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「日本の保守政策」が右寄りとは言えない理由

竹田恒泰(作家/慶應義塾大学講師)

2013年10月03日 公開 2022年12月27日 更新

祖国を誇りに思うのは自然なこと

戦後、「国」は悪いものの代名詞として使われてきたが、国を愛する気持ちは高まる一方である。また、大震災の影響か、国のために生きることが「かっこ悪い」から「かっこいい」に変化しているように思える。震災後に自衛隊の志願者が急増したことからもうなずける。

学校の授業で将来の夢を発表する生徒が「お国のために生きます」とでも言おうものなら、教員は国民主権などを持ち出して「お前はお前のために生きろ」などと指導したことだろう。

「IT会社社長になって金持ちになります」という生徒にはエールを送ってきたはずだ。本来、学校は「私」よりも「公」の大切さを教え、世のため人のために生きることの尊さを伝える使命を持つはずである。

もしかすると学校は、自由・平等の教育を通して、子どもに個人主義を植え付ける機関になっていなかったか。この流れが震災後、確実に変わってきていると思うのだ。

そのことを肌で感じたのは、平成23年12月23日に皇居で行なわれた天皇誕生日の一般参賀に参加したときのことだった。震災後最初の一般参賀で、しかも天皇陛下が長期間のご入院から退院あそばした直後だっただけに、大勢の参加を予想していたものの、私は参加者のなかの若者の比率がかなり高かったことに驚いた。

私自身、数年ぶりの一般参賀だったが、以前は高齢者中心だった。ところがそのときは、明らかに若者中心だったのである。若い人が戦後初めて皇室に興味を持った結果だと思った。

震災後間もなく天皇陛下が国民に発せられた御言葉や、被災地を頻繁にご訪問になる両陛下の御姿は、天皇と国民の絆そのものを見る貴重な機会になったのではなかろうか。

テレビ越しであっても両陛下の真撃なお姿は、多くの若者たちの気持ちを動かしたに違いない。教科書では「象徴」とだけ説明される天皇について、理屈を超えたものを感じた若者は多かったはずである。

変化はそれだけではない。書店の品揃えはその時代の世相を敏感に反映しているといわれるが、震災前と後では、明らかに並ぶ本の種類が変わった。

それまでは日本を罵倒する本ばかり売られていたが、震災後はそれとは正反対に、日本の可能性や底力、そして魅力などを伝える本が山積みになり、いまだにその傾向は続いている。

震災と外患と民主党政権を経験することによって、日本人は戦後初めて日本に興味を持ち始めたようだ。いまや日本人として生まれてきたことに誇りを感じ、日本という国が存在することに感謝の気持ちを抱く人が増えているように思える。

これまで私たちは、国を愛したり好きになったりしてはいけないという教育を受けてきた。たしかに社会にはそのような空気が蔓延し、少しでも国を肯定しようものなら、軍国主義と罵られ、袋叩きにされる暗黒の時代を過ごしてきたのである。

祝日に国旗が掲揚されないのもその表れであろう。日本国内にある国旗で、いちばん数が多いのはイタリアの国旗で、2番目がフランス、そしでようやく3番目に日本の国旗だというのだから、驚くほかない。

自分の生まれ育った国を誇りに思って大切にすることは、人としての自然な反応であり、むしろそうするのが自然なことではないか。日本人にとって日本は祖国であるから、特別な国であってよいはずだ。

そう、私たちは日本を好きになってもよいのである。これからは誰もが胸を張って「日本が好き」と言える時代になると信じている。

 

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