「血液ドロドロ」の原因は、食生活やストレスだけではなかった!
じつは、あなたの口の中に潜む歯周病菌も、気づかないうちに血管を傷つけているかもしれません。栗原クリニック・日本橋院長の栗原毅先生が、ドロドロ血液の種類とその原因を解説します。
※本稿は、栗原毅・栗原丈徳著『サラサラ血液はつくれます!血管アップデート術』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
本来サラサラのはずの血液がなぜドロドロになるのか
血液がドロドロになる主な原因として、「中性脂肪」「糖」「ストレス」「歯周病菌」があげられます。脂肪も糖も体を動かすエネルギーとして欠かせないものですが、摂り過ぎると血液を老化させてしまう怖い要素になります。
ストレスが健康の敵になるのはいうまでもありませんが、血流においても同様です。そのほか、歯周病菌が血液に悪影響を与え、動脈硬化をもたらすことも近年明らかになってきました。
質の良くない血液の状態をよく「ドロドロ血液」と表現しますが、私はあえて、原因ごとにそれぞれ形容に違いをもたせて表現しています。中性脂肪値(基準値:30~149mg/dL)の高い人や脂肪肝と診断された方の血液は、無数のザラメ状になった血小板が集まる「ザラザラ血液」です。
中性脂肪が原因となって血小板が粘っこくなり、くっつき合うことからそうなります。その結果できた「ザラメ状態」の血液は、血流を悪くするだけでなく、血管の壁に引っかかったり傷をつけたりして血管の老化を早めてしまいます。
また血液中の糖(空腹時の血糖値の正常値:99以下、HbA1cの正常値:5.5以下)が多い場合は、赤血球が不良化して硬くなり、「ネバネバ血液」になります。通常、赤血球は柔軟な性質があり、血液中で細長くなったり平たくなったりと、形を自在に変えながら血管を通っていきます。
ところが血液中に糖が多いと白血球は活性化してしまい、硬くなって形を変えられずに血管の内壁に引っかかったり、場合によっては血管を詰まらせたりしてしまいます。つまり、血液はとてもネバネバした状態で、細い血管の中をうまく通ることができなくなるのです。
心身のストレスによるダメージを受けたものは、「ベタベタ血液」と呼んでいます。ストレスを受けると白血球の中のリンパ球の割合(35~40%なら大きなストレスなし)が減少し、白血球同士がお互いにベタベタとくっついて血管の壁などに付着してしまい、血液の流れを悪くしていきます。
また、ベタベタになった白血球が活性酸素にさらされるとさらに質の悪いものに変質して、血管を劣化させていくことも分かってきました。あわせて、心や体にストレスがかかると血管が収縮して、血流が悪化するという悪影響もあります。
歯周病菌が血管の老化を早め、さまざまな病気を引き起こす
「歯周病菌」と「血液」には、重要な関係があることが近年の研究で分かってきました。
歯周病菌は歯の周りに炎症(歯周病)を引き起こし、歯を支える骨を溶かしてしまう怖い細菌です。歯周病菌が歯茎から血管に侵入することで、血流にのって毒素を放ちながら全身を巡り、体のあちこちに炎症をもたらします。
それがさまざまな病気につながるリスクがあると指摘されているのです。また、歯周病菌が放出する炎症物質は血糖値を下げるインスリンのはたらきを阻害することも指摘されています。高血糖を誘発してしまい、糖尿病のリスクを高めてしまう恐れもあるわけです。
このように、歯周病菌は血液や血管をむしばんでいく怖いものですから、ぜひ日頃から歯や口の中のケアを怠らないようにしてほしいと思います。歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)ですから、予防には丁寧な歯みがきによってプラークを取り除くことが重要です。毎食後はもちろんのこと、起床直後と就寝直前の歯みがきを習慣にしましょう。
また、舌の表面は細菌が繁殖しやすく、歯周病菌の棲み家にもなりやすいキケンな場所です。血流に悪影響を及ぼさないために「舌みがき」もおすすめしています。
【栗原毅(くりはら・たけし)】
1951年、新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。元東京女子医科大学教授、元慶應義塾大学大学院教授。現在は栗原クリニック東京・日本橋の院長を務める。日本肝臓学会肝臓専門医。治療だけでなく予防にも力を入れている。血液サラサラの提唱者のひとり。監修書・著書多数。
【栗原丈徳(くりはら・たけのり)】
1982年、東京都生まれ。歯科医師。鶴見大学歯学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科中退。日本抗加齢医学会、日本咀嚼学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会などの会員。