「アニメ文化外交」が日中友好を実現させる
2013年07月25日 公開 2022年07月07日 更新
雪解けの気配がみえない日中関係。しかし「反日」という一般的なイメージと、中国の若者を知り尽くした櫻井孝昌氏の印象はまるで違う。
中国人女子たちがいま愛してやまないもの。それはアニメやマンガ、J-POPなどの日本文化だという。
中国人女性たちがあこがれる日本のポップカルチャーやファッションの実態から見えてきた日本文化の潜在力に迫る。
※本稿は、『日本が好きすぎる中国人女子』(PHP新書)の内容を、一部抜粋・編集したものです。
日本のアニメだけが共通の話題
現代の中国は日本以上に熾烈な競争社会、学歴社会である。有名大学をめぐる高校生の受験戦争は、生半可なものではない。大学入試では、点数だけでなく、各省ごとに入学者数の制限があるという。要は、テストの成績が圧倒的によくないと志望大学には入れない。
そんな状況下にあって、若者たちのあいだでアニメだけが共通の話題になるという話をよく耳にする。非常に納得できるエピソードだ。
文化という枠組みでアニメを捉えたとき、実写のドラマや映画以上に興味深い特徴として「みる人が共通体験をもちやすい」という傾向があげられる。
リアルな俳優が演じる実写版とは違い、二次元キャラクターが演じるアニメのストーリーは、観客をその世界観に巻き込みやすい。現実の俳優が演じていれば、それを「演技」という世界で人は判断するが、アニメの場合、より感情移入してみることが、現実ではないぶん容易なのである。
アニメファンのあいだで使われる言葉に「覇権アニメ」というものがある。3カ月ごとにつくられる多くの新作アニメのなかで、もっとも多くの人たちの心を掴んだ作品がファンのあいだでそう呼ばれる。
テレビの視聴率に基づいた定義ではなく、(そもそもいまアニメの場合、視聴率だけで作品の可否が判断されることは少なく、DVDや関連グッズなどの売り上げまで含めて評価される)、ネットなどでの評判を通して、アニメファンのあいだで自然にできあがっていくヒエラルキーがそれなのだ。
まさに「共通体験」を象徴する概念といえるだろう。
そして、同じ共通体験をもった者どうしは、そのことに関しての会話ならいくらでも語り合えるのである。
激しい競争社会にいる中国の若者たちが、心を許して話せる素材がアニメであるという現象は、もっと注目されてもよいだろう。