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「ビッグチャンス」日本企業が再び世界の覇者になる日

冨山和彦(経営共創基盤[IGPI]代表取締役CEO)

2014年08月13日 公開 2024年12月16日 更新

日本企業、反転攻勢の大チャンスが到来している。グローバルゲームのルールを知り尽くした冨山和彦氏が、世界で勝てる人事・組織への切り替え方を説いた。

※本稿は、冨山和彦著『ビッグチャンス』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

日本は成長センターのど真ん中に位置している

この先、日本の企業と産業が世界と伍していくにはどうすればいいだろうか。1つ言えることは、日本は地政学的に非常によい場所に位置している。地の利があるのだ。

これから40~50年ぐらいの世界経済の成長セクターはどう考えても、太平洋をぐるりと囲んだパンパシフィック地域になる。反時計回りに東アジア、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、アメリカ西海岸という環太平洋地域の中で、日本は地理的にも経済的にも真ん中にある。これはとても強固な事実だ。

特にアジア圏の中で、日本は最も法律的、政治的、社会的に安定した国だ。天災はあるが、気候も温暖で暮らしやすい。治安もよい。だから、日本をベースにした会社はその点でものすごくアドバンテージがある。こうした事実に気づいていない日本人は意外と多い。

たとえば、シンガポールには四季がない。一年中夏で代わり映えしない。気持ちよくゴルフができる季節はなく、つねに脱水症状、熱中症と闘いながらゴルフをしなければいけない。仕事で能力をフルに発揮するにはジャーも大事で、そういう面で魅力に乏しい。

東京の夏はその気になれば、1、2時間のドライブで海に泳ぎに行ける。冬も1、2時間のドライブでスキーに行ける。夏は海で泳げて、冬はスキーができる。そして春は桜が咲き誇り、秋は街路樹が色づく。こんな都市はなかなかない。基本的に魅力的な場所だという点が1つ。

 

チームプレーに勝機あり

もう1つは、これからはプロフェッショナルの時代とは言っても、本当の個人プレーで勝負が決まるのは投資銀行やハイテクベンチャーなどごく一部に限られている一方で、今後の世界的な解決課題(したがってビジネス機会)であるヘルスケアサービスやエネルギー関連で必要なテクノロジーは、本質的に複合的かつ経験蓄積的な技術が重要になる。

熱のコントロールや重量的負荷の問題、ソフトとハードを組み合わせた制御技術、非常に複雑なセンシングとコントロール技術、それもかなり厳しい利用環境に耐えられるシステムが求められるからだ。

そこに関わる限り、製造業はもちろんIT産業のかなりの部分も、持続的かつ統合的なチームプレーで勝負が決まるということだ。継続的な改善とチームで仕事をするカルチャーは、日本企業の強みが生かせる時代の再来である。それは間違いない。

そうなると、チームプレー力が鍵となる時代の働き方を、今の時代、知識集約型のチームワークの時代に合わせてつくりあげることが、どの国の企業でも問われることになる。

ただ、働き方についての好みは人それぞれで、いわゆるスターシステムで個人が1人で戦い続けるというワークスタイルが好きな人もいれば、長期間仲間とチームを組んで一緒に仕事をするほうが好きな人もいる。これはエリート、非エリートにかかわらず、どちらも必ずいる。

ヨーロッパは後者のタイプが多い。ドイツ人は明らかにそうだし、米国人にもチームプレーのほうが好きな人が一定の割合でいる。たとえば、軍人は完全にチームプレーの世界。

だから、私のビジネススクール時代の遊び仲間には、軍隊経験者が多かった。中国人の中にも個人のエゴとエゴのぶつかり合いが苦手な人がいて、そういう人はチームワーカー向きだ。

企業というのは本質的に共同体に価値を置くコミュニタリアンだから、チームプレーが得意というのは本来強みの源泉のはずだ。問題は、まずチームワークありきで「全員同じでなければいけない」という勘違いがまかり通ってしまったこと。本来手段であるべきものが目的というか、前提になってしまったことが日本企業の悲劇なのだ。

チームワークーバリューや、持続性をベースにするという世界観は大事にすべきだが、その奴隷になってはいけない。チームプレーの時代が再来するからと言って、耐用年数が過ぎたカイシヤモデルでは、もはや戦えないことは間違いないのだ。

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