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生き方

松下幸之助は「自分は運が強い」と信じたからこそ成功した!

大江弘(PHP研究所社会活動部長)

2017年01月13日 公開 2024年12月16日 更新

 

「運が強い」と信じることは、成功の秘訣

「説得というものは、他人に対するものばかりとは限らない。自分自身に対して説得することが必要な場合もある。自分の心を励まして、勇気をふるい起こさねばならない場合もあろうし、また自分の心をおさえて、しんぼうしなければならない場合もあろう。いろいろな場合があろうと思う。 (中略) 私がこれまで自分自身への説得をいろいろしてきた中で、今でも大切ではないかと思うことの一つは、『自分は運が強い』と自分に言い聞かせることである。本当は強いか弱いかわからない。しかし、それを強いと考える。自分自身を説得して、強いと信じさせるのである。そういうことが、私は非常に大事ではないかと思う。私自身、そう信じてきたのである」(『人を活かす経営』)

松下幸之助の人生を眺めた場合、誰しも運が強い人、恵まれている人とは言わないでしょう。地主の家に生まれたはずが4歳の頃に没落、極貧の生活に陥り、小学校も満足に卒業できず中退。兄弟姉妹、父母も早くに亡くしています。セメント会社で働いていた折、船から落ちてあわや溺れ死にそうになったり、自転車に乗っていたとき車に衝突して線路上に倒れ、電車にひかれそうにもなっています。さらに20歳の頃、結核の初期の肺尖カタルにかかり、血を吐いています。当時としてはまず助からないという病で、療養に専念すべきところでしたが、働かなければ食べていけないという状態で、働いては休み、休んでは働くという苦しい暮らしを強いられています。とても運が強いなどと思えません。

ところが松下は、そうした自分の運命に対して次のように考えました。

「(自分は運が強いと)信じることができれば、心の中に非常に強い支えができてくる。仕事の上でも何でも、何か困難な問題に直面しても、自分は運が強いのだから、これは何とか乗り切れるだろう、さらによい状態を生み出すことができるだろうというような信念というか、自信というか、強い考え方が生まれてきたのである。そして、そうしたものがあったおかげで、さまざまな困難にも心乱すことなく、勇気がくじけることもなく、何とか今日まで歩んでこられたわけである」(前掲書)

つまり、運が強いと自分を説得し、ついにはそう信じることができるようになったおかげで、力強く物事に取り組むことができ、簡単にあきらめたりくじけたりしなくなり、ついには成功を招くことにもつながったのではないかと言うのです。物事を成し遂げることができるかどうかの重要な要因の一つが、心の持ち方にあるとすれば、「運が強い」と信じることは、成功の秘訣と言っても過言ではないでしょう。

ともすると私たちは、運が弱いと思われる面にばかり注目しがちです。しかし、運が強い面も同程度、場合によってはそれ以上にあるのではないでしょうか。そもそも、同じ物事でも見方によっては運が強いということになります。溺れそうになった松下は、その出来事で助かった点に注目して自分は運が強いと考えています。また、自動車に衝突して電車のレールの上に投げ出されたけれど直前で電車が止まった、しかも傷一つない。なんと自分は運が強いのかとプラスに解釈しています。

でも私たちはどうでしょう。意識している人は少ないですが、紛争地域ではなくしかも先進国に生まれた。これだけでも随分運が強いと言えます。教育も受け、読み書きができる。さらに食べるに事欠かない。貧しい国の人々からすれば、たいへんうらやましい、運の強い人たちだと言われるに違いありません。そうしてみると、運が強いと信じるきっかけはたくさんあるように思えます。あとは自分次第です。

さて、皆さんは運が強いですか、それとも弱いですか。

 


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