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脳科学者が勧める「朝時間」の使い方

茂木健一郎(脳科学者)

2016年12月29日 公開 2023年09月12日 更新

「朝の3時間」は、最速で仕事がはかどるゴールデンタイム

出勤前に勉強をしたり、早朝出勤して仕事を片づけるという「朝型」の人が増えているという。だが、そもそも、「朝型」であることはなぜ良いと言われるのだろうか。自身も子供の頃からずっと朝型だという脳科学者の茂木健一郎氏は、脳科学的に見ても、「朝」はゴールデンタイムだと話す。朝時間と脳の関係性についてうかがった。<取材・構成=石井綾子、写真撮影=長谷川博一>

 

なぜ、朝は「脳のゴールデンタイム」なのか

朝目覚めてからの約3時間は、脳が最も効率よく働く「ゴールデンタイム」だと茂木健一郎氏は語る。自身の朝の時間の使い方を振り返っても、小学生のときは朝から蝶を捕まえたり、ジョギングをして過ごし、高校生になると英語の原書に挑戦するなど「朝がつらい」と感じた時期はないという。脳科学的に見ても、朝の脳の状態は1日のうちで一番冴えているのだとか。

「私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。
それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です」

そのため、朝はトップスピードで駆け抜け、夕方以降はリラックスタイムとして割り切ったほうがいいと話す。

「1日のワークスケジュールは、ハンググライダーをイメージしてもらえばいいと思います。朝起きた瞬間が飛び立ったときで、そのときが一番高いところを飛んでいます。つまり朝はトップスピードで仕事をこなしていくわけです。そして時間の経過とともに降下していくグライダーは、夕方に向かうにつれて仕事の効率が落ちていくのと同じ。このようなイメージでスケジュールをこなすのが脳科学的にも理にかなっています。
時間帯によって、それぞれに向いている行動を具体的にお教えしますと、まず出社する前の朝のゴールデンタイムは、誰にも邪魔されない時間と捉えてください。この時間は、ひとりでできる活動に向いています。
出社してからは、午後に向かうにつれて人と協力してやっている仕事にシフトさせていければ理想的です。夜は会食や異業種交流会など人との交流に時間を当てたらよいと思います」

 

起きた瞬間まずチェックするものとは?

茂木氏はベッドサイドテーブルに、iPhoneとマックブックを置いている。起きたらすぐに活動を開始するためだ。具体的には、どのように過ごしているのだろうか。

「朝起きると、まず一番にやるのはツイッターのトレンドワードをチェックすること。ツイッター上で今、話題になっているニュースがすぐにわかるからです。トレンドを確認するのは、一般のニュースでは出てこない若い世代の情報を効率よく収集するためですね。これは1分くらいで終わります。 
その後、近くのコンビニまで歩いて行って目を覚まします。往復で10分程度でしょうか。帰ってきて取りかかるのが、連続ツイートの執筆です。自分のツイッター上に、今気になっていることを連続でツイートしてあげていくというもの。10分から15分かけて書きます。
それが終わると、メールチェックに十分かけます。次に朝食を食べながら、新聞を読むのに20分。そしてジョギングをした後にシャワーを浴びる。これにかかる時間が20分から30分です」

ジョギングが終わると、いよいよ本格的な仕事に入っていく。

「日によってやることが違いますが、今日ですと学会が近いのでデータ解析。それからタクシーで仕事先に向かう間の30分間で雑誌の原稿を書きました。ここまでで朝、ひとりでできる仕事は完了します」

 

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毎日、朝イチでコンビニに行く理由とは?

著者紹介

茂木健一郎(もぎけんいちろう)

脳科学者

脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別研究教授。
1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。
主な著者に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『脳内現象』(NHKブックス)、『脳と仮想』(新潮社)、『「脳」整理法』(ちくま新書)、『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)、『脳と創造性』『脳が変わる生き方』(以上、PHPエディターズ・グループ)などがある。

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