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生き方

前向きな気持ちになれる、脳のリセット法

茂木健一郎(脳科学者)

2012年03月05日 公開 2024年12月16日 更新

過去に縛られ一歩前に踏み出すことができない、ということがあるのではないでしょうか。

「必要なモノは取っておき、あとは忘れることが脳の一番大事な働き。しかも脳が素晴らしいのは、ただ取っておくだけではなく、同時に編集、整理作業をしているところにある」と、脳科学者である茂木健一郎氏は言います。

つまりムダなことは忘れ、脳を整理することで、より前向きに生きることができるということです。

茂木氏直伝、今ここを生きるための"脳と心の整理術"を紹介します。

※本稿は、茂木健一郎著『忘れるだけでうまくいく 脳と心の整理術』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

無理に忘れようとしなくていい

人はひどく落ち込んだ時、落ち込んでいる自分以外の姿を想像できないものです。たとえば、受験に失敗した、就職活動がうまくいかない、恋愛が破綻した、そのような時、仮に楽しいことがやってきても、「私に楽しいことなんてあるわけがない。

こんなにも落ち込んでいるのだから」と考えてしまうのです。もしかしたら、「こんな失敗をした自分は、楽しんではいけないんだ」と自らを戒めてしまうのかもしれません。

しかし本当は、自分の中に「何人もの自分」がいていいはずです。失敗してしまった自分、落ち込んでいる自分、でも友だちと遊んで楽しい自分、別のことを考えて嬉しくなる自分、というように。自分が子どもだった頃を思い返してください。

友だちと喧嘩をして怒っていても、ご飯を食べたらおいしいし、何かいたずらをして両親に叱られても、テレビを見たらそんなことはきれいさっぱり忘れてしまう、何か悩みかあっても一晩寝たらすっかり元気になっていたのが子ども時代です。その頃の感覚を思い出して、僕たちも「何人もの自分」がひとりの人間の中に混在していることに慣れたほうがいいのです。

落ち込んでいる時は、何をしたって今の状態は変わらないように思ってしまいがちですが、たとえ大失敗してしまったとしても、脳はその時々に合わせて切り替えることができます。

大失敗した自分と、友だちと遊んで楽しんでいる自分が、同じ人間の中に同居していても不思議ではありません。自分の中には多様な自分がいると思えれば、気が楽になるのではないでしょうか。

失敗してしまったことを無理に忘れようとする必要はありません。ただ、頭をその場その場で切り替えていけばいいのです。繰り返しになりますが、無理に忘れようとしても、かえってその対象に注意が向いてしまうので、むしろ別のことで気を紛らわせたはうがいいのです。

そして他のことをやっている時でも、時々は「ああ、今、失敗したことを思い出してしまったな」という瞬間が訪れるでしょうが、それに対して神経質になる必要はありません。冷静にそんな自分を見つめ、徐々に今、没入していることに注意を再び向けていけばいいのです。

頭の切り替えは、多様であればある程その人間の強みになります。何か失敗した時や落ち込んだ時に、お酒を飲んで紛らわすことしかできない人よりは、読書、アウトドアなど没頭できる趣味や友だちと会うなど、手持ちのカードがいくつもあったほうが、よりひとつのことにとらわれなくて済みます。

いろいろ経験することで自分の中に多様なカードを用意しておくと、いざという時に柔軟に対応できる自分になれるはずです。

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新しいものを好む脳の性質を利用する

著者紹介

茂木健一郎(もぎけんいちろう)

脳科学者

脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別研究教授。
1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。
主な著者に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『脳内現象』(NHKブックス)、『脳と仮想』(新潮社)、『「脳」整理法』(ちくま新書)、『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)、『脳と創造性』『脳が変わる生き方』(以上、PHPエディターズ・グループ)などがある。

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