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三島由紀夫賞に『はくしむるち』 豊永浩平さんが戦後80年で向き合った「沖縄と救済」

Moguru編集部

2026年07月02日 公開 2026年07月02日 更新


豊永浩平さん

2026年6月26日、第39回三島由紀夫賞の贈呈式が行われました。三島由紀夫賞は、小説、評論、詩歌、戯曲を対象に「文学の前途を拓く新鋭の作品一篇」に贈られる賞で、受賞作は豊永浩平さんの『はくしむるち』(講談社)です。

『はくしむるち』は、沖縄を舞台にした長編小説です。現代の沖縄を生きる少年少女たちと、80年前の戦場を生きた少年兵たちの物語が交錯し、現在と戦中・戦後の時代を行き来して描かれる作品です。

 

「22世紀になっても小説を書いてください」


高橋源一郎さん

選考委員を代表して選評を述べた高橋源一郎さんは、まず最終候補作5作がそれぞれに魅力を持っていたと説明しました。そのうえで、最終的に間宮改衣さんの『弔いのひ』と、豊永さんの『はくしむるち』の2作が残り、選考委員の間で意見が分かれ、白熱した議論が展開されたものの、受賞作は『はくしむるち』に決定しました。

高橋さんは、豊永さんについて「23歳だそうです。なのにこんなに上手に小説が書けてどうするのですか」と述べ、さらにデビュー作『月ぬ走いや、馬ぬ走い』(講談社)で群像新人文学賞と野間文芸新人賞を受賞していることにも触れ、「やりすぎです」とユーモアを交えて紹介。

『はくしむるち』の生と死の境界が揺らぐ世界観の魅力に触れつつ、そのうえで、「豊永さんの素晴らしいところは書きたいことがあるところです」と語り、さらに「その書きたいことが世界の重要な何かに繋がっている」と評しました。

選評の最後に高橋さんは、豊永さんが2101年にもまだ98歳であることに触れ、「22世紀になっても小説を書いてください」と呼びかけ、祝意を伝えました。

 

「救済はいつやってくるのか」を考えた


左から、川端康成賞を受賞した古川真人さん、山本周五郎賞を受賞した蝉谷めぐ実さん、豊永浩平さん

続いて登壇した豊永さんは、東京に来て1年になると話し、『はくしむるち』は沖縄と東京を行き来しながら書いた作品だと説明しました。戦後80年という節目が近づくなかで意識していたのは、前作『月ぬ走いや、馬ぬ走い』のラストシーンを希望が見えるような形に再考したいということでした。

そこで注目したのが、沖縄で広く知られる「命どぅ宝(命こそ宝)」という言葉です。その出典として、山里永吉さんの戯曲『首里城明け渡し』にある「いくさ世もしまち みろく世もやがて 嘆くなよ臣下 命どぅ宝」という一節を挙げ、豊永さんは「命どぅ宝」の前に置かれた「みろく世」という言葉に目を向けたと語りました。

「みろく世」とは、弥勒が現れて人々を救済する世を指す言葉です。「救済はいつやってくるのか、もし今やってくるのだとしたら、どのような形で現れるのか」、その問いについて考えながら、作品を書き進めたと述べました。

また豊永さんは、6月23日の慰霊の日を初めて東京で過ごしたことにも触れました。その日、自身の小説の読者と出会ったといいます。その読者は、もともと沖縄に強い関心を持っていたわけではなかったものの、近年の文学賞受賞作などを読むなかで豊永さんの作品にたどり着いたそうです。その経験について、豊永さんは「全くの外部に、自分の小説も届くことができたんだ」という感動を抱いたと語りました。

スピーチの後半では、『はくしむるち』の重要なモチーフとして登場するウルトラマンにも言及。沖縄出身で『ウルトラマン』の脚本家を務めた金城哲夫さんについて、"日本と沖縄の架け橋になりたい"と語っていた人物として紹介しました。

自身が金城さんの名を出して語ることは「おこがましい」と前置きしつつ、ウルトラマンをモチーフに小説を書き、その作品を通じて外部の読者と出会えたことについて、「本当にこの作品を書いてよかった」と話し、スピーチを締めくくりました。

 

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