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仕事中のネットサーフィン、昼食後の睡魔 行動経済学が示す「だらけた自分」を自動で動かす工夫

竹林正樹(行動経済学者)

2026年07月17日 公開

仕事中、集中力が途切れたままダラダラと過ごしてしまった―そんな経験はありませんか。行動経済学者の竹林正樹さんは、仕事開始直後の状態がその後のパフォーマンスに大きく影響すると話します。

竹林さんの著書『すぐやる人の脳のクセ!』では、脳のクセを活かして行動を改善するためのナッジを紹介しています。本稿では、効率よく仕事するためのナッジをご紹介します。

※本稿は竹林正樹著『すぐやる人の脳のクセ!』(飛鳥新社)より一部を抜粋・編集したものです。

 

仕事の質を高める! 昼間に効く集中ナッジ

何事も初動が大切です。仕事の「開始直後」の状態は、その後のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。午前中なら「仕事をはじめた直後」、午後なら「昼休み明け」。このとき、理性(集中力)が一時的に高まるため、このタイミングの過ごし方が、それぞれの時間帯のパフォーマンスを左右します。

脳は、マルチタスクが大の苦手です。たとえば、「走りながら、考える」という2つのことを同時にしようとすると、どちらも中途半端になってしまいます。直感はそれほど器用ではありません。私たちの脳は、「走る」「止まる」「考える」「整理する」のように、行動を明確に分けないと、業務はミスだらけでアイデアも思い浮かばないといった「二兎追うものは一兎をも得ず」の現象が起きるのです。

仕事で高い成果を出すためには、最初にタスクを整理してやるべき行動を細分化したうえで、直感の特性に寄り添ったナッジを設計することがパフォーマンス向上につながります。

 

ネットサーフィンはお昼のご褒美にする

こんな人にオススメ:仕事中についネットサーフィンしてタスクが片づかない人
ナッジ:順序ナッジ

ネットサーフィンをはじめると、初頭バイアスの影響でその後の仕事や勉強の効率が低下します。一度はじめると現状維持バイアスによって、なかなかやめることができません。さらに、ネット運営会社の「せっかく一度アクセスした人には、次のニュースも見てもらおう」といったマーケティング戦略が加わると、ますますやめられなくなります。

そのことを踏まえると、「仕事中はネットに近づかない」が最適解のはずです。とはいえ、私たちの脳は「業務で必要だから」「少しくらいはいいだろう」と理由をつけてネットニュースに近づきたくなります。

これに対しては、「ネットにアクセスできるのは、1つ目のタスクを完了したときのご褒美」と設定することで、メリハリの効いたネットとの付き合い方ができるになります(順序ナッジ)。

ここで注意すべきは、「タスク→ご褒美」の順番を逆にしないこと。先にご褒美をもらってしまうと、ありがたみがなくなり、ずるずるとネットサーフィンを続けてしまうからです。ご褒美をあとにすることで、「せっかくのご褒美タイムなのに、しょうもないサイトを見ても仕方ない」という意識が芽生え、ムダなサイトを見る気がなくなります。

とくに気をつけるべきは、メールチェックです。メールに添付されたリンク先をクリックすると、その流れで別のサイトも開きたくなり、気づいたらネットサーフィンに突入することもあります。そうした観点からも、メールチェックは午前中に行うべきではありません。お昼前や終業前など理性が枯渇する時間に、あえてメールチェックを行うとよいでしょう。

 

ランチ後に歯を磨く

こんな人にオススメ:ランチ後に眠たくなる人、午前と午後の区切りをつけたい人
ナッジ:セルフモニタリングナッジ

私たちは午前中のストレスを午後にも引きずってしまいます(初頭バイアス)。「午前と午後は別物」という切り替えのシグナルがあると、午後を新たな気持ちでスタートしやすくなります。

そこでオススメしたいのが、昼休みに歯を磨く習慣です。いったん席を離れ、洗面所で鏡を見ながら歯を磨くことで、物理的にも気分的にもリセットができます(リフレッシュナッジ)。とくにミントフレーバーの歯磨き粉にはリフレッシュ効果があるので、オススメです。

歯の汚れが落ちて口の中がスッキリすると、頭も切り替わりやすくなります。これは、「儀式的なスイッチ」が、心の状態にも好影響を与えるからです。昼休みに限らず、ストレスを感じたらすぐに歯磨きするのもオススメです。カバンの取り出しやすい場所に歯磨きセットを入れておくといいですよ。

 

午後の仕事開始時に、終了時刻をフセンに書く

こんな人にオススメ:ダラダラと残業してしまう人、上司や先輩が帰らないと帰りづらい人
ナッジ:コミットメントナッジ

長時間労働は、心身の健康リスクを高めるだけでなく、労働生産性も低下させることがわかっています。それでも残業に突入すると、「せっかく19時まで残ったんだし、もう少し頑張るか...」「周りがまだ働いているのに、自分だけ早く帰るのは気まずいな...」といった気持ちが芽生えやすくなります。これは、現状維持バイアスや同調バイアスの影響です。そして、これらの認知バイアスは疲れているときほど強くなります。

だからこそ、理性が比較的働いている午後の仕事開始時点で、あらかじめ「残業するかどうか」「残業するにしても、何時になったら帰るか」を決めておくことが求められます。

やり方はシンプルです。「残業する」と決めたら、その終了時刻またはタスク内容をフセンに書き、視界に入る場所に貼りましょう。さらに、帰宅時間を家族に伝えたり、SNSで「今日は19時に帰ります!」と宣言したりすると、「有言実行しなきゃ」という意識が働きます(コミットメントナッジ)。その結果、ダラダラと残業することが少なくなるのです。

これはパーキンソンの法則(人は時間に余裕があると、そのぶん仕事もダラダラ長くなる心理)にも合っています。このように、あらかじめ終わりの時間を決めておくことで、仕事をそれに合わせて終わらせようとするようになり、自然と効率が上がっていきます。

著者紹介

竹林正樹(たけばやし・まさき)

行動経済学者

青森県出身。立教大学経済学部、米国University of Phoenix大学大学院(Master of Business Administration)、青森県立保健大学大学院修了(博士(健康科学))。
若い頃、祖母に通院するよう説得して拒絶された経験から、「人を自発的に健康行動へと動かす」ことの探求をはじめてナッジ理論に出合う。現在、「頭ではわかっていても、健康行動できない人を動かすには?」をテーマにした研究を行っている。「ホンマでっか!? TV」(フジテレビ)をはじめ、各種メディアでナッジの魅力を発信し、年間約200回の講演を行っている。
著書に『心のゾウを動かす方法』(扶桑社)、『ビジネスパーソンのための使える行動経済学』(大和書房)、『行動経済学トレーニング』(かんき出版)などがある。

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