「優位戦思考」で強い日本を取り戻せ
2014年04月24日 公開 2022年10月13日 更新
「孤立」よりも、もっと苦しいことがある
安倍氏の「覚悟」が理解できない人たちには、戦後の国際社会における日本はどのように見えているか。彼らは、戦後の枠組みを動かしがたい現実として受け入れるのみで、その現実を変える意志を持つことに熱意がなく、その可能性を考えない。
大東亜戦争の敗北から日本が教訓としたことは、通説としては「国際的な孤立はいけない」ということだった。国際親善に失敗すれば、たちまち国際的に孤立し、孤立すればいじめがやってきて、いじめに反発すれば直ちに国際紛争に発展し、武力を持たない日本はそれに耐えられない。何より我が国は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」平和国家だから、国際親善を第一として周囲との摩擦回避に努め、相手の要求は飲むことにする。譲歩こそが日本の生きる道となった。『朝日』の社説も『毎日』の社説もこれを前提としている。
たしかに、「孤立」は誰でも嫌なものである。しかし、孤立よりも、もっと苦しいことがあるのを戦後の日本人は忘れている。それは屈従や隷属である。
無視されたり、約束を反故にされたり、“貢献”を強要されたり、内政に干渉されたりということを、戦後日本はどれほど経験してきたか。原則として国際親善を求めるのはよい。しかし、そのためにも時々は程よい距離をとる、「ノー」と言う、という外交技術があることを知らなければいけない。それを「外交関係を悪化させる」と懸念するのは、劣位戦思考しかないからである。
安倍氏の「覚悟」は、どこかの国に「屈従」したり「隷属」したりすることのないように日本を導くことである。そのためには、国民個々が強くなって安倍首相を支える必要がある。そして日本国民が強くなるためには、日本国民の徹底した弱体化、精神を骨抜きにすることを企図したGHQの諸施策の後遺症を払拭することが不可欠である。
<書籍紹介>
劣位戦思考では国家もビジネスも未来がない。あらゆる交渉にかかわるリーダー、プレイヤーにとって有効な「優位戦思考」について論及。
<著者紹介>
(くさか・きみんど)
評論家、日本財団特別顧問
1930年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。日本長期信用銀行取締役、ソフト化経済センター理事長、東京財団会長などを歴任。ソフト化、サービス化の時代をいち早く先見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍する。現在は日本財団特別顧問、社会貢献支援財団会長、三谷産業〔株〕監査役、日本ラッド〔株〕監査役。
著書に『日下公人が読む2014年~日本と世界はこうなる』『安倍晋三が、日本を復活させる(共著)』(以上、ワック)、『いま日本人に読ませたい「戦前の教科書」』(祥伝社)、『新聞の経済記事は読むな、バカになる(共著)』『自主防衛を急げ!(共著)』(以上、李白社)、『思考力の磨き方』『日本精神の復活』(以上、PHP研究所)など多数がある。