、将来資金ショートを起こすリスクが高くなります。

資金的な理由で、不動産価格が下落しそうな地域を選ばざるを得なかった場合、なるべく価格の下落がゆるやかな地域(都心から遠すぎず、駅から離れすぎない)を選ぶほか、不動産の売却益をあてにし過ぎずに老後の計画を立てる必要がありそうです。

 

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