中堅・中小企業の人材育成~本気ですすめる社員の意識変革
2016年05月15日 公開 2024年12月16日 更新
どうすれば社員の意識変革がすすむのか
「心が変われば行動が変わる行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」
これは、米国の心理学者・哲学者であるウィリアム・ジェームズ(1842~1910)の言葉とされ、長年にわたって多くの経営者やアスリートたちの活動の拠りどころとなってきた言葉です。ジェームズの主張によれば、運命をよりよいものへ変えようと思うならば、原点である心(意識)を変えることが重要であるというのです。
そういえば、日本航空(JAL)の再建を託された稲盛和夫氏が最初に取り組んだのも、幹部社員の意識変革でした。稲盛氏は「時代を動かすのも、経済を動かしていくのも、あらゆるものの原動力というのは人間の“心の状態”で決まる」と述べ、意識変革の重要性を訴えています。
しかし、意識変革は「仕事の実態と遊離した精神論」などとみなされ、企業内教育の現場では軽視されているのが実状です。経営において目に見えない無形資産(インタンジブル)が注目される時代だからこそ、人材育成は本来もっと意識変革を重視すべきなのです。
そのためには、意識変革の仕組みを明らかにするとともに、実効性のある取り組みを広く啓発する必要があります。そこで、本稿では、どうすれば意識変革が成功するのか、具体的な事例を織りまぜながら、そのポイントを考えたいと思います。
意識変革の原則 [1]「変わることの必要性」を感じないと人は変わらない
多くの人は、変わることを好みません。なぜならば、変わることには痛みが伴うからです。その痛みを覚悟してでも変わらせるには「変わることの必要性」を感じさせなければなりませんが、それはむずかしいことではありません。以下の簡単な2つの問いを投げかければいいのです。
「あなたはどうなりたいのか?」(理想の状態、あるべき状態)
「それに対して現状はどうなっているのか?」(現実の状態)
この2つの問いかけによって、理想と現実とのあいだのギャップの存在を認識したとき、人は変化への第一歩を踏み出すことができます。つまり、現状に対して漠然とした不安・不満を抱いている段階から、ギャップを埋めるために何をしていくかを考える段階へとステップアップすることによって、「行動を起こせば理想の状態に近づける」という気づきと勇気を得ることができるのです。そこから、その人の変化が始まります。
事例 1
大手電機メーカーの下請け会社(従業員数40名)での事例です。日ごろから素行の悪かった中堅社員Aさんは、社内研修会への参加を契機にガラリと態度が変わり、今では製造部門の班長として立派に仕事をしています。研修会で「2つの問いかけ」に直面させられて、それまで向き合うことのなかった仕事や人生の意味を悟り、それに対する自己の現状を省みたとき、自分を変える必要性を強く感じたのです。
「変わることの必要性」を感じないと、人は変わらない。当たり前とも言える原則ですが、案外軽視されているように思われます。変わることの必要性を感じさせないまま、OJTや集合研修を実施していないだろうか。
あらためて、自社の現状を点検してみてはいかがでしょうか。