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「もうダメだ」と無意識に自己否定...公認心理師が教える“自分に優しくする習慣”

上野恵利子(公認心理師)

2025年07月25日 公開 2025年09月17日 更新

親しい人に寄り添うように、落ち込んだ心を励ましてみませんか? 本記事では、公認心理師の上野恵利子さんが、ストレスをため込まないための方法を紹介してくれます。(取材・文:キムラミワコ)

※本稿は、『PHP』2025年7月増刊号の著者の連載「自分をケアする練習」より抜粋、編集したものです。

 

日ごろからストレス解消法をストックしておこう

私は精神科で看護師として働いていたころ、家庭や職場でさまざまな悩みを抱え、社会生活がままならなくなった患者さんと接してきました。しだいに病院での看護だけでなく、患者さんの心のケアも手助けしたいと思うようになり、公認心理師の資格を取得しました。

患者さんの多くは、「いつも通りに過ごしていたのに、ある日突然、強いストレスがやって来た」とおっしゃいます。でも話を聞いてみると、ごはんを食べられなかった、眠れなかった、楽しかったことが億劫になったなど、ストレスのサインを見逃していたことがわかります。

蛇口から水がコップに注がれるように、ストレスは徐々にたまっていきます。日ごろからストレスを解消しておかないと、そのうちあふれ出て、心が折れてしまうのです。

ストレスは、心・体・行動のどこかに現れます。大事な試験や会議の前にささいなことでイライラしたり(心)、頭痛や腹痛になったり(体)したことはありませんか? 心・体・行動のいずれかに現れることもあれば、2つ以上が組み合わさる場合もあります。

私はストレスがたまると、眠りが浅いために睡眠不足になり(体)、ネットサーフィンの時間が増え(行動)ていました。そのため、読書や料理をするなど、別の方法でリフレッシュするようにしていました。

ストレスのサインを見逃すと、「まだがんばれる」と無理をしてしまい、回復に時間がかかります。ひと言でもいいので、心や体や行動の変化を毎日記録してみましょう。「気分が落ち込んでやる気が出ない」「肩こりがする」「書類で3カ所も誤記をしてしまった」などとメモして自分を観察していると、ストレスの傾向がわかってきます。

少しでもストレスのサインに気づいたら、すぐに気分転換をしましょう。気持ちがすっきりすることをリストアップしておいて、実践するといいでしょう。たとえば「深呼吸する」「空を見上げる」「炭酸水を飲む」など、短時間でリフレッシュできることはたくさんあります。

ゆっくり時間が取れるときは、散歩や買い物をしたり、友達と話したり、旅行に行ったりしてもいいかもしれません。このようにストレスを自覚して対処することを、ストレスコーピングと言います。

心が折れてしんどい状態では、とっさに何をすればいいかわからなくなることがあります。元気なときに何か思いつくたびにやってみて、少なくとも30個は書き出しておきましょう。たくさんの選択肢があると、心にゆとりをもてます。

最終的に100個くらいあると理想的なので、楽しみながら1個ずつストレス解消法を増やしていきましょう。

 

「頼れる人リスト」を作ってみよう

精神科への入院を経て家庭や職場に戻れた人もいれば、入退院を繰り返す人も少なくありませんでした。心の回復には、自分は支えられていると実感できる「依存先」がどれだけあるかも重要になってきます。

ひとりの人に頼りすぎると、トラブルが起きたり失ったりしたときの影響が大きいですが、依存先を増やせたら、ある人に頼れなくなっても、別の誰かに相談できます。

私は患者さんによく「サポートネットワークを作ってください」と伝え、自分が頼れる人のリストを書いてもらっていました。自分を中心に、家族や親戚、友達といった身近な人から書いて、線でつないでいきます。深い関係の人はもちろんですが、顔見知り程度の浅い関係の人を書くことも忘れてはなりません。

たとえば、職場で席が近い人やロッカーが隣の人、よく行くコンビニの店員さんなど、気軽に声をかけあえる人です。

ストレスコーピングと同じく、100人を目標にできるといいですが、なるべく多くの人を書き出せることが大切です。普段から意識していないとなかなか思いつかないため、「あの人もいるな」と思い立ったときにつけ足していきましょう。リストを眺めるだけでも、「自分はひとりじゃない、頼れる人がいる」と安心できます。

 

「大丈夫」「なんとかなる」を口ぐせにしよう

誰もが頭のなかでつぶやいたり、無意識に言葉に出したりしています。これはセルフトーク(自己対話)と呼ばれ、1日に4万から6万回も繰り返しています。

気持ちが落ち込みやすい人ほど、「ああすればよかった」「ここができていない」などと、頭のなかで自分を責めてしまいがちです。

セルフトークでは、自分を否定する言葉を使わないように意識しましょう。「どうせ失敗する」「私にはできない」といった自己否定で不安が膨らみ、行動に悪影響を与えます。

失敗して「もうダメだ」「またやってしまった」と思ったときは、「大丈夫」「なんとかなる」と声に出してみましょう。自分に言い聞かせて口ぐせにすることで、気持ちが落ち着き、目の前の問題を解決するにはどうしたらいいかを冷静に考えられるようになります。

また、親しい人が悩んでいたら優しい言葉をかけるのに、自分には「もっとがんばれ」と追い打ちをかけていませんか? 自分を大切にして慈しむことを、心理学ではセルフコンパッションと言います。親しい人を思いやるように、自分をいたわってみてください。

たとえば、「上野さん、今日もがんばっているね」「恵利子ちゃんなら、きっとできるよ」というように、周りの人から呼ばれている名前で自分に語りかけてみましょう。声に出さずとも、想像するだけでも構いません。同僚や友人から話しかけられているように感じ、視野を広げることができます。

自分に優しくすることで、他人の苦しみやつらさにも、より目を向けられるようになります。自他ともに寄り添えることは、いい人間関係の構築につながります。普段から自分を大切にすることを、ぜひ心がけてみてください。

 

【上野恵利子(うえの・えりこ)】
公認心理師。大阪府生まれ。精神科の看護師として13年間でのべ3000人以上の患者と関わる。日本アンガーマネジメント協会公認講師。現在は、病院や企業向けの研修や講演、個人カウンセリングを行なう。著書に『「心の回復力」の高め方』(KK ロングセラーズ)がある。

著者紹介

上野恵利子(うえの・えりこ)

公認心理師

大阪府生まれ。精神科の看護師として13年間でのべ3000人以上の患者と関わる。日本アンガーマネジメント協会公認講師。現在は、病院や企業向けの研修や講演、個人カウンセリングなどを行なう。著書に『「心の回復力」の高め方』(KKロングセラーズ)がある。

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