一緒にいるとなぜか楽しい人。盛り上がってついつい話し込んでしまう人――普段親しくしている友人や同僚の中に、そんな人はいませんか。そうした一緒にいると楽しくて話がはずむ人には特徴があると、作家の有川真由美さんはいいます。
「会話がはずむ人になるにはコツがある」と語る有川さん。本稿では、話すのが苦手な人でも実践できる雑談術を紹介します。
※本稿は、有川真由美著『一緒にいると楽しい人、疲れる人』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
会話のきっかけは、あたりさわりのないことからでいい
「会話がはずむ人」は、話の切りだし方がうまいものです。でも、初対面の人、よく知らない人に話しかけるのは苦手、という人は多いのではないでしょうか。
相手がなにが好きで、なにに興味があるのか、どんな仕事をしているのか、見当もつかない。情報がないからといって、いきなり「ご趣味は?」とか「なんの仕事をされているんですか?」と訊ねるのも不躾な気がします。
または、上司や同僚であっても、飲み会や移動で一緒になったときに、「どう話しかけていいかわからない」という人もいるでしょう。仕事の話も堅苦しいし、プライベートの話題も、なんとなく気が引ける......ということもあるものです。
そんなに難しく考えることはありません。気のきいた話、中身のある話をしないといけない、ということもありません。話のきっかけは、だれもがするような、あたりさわりのないことでいいのです。
いちばん手っ取り早いのは、天気や季節の話です。ただし、さりげなく「自分の話」や「相手に振る質問」を織り交ぜるのがポイントです。「今日は冷えますね。私、南国育ちなので、寒いのが苦手で......」なんて言うと、「私も苦手なんですよ。だから、寒さ対策をバッチリしています」とのってきたり、「へー。南国育ちって、どこの出身ですか?」と質問してくれたりするものです。
「ここに来るとき、桜が咲いているのを見たんですよ。この時期に珍しいですよね」と言うと、「へー。めずらしい。桜といえば......」と、話をふくらませてくれるかもしれません。話のきっかけを探っているのは、相手も同じ。世間話をするように、気楽に話を提供すると、相手もほっとして応えてくれるはずです。
「視界に入ってきたもの」から思いついたことを言ってみるのもいいでしょう。「この会場、素敵ですね。食事もおいしいし、ランチにも使えそうですね」「ブルーのシャツがお似合いですね。私もその色、好きなんです」というように。「電車のなかで見かけたこと」「今朝、ニュースで聞いたこと」「その場の雰囲気から感じたこと」「相手を見て素敵だと思ったこと」など、自分が見たり、聞いたり、感じたりしたことを素直に話すことで、自分についても知ってもらえるはずです。
会話の始まりは、小さな勇気と自己開示から。「あなたと話したい」という気持ちが伝われば、じゅうぶんです。
話が途切れたときは「て・き・に・ち・か・し」でリスタート
うまく話が続かず、気まずい空気が流れてしまうとき、さりげなく話題を提供して、会話をふくらませられる人になりたいものです。そこで、ピンチのときに役立つ6つのキーワードが、「て・き・に・ち・か・し(敵に近し)」です(とくに深い意味はありませんが、たとえ敵に見えても近しい関係なれると覚えて)。
「て」(天気・季節)→「 明日から雨になるようですね。今週はぐずつくみたいです」
「き」(近況)→「先週、お休みをもらって京都に行ってきたんですよ」
「に」(ニュース)→「ニュースによると、若者の海離れが顕著で海水浴客はここ20年で4分の1以下になっているそうです」
「ち」(地域・まわり)→「 駅前にきれいなイルミネーションができていましたね」
「か」(体・健康)→「 いつもお元気ですが、健康に気をつけていることはありますか」
「し」(趣味・仕事)→「最近は、山登りはしていらっしゃいますか」
このように、「て・き・に・ち・か・し」と順番に話を進めていくか、このなかから、よさそうな話題を選んで振ると、あっという間に時間が経ってしまいます。間が空いたときの話しはじめは、「そういえば......」とか、「あ、そうだ。......」とか、「ところで......」と、ふと思いついた感じでOK。自然にリスタートできます。
「そういえば、この間、こんなことがあったんですよ」というように。さらに、「〇〇さんは、こんなとき、どうされますか?」なんて振って、相手が発した単語から、「〇〇といえば......」と、連想ゲームのように新たな話題につなげればいいのです。
いろいろある雑談のネタのなかでも、聞き手がいちばん引きこまれるネタは、「こんなことがあった」「こんなものを見た」という、本人が実体験したことです。もっともリアルで鮮明に伝えられるので、相手も興味を示し、話がはずみます。
雑談のネタをストックするためには、積極的になにかと関わるクセをつけることです。小さなことでいいのです。たとえば、タクシーに乗ったら、運転手さんと話してみる。新しいショップができたら、なんだろう?と覗いてみるというように。すると、「タクシーの運転手さんが面白い人で......」「1階のカフェのドリアがめちゃおいしくて......」というように、「言わずにはいられない!」というネタが自然に集まってきます。
「相手に少しでも楽しんでもらおう」というサービス精神で、会話を盛り上げてください。
声をかけてもらえない人が、声をかけられるようになる方法
中学、高校のとき、遊びに誘われたり、学級委員に推薦されたり、グループ分けで「一緒にやらない?」と声をかけられる人といったら、ちょっと目立っていて、みんなから人気のある子、興味をもたれる子だったのではないでしょうか。
私はまったく目立つ要素がないために、なかなか声をかけてもらえず、しかも引っこみ思案で、自分から「仲間に入れて」とも言えない。そんな状態にひっそり傷つくこともありました。でも、声をかけてもらえない私が、声をかけてもらえるように心がけていたことが2つあります。
①だれに対しても、挨拶だけはきちんとする
好き嫌いの分け隔てなく、広く挨拶をしていたら、ひょんなところで会話がはずむことがあります。笑顔で挨拶をするだけで、声をかけてもらえる確率はぐんと高まります。
②声をかけてくれた人には、精一杯の感謝を示す
声をかけてもらったら感謝をこめて、相手のためにできることをします。簡単なことでいえば、会話のなかで、相手の興味のある情報を提供することなどです。
つまり、最初の声をかけてもらう努力をするより、声をかけてくれた人が"ふたたび"声をかけてくれるように努力をするということです。お店でいえば、新規顧客を獲得する努力をするよりも、やってきてくれたお客さんに満足してもらう努力をする、リピート率100%を目指すということ。これは、いまもまったく変わらないスタンスです。
仕事がなかったフリーライターのころ、声をかけてくれた編集者には、「相手がなにを求めているのか?」をとことん考えて、自分のできるかぎりの最高の記事を書くことを目指してきました。その結果、多くは、ありがたいことに長いつき合いになりました。
「声をかけてもらえない」と嘆いている人、ちょうどいいではありませんか。1人でいるときに、できることもあります。焦らずに、それを楽しみましょう。でも、もし声をかけてくれた人がいたら、感謝すること、その人のためにできることをしてください。たとえ、小さくても。そして、一緒にいる時間を楽しんでください。
そんなふうに相手を大切にしようとするところから、ほんとうのつながりができていきます。何度も声をかけあえる関係は、人生の財産の1つだと思うのです。