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社会

女子高生のSNS特定で不審者が続出 盗撮被害を生んだ「特定班」の恐怖

斉藤章佳(精神保健福祉士・社会福祉士)

2026年08月18日 公開

SNSへの投稿やAI技術の進化により、子どもたちが思いがけない性被害に巻き込まれるケースが急増しています。斉藤章佳氏の著書『校内盗撮』にて、「特定班」や「ディープフェイク」など、身近に潜む最新のネット被害と家庭での対策を解説していきます。今回は、そんな興味深い研究結果を同書よりご紹介します。

※本稿は、斉藤章佳著『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「特定班」がもたらす恐怖

盗撮被害がさらに深刻になるのは、盗撮の画像や動画がインターネット上に拡散されたときです。ひとたび情報がネットの海で拡散されれば、もはや個人の力で制御できません。不特定多数の人々に性的に消費され、デジタル空間に半永久的に残り続ける「デジタルタトゥー」と化し、被害者は終わりのない恐怖と苦しみを抱えることになります。

近年、さらなる脅威となっているのが、「特定班」と呼ばれる存在です。窓の外の景色や電柱の看板、わずかに映り込んだ背景から、個人の生活圏や撮影された場所を割り出す人たちです。

過去には、こんな事例がありました。TikTokで女子高生が制服姿でダンスする動画を投稿したところ、ほんの数秒間、下着が映り込んでしまいました。投稿者本人は気づいていなかったものの、SNS上では、下着が映り込んだ瞬間だけを切り取った「切り抜き動画」が拡散。また、投稿者が身につけていた制服から高校が特定されてしまいました。

ある日、このダンス動画を投稿した女子生徒は、通学中に見知らぬ中年男性から「パンツ売ってくれるんでしょ?」と話しかけられたといいます。この動画自体は、盗撮とはいえないものの、同意なき性的な画像・動画の拡散は性暴力になることを物語っています。

2025年12月には、「制服がかわいい」とTikTok内で評判になった神奈川県内の高校近辺に不審者が続出し、40代の弁護士など計4名が撮影罪などの疑いで任意捜査されています。この学校の最寄り駅では、それ以前から盗撮被害が多発し、同年1月から11月までの間で、計9名が書類送検されています。

もちろん、TikTokなどのSNSへの投稿が、即座に身の危険につながるわけではありません。しかし、個人や学校などの所属先がネット上で拡散されてしまうと、それを「なかったこと」にするのは不可能ですし、盗撮やストーカーといった性犯罪者の呼び水となる危険性は否めません。

性犯罪者に悪用されるおそれのある画像・動画を自ら拡散しないためにも、家庭では「学校内や、制服を着用しての撮影は禁止する」「通学路や最寄り駅など、学校や自宅の特定につながる場所での撮影も避ける」「顔は出さずに楽しむ」など、SNSを楽しむためのルールを設けておくことは欠かせません。

 

写真が悪用される時代へ 広がる性的ディープフェイク

近年、生成AI技術のすさまじい進化によって、デジタル空間での性被害は新たな段階に入っています。なかでも問題視されているのが「性的ディープフェイク」です。生成AIサイトや画像加工アプリを使って、実在する人物の画像・動画を性的に加工し、悪用する行為です。

この性的ディープフェイクの問題は、名古屋市で発覚した教員グループによる盗撮事件でも発覚しています。加害者のひとりが、教え子の写真を用いた性的ディープフェイクを所持していたのです。彼は手元にあった児童の画像を、性的ディープフェイクに加工する業者に送り、画像の生成を依頼。業者から受け取った画像を教員グループに投稿したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪に問われています。AIが生成した画像を「児童ポルノ」として罪に問う裁判は、これが国内初の事例です。

ひと昔前は、性的ディープフェイクの主なターゲットは芸能人やアスリートでした。しかし近年、被害の裾野は一般の子どもたちにまで広がっています。

警察庁の統計によると、2025年に全国の警察に寄せられた相談や申告は合計114件。被害者の約9割を中高生が占め、加害者が同級生や同じ学校の生徒だったケースは、最多の65件です。(図4 -1)

男子高校生がクラスメイトの画像をもとに、有料で性的画像を生成するよう専門業者に依頼。作成された画像が、今度は業者によってSNS上に公開、拡散されたという事案も報告されています。

盗撮は、そこに「いる」だけで被害に遭う性犯罪ですが、「何もしなくても」被害に遭ってしまう。それが、性的ディープフェイク問題のおそろしさです。

卒業アルバムの写真が、誰かに悪用されているかもしれない。身近なクラスメイトが自分を盗撮し、それをもとに性的ディープフェイクを生成しているかもしれない。こうした不安感や緊張感のなかで、今の子どもたちは学校生活を送っているのです。

なお、性的ディープフェイクによる被害は、世界規模の課題となっています。ユニセフ(国際児童基金)などが11か国を対象にした共同調査によれば、過去1年間に少なくとも120万人の子どもが、自身の画像を性的に加工される被害に遭っています。日本の15歳未満の子どもの数は約1300万人ですから、11人に1人の子どもが被害に遭っている計算になります。ユニセフはこの状況に「ディープフェイクであろうと、虐待は虐待だ」と警鐘を鳴らしています。

現在、日本国内では、性的ディープフェイクを包括的に取り締まる法律は未整備で、政府は対策の検討を急いでいます。

著者紹介

斉藤章佳(さいとう・あきよし)

精神保健福祉士・社会福祉士

加害者臨床家。西川口榎本クリニック副院長。1979年生まれ。あらゆる依存症の臨床に携わり、現在までに3500名以上の性犯罪者の地域トリートメントに関わる。3児の父親。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(共にイースト・プレス)、『小児性愛という病│それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方』(集英社)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『セックス依存症』『子どもへの性加害性的グルーミングとは何か』(共に幻冬舎新書)など多数。

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