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7日間で突然頭がよくなる! とっておきの思考術

小川仁志(哲学者/山口大学教授)

2015年11月30日 公開 2022年12月15日 更新

《『7日間で突然頭がよくなる本』より》

落ちこぼれを京大→哲学者にしたとっておきの思考術

頭がよくないと生き残れない時代

 実は私はあまり頭がよくありませんでした。成績が悪いわけではありませんでしたが、少なくともすごい人ではなかったのです。「京都大学出身だからもともと頭がいいんでしょ」とよくいわれますが、私が合格できたのは、その年だけ二次試験の数学がなかったからです。その代わり小論文があったのです。文章を書くのだけは昔から得意だったので、それで合格したようなものです。京大合格は、私の人生で起こった唯一の奇跡といえます。

 私がすごい人間でないことは、就職してからも明らかになっていきます。威勢のよさだけで採用してもらった伊藤忠商事でも落ちこぼれます。その後フリーターとして4年半を過ごすわけですが、一応京大法学部出身だからと司法試験を受けても、箸にも棒にもかかりませんでした。その後30歳になってなんとか名古屋市役所に拾ってもらうのですが、そこでも落ちこぼれです。

 では、そんな私がいったいどうして哲学者などと名乗り、偉そうにテレビや新聞で発言し、高専や大学で教え、20冊もの本を出しているのか。それはある魔法を身に付けたからです。その魔法が、私に特殊な能力を与えてくれました。そう、もうおわかりですね。「哲学」です。

 つまり、哲学との出会いが、私を「頭がよい人間」に生まれ変わらせてくれたのです。先ほど京大合格が唯一の奇跡だったと書きました。その後私は博士号を取得し、こうして20冊もの本を書いて活躍している。これは奇跡などではありません。魔法による当然の結果なのです。本書では、私を「頭がよい人間」に変えてくれたその魔法を、悩める皆さんに伝授しようと思うのです。  

 失われた20年、低成長、何も決められない政治、閉塞感……。いまの時代を象徴する言葉は、いずれも生きることの困難さを表すものといえます。つまり、いまの時代は、普通に生きていくだけではもはや生き残れない状況にあるのです。生き残るためには、知恵が求められます。そう、頭がよくないとダメなのです。

 いつの時代も、頭がよい人間だけが得をしてきました。豊かな時代、うまくいっている時代はそれでもよかったのです。頭がよくなくても、サボっていても、それなりに生きていけたからです。しかし、厳しい時代には無理です。だからいまものすごい勉強ブームが起こっています。思考法の本が流行ったり、哲学本までが売れたり……。

 哲学本が売れたのはそれなりに理由があります。それは哲学という学問が、賢さの象徴になっているからです。哲学イコール難解というイメージがあると思いますが、その難解なものをやっている人は頭がよいに違いないというわけです。それで頭がよくなろうとして、哲学本に手を出す人が増えているのです。

 ここで、「頭がよい」ということの意味について少し説明しておきましょう。私のいう「頭がよい」とは、物事の本質をつかめる人のことです。会議でも授業でも、いったいいま何が問題になっているのか、何の議論をしているのか、それがきちんとわかることが、本質をつかむということです。

 人の話を理解するときもそうです。相手の言葉の意味をしっかりとつかんで、応答する。それができる人を、私たちは「頭がよい人」と呼ぶのです。皆が首をかしげているとき、「つまり、こういうことでしょ」といって、さらっとわかりやすく説明してくれる人がいたとしましょう。そんなとき、周囲の人たちはどう思うか。「あいつ、頭がよいな」と思うのではないでしょうか。この場合、その説明してくれた人は、物事の本質をきちんとつかんでいるわけです。だから、わかりやすく説明できたのです。

 したがって、「頭がよい=物事の本質をつかめる」だと思っていいでしょう。そして哲学は、こうした意味での賢さを私たちに提供してくれる学問なのです。これこそ私が、哲学を使って頭がよくなることを勧める理由です。

 しかし問題は、哲学本を読んだだけでは、すぐに頭がよくなることはないという点です。もちろん、読み続ければ、そしてそこに書いてあることの意味を考え続ければ、だんだん頭がよくなっていくでしょう。

 でも、それでは少なくとも数年かかります。哲学というのはビジネススキルとは異なります。あくまで地頭を鍛えるためのものなのです。地頭はそんなに急によくなるものではありません。それは皆さんも薄々気づいておられることと思います。IQが7日間で急激にアップした人の話を聞いたことがありますか?

 1つだけ地頭を急激に、そう7日間で頭をよくする方法があるのです。それは哲学のもっとも基本的なパワーである「物事の本質をつかむ」という方法をマスターすることです。これならたった7日間でできて、しかも小手先のテクニックや、すぐ忘れる暗記ものの知識ではなく、地頭、つまり本当に考える力を身につけることができるのです。

 拙著『7日間で突然頭がよくなる本』は、7日間であなたを哲学者のように頭のよい人間にすることを目的としています。

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7日間のトレーニング

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