「本を読むことは良いこと」といわれますが、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか?
本稿では、速く読めて、しかも記憶に残り、アウトプットにも使える独自の「高速読書」を考案された上岡正明さんに、読書の意義やその効果について解説して頂きます。
※本稿は、上岡正明著『高速読書』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
文部科学省も発表「子どもの成長には読書が不可欠」
文部科学省の調査からも、読書をする小学生ほど論理的思考力、意欲、関心、他人への理解があらゆるポイントで高くなっていることがわかりました。
文部科学省は2017年に「子供の読書活動の推進等に関する調査研究報告書」を発表しました。
調査は同年の1月から2月にかけておこなわれましたが、分析の結果、以下のようなことがわかりました(以下、報告書より抜粋)
・ 読書活動の度合いと子供の意識・行動等に関する得点との間には、正の関連性がある。
・ 読書活動と、意識・行動等に関する指標の得点との間の正の関連性は、個人属性や家庭環境の違い、また、ふだんテレビを見る時間や勉強をする時間等の違いを考慮しても見られる。中学生・高校生では特に「論理的思考」について、読書をする生徒の得点が高い。
・ 過去の段階での読書習慣の有無も、意識・行動等に関する指標の得点に関係している。小学生の段階で本をよく読んでいた中学生、中学生の段階で本をよく読んでいた高校生は、「論理的思考」「意欲・関心」「人間関係」等の面で得点が高い。
・ 小学生・中学生では、個人単位での比較だけでなく、読書に関する取組等が行われている学校に在籍している児童・生徒であるかという、学校単位での比較でも違いがある。
ここからは、子どもの成長には本が不可欠なことがわかります。しかも、数を多く読んでいるほど、きちんとしっかり成長しているのです。
子どもは、成長とともにだんだん話せるようになると、頭の中で考えたことをそのまま言葉にするようになります。
人気のテレビ番組『はじめてのおつかい』で、子どもたちがピンチになるとよく独り言を言っていますよね。あれなどはまさに頭の中に言葉を思い浮かべることで、脳が行動を促しているわけです。
ここからも、子どもの脳の発育にとって、読書というのはとても有益な働きしていることがわかります。
お子さんをお持ちの親御さんは、子どもたちにも読書の楽しみ方をぜひ教えてあげてください。
決断の正しさは読書で身につく
直感というのは、人間の膨大な情報量に経験や失敗などが積み重なって培われていきます。
脳のデータベースが人の100倍あれば、正しい直感が働くのは当たり前です。
そもそも人間の日々の行動というのは、99.9%は深い思考からではなく、無意識の直感によって判断されているわけです。
例えば、西洋版の将棋のようなゲームであるチェスでは、5秒で考えた手も、30分かけた手も、86%は同じなのだそうです。いくら熟考しても、ほとんど打ち手は変わらないのです。これを「ファーストチェス理論」といいます。結局のところ、決断の正しさというのは、その人がどれだけ脳のデータベースを充実させているのかによって決まっているのです。
ですから、たくさん本を読んで脳に知識を定着させていけば、そういった直感やひらめきが生まれ、正しい決断ができるようになります。どんどん読んで、自分の直感やひらめきを養っていく。データベースを増やしていく、と考えると良いと思います。
「考える長さ」と「決断の正しさ」は比例しない
つまり、「考える長さ」と「決断の正しさ」は、比例しないということです。
であれば、10秒考えればそれでも良い、ということもできると思います。
正しく考える、ということは考える時間に比例しないわけです。
さらに時間というのも有限です。いかに最小限の時間と投資で最大のパフォーマンスを発揮していくかにもっと意識を向けるべきです。
特にあなたが普通の会社員であれば、なおのことです。通勤時間もありますし、会議や待ち時間といった拘束時間もあります。あなたの自由な時間というのは、経営者である私より、もっと限られています。
だからこそ短い時間で自分のパフォーマンスを最大限に発揮して、結果を出していくということが求められる。そのためにも、高速読書で自分自身をしっかりと磨いて、自分の時間もしっかりと確保する。そして、自分の頭の中を編集して、情報を武器に変えていくことを習慣づけることが大切です。