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生き方

「私にだけ態度が悪い...?」些細なことで不安になる人の思考のクセ

舟木彩乃(公認心理師)

2023年12月15日 公開 2023年12月25日 更新

人生のさまざまな場面でやってくるストレスに対して、うまく対応していく力、それが首尾一貫感覚です。この首尾一貫感覚は、生まれつきの能力(先天的能力)ではなく、育っていく過程で後天的に獲得していく能力です。したがって、自分の努力で後天的に高めることができるとされています。

ここでは、首尾一貫感覚を構成する3つの要素「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」のうち、「把握可能感」を高めるレッスンをお伝えしていきたいと思います。

(イラスト:kikii  クリモト)

※本稿は『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。

 

ある程度理解できる、予測がつく感覚

把握可能感(Sense of Comprehensibility)とは、

「自分の身のまわりで起こる出来事は、だいたい『想定の範囲内』のことであると思える感覚、自分の置かれている状況をある程度理解できている、今後の展開をある程度予測できる、その出来事がどのようなものなのかをおおよそ説明できる感覚」

です。

シンプルにいえば、今自分に起こっている出来事について「だいたいわかった」と思える感覚です。「こんなものか」「想定内だな」と思える感覚だと言い換えてもいいでしょう。

例えば、何年も同じ上司の下で働いていれば、どのようなことで評価され、何で注意されるのかなどがわかってきます。このとき、「部下としてどうふるまえばいいのか、だいたいわかっている」という感覚がもてれば、把握可能感が高い状態です。

一方で、初めて体験すること(または経験回数が少ないこと)や初対面の人とのコミュニケーションなどは、何が起こるのか、どういう展開になっていくのか、予測が難しいでしょう。例えば、異動になり初めての職場に行ったときや、初めて一人で行く海外出張などです。

このような状況に対し、ワクワク感しか感じないという人は少ないと思いますが、必要以上に不安を感じてしまう人は「把握可能感」が低いといえます。

 

把握可能感を高めるために大切なこと

【ルールや規律、価値観が明確な環境】

把握可能感を高めるためには、ルールや規律、価値観、責任の所在などが明確な世界での経験が大切だといわれています。

例えば、何点とればどのランクの学校に行けるのか、どれくらいの結果を出せば評価されるのか、これらが数値化されたり、明文化されたりしていて客観的にわかる環境です。

こうした環境ですと、どの程度努力すればいいかが予測しやすく(目標を立てやすく)なり、把握可能感を高めていくことにつながります。

反対に、ある程度把握可能感が高い人でも、新しく上司になった人が、言っていることがコロコロと変わるなど方針や評価基準に一貫性のないタイプであれば、把握可能感は下がっていったりします。

 

【少し広い視野をもつ】

広い視野をもつことも、把握可能感を高めることにつながります。

例えば、「わからないことがあったらいつでも聞きにきてね」などと言っておきながら、気分しだいで「そんなの自分で考えなさいよ」 と言ったり、「なんでちゃんと聞かないの?」と責めたりする先輩がいたとします。気分や行動が不安定で、仕事相手としてはやっかいな先輩といえます。

こういう先輩をもった後輩が、「気分屋さんの先輩にふりまわされてつらい」という状況はよく聞く話です。この場合、安定感のない態度に把握可能感が失われてしまい、一時的にストレスの高い状態にいるといえます。

しかし、一方で「こういう先輩みたいな人は、世の中には少なからずいる」という認識をもっている後輩もいます。そうした認識をもつ人は、「こんなことはよくあること、想定内の出来事だ」と思えるので心に余裕があり、先輩に対してもそれほどストレスを感じずに対応できます。

このように少し広い視野をもてる人は、「見通しが立ちやすい」ため、目の前のことだけにふりまわされず、把握可能感も高いということです。

把握可能感は「自分の身のまわりで起こることは、だいたい想定内だ」と思える感覚です。したがって、把握可能感が低いということは、自分の身のまわりの状況や今後の予測を把握できていないということになります。

そのため、不安を感じたときに「自分が把握できていないことは何か」を考えることも、把握可能感を高めるのにいいとされています。

ここからは、把握可能感をどのように高めていけばいいのかについて、具体的な方法について紹介していきます。

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まあまあ理解できる、ざっくり予測できるまで準備する

著者紹介

舟木彩乃(ふなき・あやの)

ストレスマネジメント専門家、公認心理師、株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長

一般企業の人事部で働きながらカウンセラーに転身、その後、病院(精神科・心療内科)などの勤務と並行して筑波大学大学院に入学し、2020年に博士課程を修了。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」。
これまで一般企業や中央官庁、自治体などのメンタルヘルス対策や研修に携わり、カウンセラーとしての相談人数は、のべ約1万人以上。ストレスフルな職業とされる議員秘書のストレスに関する研究で知った「首尾一貫感覚(別名:ストレス対処力)」に有用性を感じ、カウンセリングにとり入れている。
Yahoo!ニュース エキスパート オーサ-として「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)、近著に『過酷な環境でもなお「強い心」を保てた人たちに学ぶ「首尾一貫感覚」で逆境に強い自分をつくる方法 』(河出書房新社)がある。

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