THE21書評から
2010年11月13日 公開 2022年08月17日 更新
『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』
橘 玲著
「やってもできない」人も幸福になることはできる
本書の著者も、そのような自己啓発のイデオロギーを批判する。行動遺伝学や進化心理学などの科学的な知見を引いて、「やってもできない」ことのほうがはるかに多いと主張する。では、能力万能主義の世の中で、能力のない人は幸せになれないのだろうか。著者は、「伽藍を捨ててバザールに向かえ」「恐竜の尻尾のなかに頭を探せ」と説く。
幸福とは、金銭的な成功ではなく、友情や愛情によってつながった人間関係のなかで認められることだ。ITの発達によって、いい仕事をすればいい評判が立ち、みんなに共有されるようになった。みんなからいい評判を得るには、会社という隔離された空間(伽藍)からグローバル市場(バザール)に出るしかない。
大きな恐竜(市場)の頭になることをめざさなくてもいい。ロングテールのなかのサブジャンルで頭になればいいのだ。規模が小さくても、ITを使ってビジネスモデルを構築すれば、「好き」を仕事にできる。
「自由で効率的な情報社会で、好きなことをやってみんなから評価してもらう。それを収入につなげるちょっとした工夫さえすればいい」という著者の幸福実現法は、新時代の幸福論として、有益な示唆に満ちている。
1)『未来改造のススメ』もこれからの幸福論を考える対談。コンテンツが無料化したいま、ベーシック・インカムを導入して、仕事を義務から権利にし、お金ではなく経験を報酬にすべきだという。
2)『勝間さん、努力で幸せになれますか』は、自己啓発と幸福をめぐって社会現象にもなった対論。
3)『ビジネス書大バカ事典』はビジネス書「もどき」の「成功本」が跋扈【ばっこ】する現状を哄笑する。(S.K)
『未来改造のススメ』 |
『勝間さん、努力で幸せになれますか』 |
『ビジネス書大バカ事典』 |
THE21 最新号紹介
THE21 2010年12月号
頑張って働いても給料がアップするどころか、ジリジリと収入が減っていく昨今......。多くのビジネスマンが、「このままで将来は大丈夫なのだろうか?」と不安を感じています。そこで今月号では、凄腕ファイナンシャルプランナーの藤川太氏によるライフプランの解説をはじめ、独自の「マネー哲学」をもつ経営者やコンサルタントに読者に役立つ「お金との向き合い方」を講義していただきました。また、さまざまなジャンルのお金の専門家たちが、お金にまつわる世代の素朴な疑問に答えてくれます。将来不安が解消されるヒントが満載です!