M-1グランプリで史上初の二冠を達成したコンビ・令和ロマン。どんなボケに対しても冷静に、かつ的確に返すツッコミの松井ケムリさんは、人との距離感をどのようにとらえているのでしょうか。
初めての著書『ナマケモノの朝は、午後からはじまる。』(Gakken)を刊行したケムリさんに、人間関係を心地よく築くコツについてうかがいました。
もしも動物と漫才するなら...
――この度は出版おめでとうございます。最初から変な質問なんですが...本ではいろんな動物が登場する中で、ケムリさんが一番漫才を一緒にしたい動物はいますか?
【ケムリ】すっごい変なこと聞いてますね(笑)
ちょっと待ってください。(本を確認して)......ミーアキャットですかね。
――ミーアキャット。群れの中でそれぞれに役割があるんですよね。
【ケムリ】やっぱり自分の役割を分かっている人の方がいいですよね。それを遂行してくれる人の方が、お互い計算が立ちやすいです。
――予測不能な人よりかは。
【ケムリ】ボケの内容は予測不能でいいですけど、立ち回りを分かっている人の方がいいですね。
――本の中のゴリラの項で「コミュニティは大切にしたい」とおっしゃっていました。その人がいると場の空気が和むな、というタイプで思いつく人はいますか?
【ケムリ】和む必要があるのか、とも思いますけどね。別に和まなくても、いいのかも。
あえて言うなら、100%悪気のないミスをしてくれる人がいたら和みますよね。しかも大きな損害にならないミス。それが一番和みます。
あとは、プライドが高くないというか、「ありがとう」と「ごめんなさい」を言える人がいたらいいと思います。人間関係はそれが大事な気がします。
「燃えるほうへ行こうとする人」を引き戻すのは自分のため
――ケムリさんはお友達が多い印象があります。例えば、YouTubeチャンネル「僕らの別荘」の中での振舞いを拝見すると、炎上しないラインに引き戻して、みんな機嫌よく終われるようにしている。すごい才能だなと感じます。
【ケムリ】嬉しいです。ありがとうございます。(シドニー)石井がね、すぐ燃えるところに行こうとする人なんで(笑)
あとは空気悪いの苦手っていうのはありますね。ただ自分のためにやってるんでしょうね。自分にとって心地いい空気にしようとしているだけなんですよね。
――得意な人、苦手な人ははっきりしていますか?
【ケムリ】僕はマックスで苦手な人にでも全然笑顔でいれるんですよね。めっちゃ嫌なんですけど、外から見たらそんなにこの人のこと嫌いには見えないと思います。
――苦手な人と距離を取ったりはされるんですか?
【ケムリ】距離を取っていることを悟られないようにはします。その場から立ち去る理由をちゃんとつけるとか。「この後用事があるから」などと伝えて。
距離を取りたい時に、その人に嫌われる必要ってないと思うんですよね。たまにいますよね、わざと嫌われるほうを選ぶ人。一矢報いてやろうとするのは、正直愚かだなと思いますね。
――プライドが高すぎて負けが許せない人もいますよね。
【ケムリ】勝ち逃げしたい気持ちがあるんでしょうけど、敵を作るような行動をする人の気持ちは本当にわからないですね。
――動物はその目線から見るとどうですか?
【ケムリ】動物はプライドがないですから、そこはすごいですよ。ちゃんと逃げるし。それを見習いたいですね。
――他者との関係作りが上手な動物は何か思い浮かびますか?
【ケムリ】マナティーとか、ゴリラとか。僕が自分と似ていると書かせてもらったのはマナティーなんです。仲間がやられたら助けに集まってきちゃうんですよ。それで結局自分もやられちゃったりするんですけど。優しいんです。余裕があって優しい点は、一緒にいたら楽しいでしょうね。
コンビ間に「どちらが正しい」かは存在しない
――コンビ間の人間関係は、具体的にどんな気にかけ方をされていますか?
【ケムリ】コンビはどうなっても1対1なんで、どっちが正しいとかないんですよね。良いも悪いもないし、どっちが多数派ということもない。意見が違うことが当たり前として臨むということなんじゃないですかね。
――正しさを求めない、ということですね。
【ケムリ】二人でやっている以上、自分の意見が通ると思うのはかなり厳しいんじゃないかな。お互いの判断がそこまで無茶苦茶ではないと信頼し合えているから成り立っているんでしょうね。
――お笑い芸人の世界は自分が一番正しいと思っている人が集まってきそうなイメージがあります。その中でバランスを保った考え方をされている方は珍しいんじゃないかなと思ったりもします。
【ケムリ】僕とくるまは関係性として、お互いの判断がそこまで無茶苦茶ではないことを、なんとなく信頼し合えてるんですよね。 だから違う意見があっても、なんか成り立ってるんでしょうね。
喧嘩もないですし、コンビを組んだ当初からそんな感じでしたね。
(取材・執筆・撮影:PHPオンライン編集部 片平奈々子)