デジタルデトックスのすすめ〔1〕「ネット依存度」をチェック!
2014年02月19日 公開 2024年12月16日 更新
《『デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本』より》
写真撮影:伊藤菜衣子/イラスト:加納徳博
「デジタルデトックス」でデジタルライフを快適に
「あなたはスマホなしでも生きていけますか?」
この質問にイエスと即答できる人はいないのではないでしょうか。もちろん僕もきっぱりイエスとは言い切れません。
スマホやタブレット、ノートパソコンが1人1台の時代になり、いつでも、どこでもインターネットにつながっている環境は当たり前のものになりました。さらに、ネットにアクセスすれば、ニュースに音楽、動画、ゲームなどあらゆるコンテンツを、その場で、しかも無料で楽しむことができます。
スマホひとつあれば、道に迷うことだってありません。欲しいものが見つかれば、その場で相場を調べて、一番安いものを注文することもできます。これほど便利な生活を送ることができるなど、20年前、いや10年前でも想像すらできませんでした。
しかし、その便利さゆえに、こんな経験をしたことはありませんか?
・寝る前のスマホを「あと数分だけ」でやめられなかったことは1度や2度ではない
・圏外はもちろん、電車などでわずかな時間でもつながりにくいとイライラする
・FacebookやLINEが原因で人間関係がこじれてしまったことがある
いまやネットやスマホなしの生活は考えられません。しかしその一方で、昨今「ネット依存症」という言葉がメディアを賑わしているように、その弊害が社会問題となっています。
実は先ほどの質問は、この「ネット依存」をはかる尺度を、僕がアレンジして作成したものです。もちろん、すべてに該当したとしても「ネット依存」と診断されるものではありませんが、あてはまる部分もあるな……と感じた方も多いのではないでしょうか。
また、依存症といわずとも、“つながり疲れ”といわれるSNS上での人間関係を煩わしく感じるという人も多くなっています。
始めた時は、遠く離れた旧知の友人・知人や、共通の話題や趣味・噂好で新たに知り合った人との「つながり」を持つことができ、近況のやり取りを楽しんでいたのに、今では「つながり」が広がることへの喜びよりも、「いいね」をつける義務感だけが大きくなり、やめたいけどやめられない……。
僕は、ソーシャルメディアの最大の魅力は、その偶然性による出会いだと思ってきました。しかし、連日報道されるスマホやSNSが絡む炎上事件やプライバシーの侵害、情報漏洩、いじめ、ストーカー、果ては殺人事件まで……、僕たちの生活を楽しく、便利にするはずだったソーシャルメディアの、ダークな側面が、ネットのヘビーユーザーだけでなく、一般社会をも侵食しています。
ここで紹介する「デジタルデトックス」とは、「デトックス=解毒」の言葉が示すとおり、ネットやスマホといったデジタル環境の持つ負の側面から「少し離れる習慣」を取り入れようというものです。
解毒といっても、ネットやデジタル機器をすべて捨てて、世俗離れした仙人のような生活をすすめるものではありません。ネットによって生まれる「ムダな時間」や「面倒な人間関係」を整理し、デジタルライフを快適に過ごすための、いわば「情報のお片付け」のようなものと考えてください。
僕が感じているのは、こうした 「デジタル環境」が、ムダな時間や面倒な人間関係をつくり出しているということだけではありません。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、誰もが洪水のように押し寄せる情報や刺激に流されるように生きてしまっている――言い換えれば、ネットやスマホに「使われている」怖さがあるのです。
「使われる」のではなく「使いたいときに使う」――この当たり前のことをすっかり忘れてしまって、ネットから流れてくる情報に振り回されるのは、もう終わりにしよう。これが本書『デジタルデトックスのすすめ』のメッセージです。
「ネット依存度」をチェックしてみよう
デジタルデトックスを考えるうえで避けて通れないのが、社会問題にもなっている「ネット依存症」です。
では具体的には、どういった症状があると「依存症」と判断されるのでしょうか。
ネットとの付き合い方をはかるうえで、指標となるチェックリストがないか、「ネット依存症」専門の外来を設置し、ネット・スマホ依存症の治療と研究に取り組んでいる、成城墨岡クリニック(東京都)の墨岡孝院長に聞いてみました。 成城墨岡クリニックは、医療機関としてではなく、精神科医療に関する最新の知見と人材を集めた総合研究所を設立し、ネット依存症についての研究と「デジタルデトックスについての研究と診療」を行っています。
「ネット依存度をはかる際、世界的な標準になっているのは、臨床心理学者のキンバリー・ヤングが作成したネット依存の尺度(スケール)です、8項目と20項目の2種類の尺度があります。アメリカ・ニューヨーク州のセント・ボナベンチヤー大学の教授で、インターネット中毒センター所長も務めるヤングは、1998年の段階で、『インターネット中毒 まじめな警告です』(毎日新聞社)という本を刊行して、ネット依存へ警鐘を鳴らしていました。
日本でも、ヤングの尺度をもとに2013年8月に行った調査では、全国の高校生52万人がネット依存症の疑いがあるという数値が出ました。総務省のデータもこの尺度を使っています」
では、さっそくこのスケールをもとに「ネット依存度」をチェックしてみましょう。あなたは、いくつあてはまりますか。
次に、それぞれの質問ではどんなことがチェックされていたかをみていきましょう。
1は「ネットへの没入感」、2と5は「時間のロス」、3は「ネットの制御不能状態」、4は「ネットへの禁断症状」、6は「ネット依存による実生活でのトラブル発生の可能性」、7は「隠蔽」、8は「現実逃避」となります。
特に、注意した方がいいのは、制御不能(3)、勉強や仕事といった社会生活への悪影響、人間関係への悪影響(6)、禁断症状(4)だということです。前項で紹介した質問は、この重要項目をアレンジしたものです。
1998年につくられた尺度ではありますが、一考の価値があるのではないでしょうか。
<書籍紹介>
「つながり疲れ」を感じたら読む本
「ムダな時間」「面倒な人間関係」など、ネット上のストレスをすっきり整理する方法を伝授。かしこく使えば、もう疲れない!
<著者紹介>
米田智彦(よねだ・ともひこ)編集者
1973年、福岡市生まれ。青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、プロダクト開発、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースに携わる。2005年より「東京発、未来を面白くする100人」をコンセプトにしたウェブマガジン「TOKYO SOURCE」を有志とともに運営。数々の次世代をクリエイトする異才へのインタビューを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキングなどの最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方の現場を実体験。2013年、その内容をまとめた 『僕らの時代のライフデザイン 自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方』(ダイヤモンド社)を出版。共著に『これからを面白くしそうな31人に会いに行った。』(ピエ・ブックス)、『USTREAMビジネス応用ハンドブック』(アスキー・メディアワークス)、編集・プロデュース作品に『混浴温泉世界 場所とアートの魔術性』(河出書房新社)、『マイクロモノづくりはじめよう「やりたい!」をビジネスにする産業論』(テン・ブックス)、『セカ就!世界で就職するという選択肢』(朝日出版社)等がある。