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藤原辰史さん『生類の思想』が小林秀雄賞に 選考委員が語った「心を揺さぶる文章」

Moguru編集部

2026年10月15日 公開

2026年10月9日、第25回小林秀雄賞の贈呈式が行われました。受賞作は、藤原辰史さんの『生類の思想 体液をめぐって』(かたばみ書房)です。

本書は、大気・海洋・土壌汚染やアレルギーの増加、免疫の不調、日常化する暴力、子どもの商品化、奪われる睡眠時間など、現代社会が抱える問題を考察したエッセイ・批評集です。

 

「大きな問題」と闘う文章

選考委員を代表して登壇した森田真生さんは、小林秀雄と哲学者・三木清の対話を紹介しました。

学問は日々の生活のなかから生まれ、人はそれぞれ「自分だけがぶつかった特殊な問題」を究めていく――。

森田さんは、藤原さんが「すごく大きな問いと格闘している」からこそ、その文章に心を揺さぶられるのではないかと語りました。

さらに、小林秀雄が哲学者ベルクソンについて論じた評論から、「哲学は、統一から出来ている道であって、統一に達する道ではない」という言葉を引用しました。

森田さんは、胚が細胞分裂を繰り返して一つの生命体を形づくる過程になぞらえ、『生類の思想』についても、さまざまなテーマを寄せ集めたのではなく、「藤原さんの思想の統一が、あふれ出すようにして一つの有機体を形成している」と評価しました。

また、小林秀雄が「論理を尽くす」ことと「言葉を尽くす」ことを区別した文章にも言及しました。使い勝手のよい「ツルツルでピカピカ」の概念に頼るのではなく、「もれる」「たかる」「生類」といった言葉が持つ歴史や力に目を向け、そこから思考を組み立てていると指摘しました。

森田さんは、「大きな問いと闘っていること」「一つの統一から多様な思考が生まれていること」「言葉を尽くして書かれていること」を挙げ、『生類の思想』は小林秀雄賞にふさわしい作品だと選評を結びました。

 

藤原辰史さん「書く場所を作っていただいた」


(左から)藤原辰史さん、新潮ドキュメント賞を受賞した繁延あづささん

受賞スピーチに立った藤原さんは、選評を読み、「書いてよかった」と感じたと笑顔で語りました。

『生類の思想』には、保育士や小学校教員らが手がける小規模な媒体や、路上生活者を支援する雑誌「ビッグイシュー」などから依頼を受けて執筆した文章も収められています。

藤原さんは、これらの文章について、自分一人の意思で書いたというよりも、依頼者や媒体、そこに集う人々から「書く場所を作っていただいた」と振り返りました。

そして、今回の受賞を機に、文章を書かせてもらっているという事実を、改めて自分自身に言い聞かせていると語りました。

最後に藤原さんは、本書が生まれるきっかけをつくった、かたばみ書房の編集者や、執筆を支えてきた家族への感謝を述べ、スピーチを締めくくりました。

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