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生き方

死ぬことはいつでもできる...坂口安吾が伝えたかった「人間が理解していない」一つのこと

山口路子(作家)

2025年09月24日 公開

本来、向き合わなければならない困難や現実。そこからそっと身を引く行為は、"逃避"と呼ばれ、どこかネガティブな響きを帯びています。作家・山口路子さんは、そうした逃避を肯定したいと語ります。

けれど、自分自身の人生からは、そう簡単に逃れることはできないのかもしれません。山口さんは著書『逃避の名言集』の中で、坂口安吾が遺した「いつでも、死ねる」という言葉に触れながら、生きるとは何かを見つめ直します。

※本稿は、山口路子著『逃避の名言集』(大和書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです

 

死ぬことはいつでもできます、そんなつまらないことをしてはいけません

いつでも、死ねる。
そんな、つまらんことをやるな。
いつでも出来ることなんか、やるもんじゃないよ。
――坂口安吾『不良少年とキリスト』

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「太宰の死は、誰より早く、私が知った」と安吾は言います。このエッセイは交友のあった太宰治の自死と、ときおり芥川龍之介の自死なども出しながら、愛情たっぷりに、その文学と人間性を描き出しています。「文学者の死、そんなもんじゃない。四十になっても、不良少年だった妙テコリンの出来損ないが、千々に乱れて、とうとう、やりやがったのである」、ばかやろう、と言う涙目の安吾の顔が浮かぶようです。

 

「いつでも死ねる」

つらくてつらくてしかたがないとき、もうすべてを終わりにしたい、と思うことがあります。

でも、なぜつらいのか、と考えればそれは生きてゆくことへつながるのです。生き続けるのがつらいから、終わらせようとするのです。

でも、安吾が言うように、死ぬことはいつでもできるのです。

だからそれを、いますることはない。

いったん死んだ気になってみるという方法もあります。するとそこがかならず再スタート地点になります。

安吾はこんなふうにも言っています。

「生きることだけが、大事である、ということ。たったこれだけのことが、わかっていない」。

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