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編集者に教わる「このコンテンツは面白いのか?」と悩んだ時の対処法

竹村俊助(株式会社WORDS代表取締役、編集者)

2025年09月02日 公開

「伝えたい」と思ってつくったコンテンツが読者にとって「面白いもの」であるのかは気になるところ。そんな不安を解消する方法や発信時に心がけたいマインドがあります。SNSも上手に活用し、楽しくアウトプットするコツとは?

経営者の言語化・コンテンツ化をサポートすべく顧問編集者として活躍している竹村俊助の著書『社長の言葉はなぜ届かないのか? 経営者のための情報発信入門』からご紹介します。

※本稿は、竹村俊助著『社長の言葉はなぜ届かないのか? 経営者のための情報発信入門』(総合法令出版)を一部抜粋・編集したものです。

 

本当に面白いのか不安になったら?

一人で原稿を編集していると、本当にこれが面白いのかわからなくなるときがあります。そんなときはまわりの人に原稿を読んでもらいつつ「この話のどこが面白いと思ったのか?」「ようするにどういう話なのか?」を口頭で説明してみるといいでしょう。

僕の会社では、社外アドバイザーの編集者に原稿のフィードバックをもらっています。原稿を読んでもらうと「うーん......この話のどこが面白いと思ったの?」と聞かれることがあります。

口頭で「いや、この人ってこうなんですよ!」と説明すると「へえ、その話面白いね! 今の話の流れのまま、まとめればいいんじゃない?」とアドバイスされることがよくあります。

たとえば元医師の起業家の話をどうまとめるか迷っていたとき「どこが面白いと思ったの?」と聞かれました。僕はこんなふうに答えました。

「その人って、もともと医者で10年くらい働いてたのに、いきなり病院を辞めちゃって、何の伝手もないのに起業したんですよ。で、1社目はうまくいかなくて。やっぱり医療系のビジネスをやろうと思って、今はDXを強みにしたクリニックを複数経営してるんです。起業で身につけたデジタルの知見と医療の知見の掛け算が面白いんですよね」。

こう話すと「面白いね」と言われて、うまく記事をまとめることができました。一人で書いていると何が面白いかわからなくなってきます。そういうときは、まわりの人に簡単に説明してみると取材で何が面白いと思ったのかを思い出せるはずです。

 

新入社員やインターン生に読んでもらう

コンテンツは取材の場にいなかった人に読んでもらうといいでしょう。うちのアドバイザーも取材には一切出ることはありません。

オススメは新入社員やインターンの方に読んでもらうことです。会社の関係者ではあるけれど、まだ深く関わっているわけではないので、外からの視点も持っている。

そういう人に「ぶっちゃけ、このタイトルでクリックする?」「読んでみてどうだった?」と聞いてみてください。すると「ここがわかりづらい」とか「この話が長くて飽きる」などの指摘をもらえるはずです。

よりハードルを上げるなら、友だちや家族など会社とはまったく関係ない人に読んでもらいましょう。このとき、忖度せず「厳しい読者」になってもらうことがポイントです。

最初のうちは、タイトルすら引っかかってくれないケースがほとんどだと思います。「読んでね」と言えば読んでくれるかもしれませんが「そもそも読みたくない」人がほとんどであることに気づくでしょう。

ショックではあるのですが、ただそうやってフィードバックを受けて改善していくと、徐々に反応が良くなっていくはずです。

 

発信はゴールではなくスタート

原稿ができて、まわりに読んでもらったら、思い切って発信してしまいましょう。ここからはあまり時間をかけてこねくり回してもいいことはありません。Xやnoteで発信することを「ゴール」だと思っている人がいますが、発信は「スタート」に過ぎません。

インターネットの世界では、ブラウザやスマホの向こう側にすぐ読者がいます。発信すると読者がダイレクトに反応してくれる。瞬時に「市場」につながります。そこでどんどん発信してアウトプットしていけば、どんどん市場からフィードバックをもらうことができます。

そこからPDCAをがんがん回して、改善していくことが大切なのです。SNS時代は「まず世に出して、そこから改善していく」のが正解です。

アウトプットを「ゴール」だと考えている人は、アウトプットをものすごいことのように考えています。中には「一世一代のオーディション」くらいに捉えている人もいます。しかし、発信した情報はいきなり何千万人に観られるわけではありません。「紅白歌合戦」に出るのとは違うのです。

最初に見られるのは、せいぜい数十人から数百人くらいでしょう。それくらいの人に見てもらって、そこでのフィードバックを受けて改善していく。小さなマーケットで「実験する」くらいの意識のほうが気軽に楽しくアウトプットできますし、結果としてコンテンツも磨かれていきます。

「発信はスタート」のマインドで、楽しくアウトプットしていきましょう。そのうちに「ああ、これはうまくいくんだな」「これはうまくいかないのか」というのがだんだんわかってきます。

ウケるウケないの感覚がつかめてきます。そうやってクオリティを上げていくことで、最終的に大きなマーケットでも反響を得られるようになります。

そしてSNS時代は「最高のものをみなさまにお届けします」という意識ではなく「まず現段階のものをお見せしますね! みんな感想ちょうだい!」くらいの意識でいたほうがいいかもしれません。

「完パケ主義」というより「カイゼン主義」。一方的に「出す」というよりも「コミュニケーション」をとりながら、みんなでよくしていくイメージのほうがうまくいくはずです。

 

発信しないと勝手にハードルが上がっていく

発信せずにいつまでもコンテンツを触っていると、どんどんハードルが上がっていきます。「これだけ時間と労力をかけたからには失敗できない!」と思ってしまうからです。

しかし現実は厳しいもの。たいてい最初の発信はうまくいきません。

発信をゴールだと考えている人は、そういうときに落ち込んでしまうのです。何週間も何ヵ月も、下手したら半年くらい「あたためて」から出したものなので、それが失敗するというのは大惨事なのです。

するとますます次の発信が怖くなります。次のアウトプットまでの期間も長くなる。PDCAの回数も減り、改善の機会もそれだけ減ってしまいます。

発信をスタートだと考えていれば、いきなり結果が出なくても焦りません。「ここから始まる」と思えるからです。

情報発信において、失敗は日常茶飯事です。失敗に慣れておけば、恐れなくなります。だからどんどんアウトプットできるようになる。アウトプットのハードルは自然と下がっていき、結果的に早くうまくいくようになります。

僕はもともと自意識が高いほうだと思いますが、日々Xで発信したり、定期的にnoteで発信したりすることで「スベったらどうしよう?」とか「これ、どう見られるかな?」といった自意識はずいぶん低くなりました。

発信を習慣にできれば、一回一回の発信を気にすることもなくなります。息をするようにアウトプットする。そうすれば「さっきの呼吸、どうだったかな?」などとは思わなくなるはずです。

「アウトプットがゴールだ」と思うと「失敗できない」というマインドになってしまい、肩に力が入ってしまいます。繰り返しますが、今の時代「アウトプットはスタート」なのです。そこから改善していけばいいのです。

 

「グッドビーンズ」を目指せばいい

こんな話を聞いたことがあります。

ある珈琲豆の焙煎士は「美味しい珈琲を目指してはいけない」と言ったそうです。なぜなら「美味しい」の基準は千差万別だからです。

苦い珈琲が好きな人もいれば、渋みのある珈琲が好きな人、酸味のある珈琲が好きな人など、人によって好みは異なります。だから、全員にとっての「美味しい珈琲」というのは目指せないのです。

ではどうするか? 彼は「グッドビーンズを目指せ」と言いました。焙煎士ができることは、最高の焙煎をして、その豆をベストな状態(グッドビーンズ)にすることだけ。

そうやって「いい豆」ができれば、それを「美味しい」と言ってくれる人が現れます。

コンテンツ作りも、この考え方に似ているのかもしれません。

そもそも全員にとっての「面白い」を目指すことは非現実的です。何を面白いと思うかは、置かれた立場や年齢などによって違います。感覚はそれぞれ違う。だから僕は少なくとも「自分が」面白いと思うものを目指そうと伝えてきました。

この焙煎士の言葉を借りれば、コンテンツの作り手ができることも「グッドビーンズ」を目指すことだけなのかもしれません。これまでに説明したように、必要な準備をし、取材をし、魅力的な言葉を引き出し、その言葉を伝わるようにパッケージする。そこから無理に面白くしようとすることは余計なことなのでしょう。

編集の段階でどんなに頭を捻っても、取材の現場で感じた面白さを超えることはできません。ひと通り編集が終わったら、なるべく早く外の空気に晒すことが大切です。やるべきことをやって「いいコンテンツ」ができていれば、何も心配することはありません。

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