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「ひとは生涯に何回ぐらいさくらを...」茨木のり子の詩に託された“生きる喜び”

杉原梨江子(聖樹・巨樹研究家、ハーバルセラピスト)

2023年01月31日 公開

歴史に名を連ねる偉人たちは、現在まで語り継がれる名言をのこしています。中には、花を特別な存在として深く愛し、生きるための指針や難局を乗り越えるためのコツを受け取っている様子が描写されていることも。

世界中で活躍した女性芸術家たちが、花を想い、託した"ことば"を、聖樹・巨樹研究家の杉原梨江子氏が偉人エピソードと共にご紹介します。

自分を励ますとき、誰かへエールを送りたいとき…心情に寄り添った花を探す時のヒントにしてみてください。

※本稿は、杉原梨江子著『偉人の花言葉』(説話社)より、一部抜粋・編集したものです。

 

今ここに生きている喜びを花に託して

「ことしも生きてさくらを見ています。ひとは生涯に何回ぐらいさくらをみるのかしら」
茨木のり子(詩人、1926-2006)/『さくら』より

毎年、春になると、誰もが桜を見上げます。染井吉野、山桜、八重桜、枝垂桜……。

この言葉は、詩集『食卓に珈琲の匂い流れ』にある詩「さくら」の一節です。今、ここに生きていることの喜びをわかち合いたい人に贈りたい言葉です。

人間より遥かに長い歳月を生きる桜の大樹が日本全国にあります。身近に立つ桜の木を、あなたはあと何回くらい見ると思いますか。茨木は「物心つくのが10歳くらいなら、どんなに多くても70回ぐらい」と言います。

それでも、もっと多く見るような気がするのは、「祖先の視覚もまぎれこみ重なりあい、霞だつせいでしょう」。かつてご先祖様が桜を見上げた記憶がDNAの中に組み込まれ、何度も見たような錯覚を起こさせるのでしょうかと。

茨木の花の言葉をもう1つ。

「人間の顔は、一本の茎の上に咲き出た一瞬の花である」

彼女の言葉は読む人に、一日一日をどう生きるのか、と問いかけてくるようです。

桜の季節、自分のために桜を飾るもよし、来年も一緒に過ごそうと大切な人に贈るのもよし。春を過ぎたら、その相手をイメージさせる花を選んでみるのも楽しい贈り物です。

◎サクラの花言葉「生きる幸せ」
 翌年の春もともに過ごしたいと夢を見て、桜の花束を大切な人に。

 

神宿る花木として邪気払いの神事に

「二十代は二十代の、八十代は八十代でしか持てない花(ツバキ)を咲かせ得る」
安達曈子(華道家、1936-2006)/『花をいける心』より

椿を愛した華道家、安達曈子のエッセイの一文です。花の咲いた瞬間は生命が燃え上がるとき。春夏秋冬それぞれに命燃える花の姿があり、人間も同じだと、この言葉に続きます。

「凛と挿した一輪には、人の気配すらする」と語り、暮らしの中に椿を活ける作品を数多く創りました。

椿は冬の間もツヤツヤとした葉を保つことから、強い生命力の象徴。神宿る木として、平安の頃から邪気払いの神事に使われました。樹齢千年を超えるものもある長生きの花木です。

この言葉は、「いくつになっても、自分をあきらめないでください」という椿からの叱咤激励ともいえます。曈子は「念ずれば必ずや、花が開くと、信じています」とも語っています。

現在、椿は2,000種類以上あるといわれています。命が燃え上がるような椿を見つけて飾りましょう。

赤一色なら野性味あふれる藪椿、暗紅色の黒椿。また、白い花びらに赤い斑が散った椿の花は情熱がほとばしるようで、妖艶な美しさがあります。

白露錦(はくろにしき)、正義(まさよし)、抜筆(ぬきふで)など。自分だけの花を咲かせようというメッセージを椿の花に託して。

◎ツバキの花言葉「命燃える」
 自分のために情熱をかき立てる椿を一輪。大切な人の記念日にその人に似た椿を。

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