失敗と過ちから学べ!ドナルド・トランプが語る人生成功の哲学
2016年07月05日 公開
ドナルド・トランプ著、月谷真紀訳『トランプ思考』より
これは取るに足らないことか? それとも大惨事か?
困難な状況への対処の仕方には人間性がよく表れる。逆境に対応する場合、その状況をどう見るかも重要な要素である。同じ出来事で破滅する人もいれば、いっそう強くなる人もいる。だから私はいつも自分にこう問いかけているのだ。「これは取るに足らないことか、それとも大惨事か」と。困った状況のさなかで、それが理性のよりどころとなる。
前に情熱が成功に必須の要素だと述べたことがある。理性もまた必要だ。失敗や過ちを犯したら、それは理性や客観性を用いる良い機会かもしれない。経験から何かを学ぶチャンスでもある。一つの扉が閉じれば別の扉が開くということわざもある。別のチャンス、別の機会が待っているという意味に私は解釈している。ただしそれに対して心をオープンにしておかなければならない。開いた扉が見えているはずなのに、扉が開いていることも、ましてその重要性にも気づいていなかった人たちを私は何人も知っている。
私にとって状況が大きく転換したときのことを覚えているが、そのとき学んだのは、常に集中力と勢いを持ち続けなくてはならないということだった。以前にもこの二つの成功の秘訣に触れたが、なぜかといえば私はこの二つを痛い思いをして学んだからだ。集中力を失ってたちまちいくつもの失敗に見舞われたことがあった。しかし別の考え方もできる。前に進む勢いさえあれば、問題は一過性のものにすぎない。誰でも苦境を経験するが、ポジティブな態度で前に進み続ければそれは取るに足らないことになるのだ。
何かをしようと決めたとき、さまざまな問題が起きるのを予期するだけの経験が私にはある。やるだけの価値があってしかも楽にできることなどめったにない。永遠に山の頂上まで岩を押し上げる運命を背負わされたシジフォス(訳注:ギリシャ神話に登場する人物。シーシュポス、シシュポスなどともいう)のような気分になるときもあるが、まあ、そういうこともある。だから淡々と続ける。あきらめない。私にはそれにふさわしい努力をするだけの集中力があり、その努力を無駄に終わらせないだけの勢いもある。厳しい状況を経験したおかげでいろいろ学んだ。
過ちの処理を誤らないための一つの方法は、過ちはいつでも起こりうると心得ておくことである。悲観論者になる必要はないが気持ちの準備をしておくのだ。問題、失敗、過ち、損失はすべて人生の一部。受け入れなければならないことだ。もし起こったとしても、いつ起こったとしても、ショックを受けてはいけない。物事に振り回されて逆上したり、頭が真っ白になったりしてしまってはいけない。自分が相対しているのは何かを知って平常心を保とう。不意打ちをくらってしまったら、必ずその経験から何を学んだかを自問しよう。漫然と同じまちがいを繰り返しながら運を天に任せてはいけない。自分の置かれた状況をその都度反省しなければ、何度も同じ困難に見舞われて痛い目に遭うはめになる。
ここは考えどころである。やめるべきか、前進すべきかの見きわめをつける必要があるのだ。受けて立つべきか断念すべきかはいつも判断が微妙で難しい。あまり判断に迷わない場合もある。悪い人物が絡んでいて改心させようがないとわかったときなどだ。この場合は、相手と縁を切るのが賢明である。しかし、まちがいは誰にでもあると認めてその事実を受け入れる努力をすべきときもある。自分を見放したくないと思うのと同じように、他人をただ切り捨てるわけにはいかないときもある。経験と分別が生きるのはこういう場合である。だが何よりも大事なのはけっして自分をあきらめないことだ。周囲の観察を怠らず、やるだけの価値のあるものに向かって努力していれば、どこで潮目が変わるかわからない。
不動産の世界に飛び込んだばかりの頃、私は契約を取ろうとしてあらゆる障害に耐え抜き克服したと思ったことがあった。それは思い違いだった。何とか契約にこぎつけるまでに、細かい問題を一つひとつつぶしていくのに2カ月余分にかかった。何が待ち受けているか最初の時点でわかっていたら、チャレンジして最後まで頑張り抜く度胸があったかどうかあやしいものだ。でもやってよかったと思っている。私にとって初めての大きな成功となったこの仕事は、グランド・セントラル駅に隣接するグランド・ハイアット・ホテルの修復である。学ぶところが大きかったかって? いうまでもない。どんな失敗もすばらしい学びになる。そういう過程を経て私はビジネスマンとしての腕を磨いてきたのだ。
打たれ強く、意志を強く持ち、学ぶことに貪欲であれ。そうすれば学べるはずだ。だから過ちや失敗を怖がるな。あなた自身のすばらしい何かをつくり上げる途上での、学習ツールになるからだ。今日という日に学べるものは誰にでもある。それを忘れなければ、成功のチャンスは格段に増す。