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人間関係のトラブルを「うまく乗り切れる人」と「火に油を注ぐ人」の違い

林健太郎(合同会社ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ)

2024年11月25日 公開 2024年12月16日 更新

人とトラブルになったときに、うまく乗りきれる人と、逆に火に油を注いで余計に炎上させてしまう人がいます。その違いは、どこにあるのでしょうか? プロのコーチとして、これまでに2万人以上のリーダーを対象にコーチングやリーダーシップの指導をしてきた林健太郎さんの書籍『「ごめんなさい」の練習』から紹介します。

※本稿は、林健太郎著『「ごめんなさい」の練習』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

 

2つの「ごめんなさい」をうまく使いわける

私は「『ごめんなさい』には、2つの種類がある」と考えています。

 

①大きなごめんなさい(Iʼm sorry)

2つの種類のうちの1つ目は、英語でいうところの「Iʼm sorry」です。「なにを今さら。そんなこと知ってるよ」と思われたでしょうか。

ですが、この言葉であらわす謝罪の気持ちは、実はかなり「強め」です。日本語で表現するならば、「ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません」といった、かなりかしこまったイメージです。たとえば、「企業の謝罪会見」のような雰囲気といえば伝わるでしょうか。

また、「I’m sorry」には主語があります。「『私は』謝罪する」と伝えていて、だれに責任があるのかを明確にしています。

つまり、1つ目の「ごめんなさい」(Iʼm sorry)は、重たくて、かしこまった、公式の謝罪の意味合いが出る「大きなごめんなさい」といえます。

 

②小さなごめんなさい(Oops, did I do something?)

一方、私がおすすめする「ごめんなさい」は、重たくて、かしこまったものではなく、もっと普段使い用です。

英語でいうならば、「Oops, did I do something?」(あっ、私、なんかしちゃった?)のイメージです。実際、アメリカでは、このフレーズをよく使います。

2つ目の「ごめんなさい」(Oops, did I do something?)は、「あっ、相手を不快にさせたかも」と思ったときに、すかさず入れるフォローのひと言で、「小さなごめんなさい」といえます。

「あっ」と思った瞬間に「ごめんなさい」のひと言があれば、それ以上おたがいがぶつからず、ぎくしゃくしかけた空気がふわっとやわらぎますよね。普段使い用なので使用頻度が高く、身近な人といい関係をつくっていくときに、とても大切な役割を果たします。

 

「小さなごめんなさい」がトラブルを未然に防ぐ

ちなみに、「大きなごめんなさい」が必要になりそうな場面でも、「小さなごめんなさい」は重要な役割を果たします。

かつて私が働いていたある企業では、お客様からクレームの電話を受けたときのガイドラインがあって、次のように対応していました。

■会社として、簡単に過失を認めたり、補償を約束したりしてはいけない
■ただ、「お客様を不快にさせたこと」についてはお詫びをする

そう、謝るのは「お客様を不快にさせたこと」に対してだけ。クレームの内容や経緯がどうだったにせよ、お客様を不快にさせたことは間違いないので、そこについては「不快にさせて、すみません(ごめんなさい)」と謝罪するのです。

実際、最初に「小さなごめんなさい」をお伝えすることで、ほとんどのお客様の怒りはおさまっていました。人とトラブルになりそうになったら、すかさず「小さなごめんなさい」を伝えていくことで「大きなごめんなさい」を未然に防ぐことができるわけです。

間違っても「でもね、お客様」「これはルールですから」といった対応はNG。相手のことをただケアする「小さなごめんなさい」ですむことが、場合によっては訴訟などの「特大のごめんなさい」につながることがあります。

「ごめんなさい」を「公式に謝罪する」という大きな意味でとらえると気が重くなりますが、「あっ、私、なんかしちゃった?」と目の前の相手のことをただケアする言葉として考えられると、少しイメージが変わりませんか。

 

謝るまでの時間を、できるだけ短くする

「相手を不快にさせたかも」と思ったら、すかさず「小さなごめんなさい」を伝えていくことを提案している私も、謝ることの難しさは重々承知しています。

特に難しいのが「すかさず」という部分です。「ごめんなさい」を伝えるときの最重要ポイントは、「気づいて→謝る」までの時間を、できるだけ短くすること。この時間が短ければ短いほど効果的です。

1年後よりも1カ月後、1カ月後よりも1週間後、1週間後よりも1日後、1日後よりも1時間後、1時間後よりも今この瞬間です。時間が経つほど、「ごめんなさい」のハードルは、どんどん高くなります。

「ごめんなさい」は、駅のホームにある「非常停止ボタン」のようなもの。「危ない!」と思った瞬間に、すぐに押すことが大切なのですが、これが本当に難しいのです。

ボタンを押して、すぐに立ちどまれたら被害は最小限ですむのに、反射的に相手に言い返してしまって、人間関係にひびを入れてしまいます。

 

著者紹介

林健太郎(はやし・けんたろう)

合同会社ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ

2万人以上を指導したコーチ。リーダー育成家。合同会社ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ。一般社団法人国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、エグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを機に、プロコーチを目指してアメリカで経験を積む。帰国後、2010年にコーチとして独立。2016年には、フィリップ・モリス社の依頼で、管理職200人以上に対するコーチング研修を実施。これまでに日本を代表する大手企業や外資系企業、ベンチャー企業、家族経営の会社などで、2万人以上のリーダーを対象にコーチングやリーダーシップの指導を行なう。『否定しない習慣』『子どもを否定しない習慣』(ともにフォレスト出版)など著書多数。

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