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生き方

野村忠宏 オリンピック3連覇を支えた勝負哲学

マネジメント誌「衆知」

2017年02月08日 公開 2017年02月10日 更新

限界を超えれば結果がついてくる

大学に進学して、2年生になると、細川伸二先生にいろいろアドバイスをいただくようになりました。

細川先生は1984年のロサンゼルスオリンピックで60キロ級の金メダリストになった方です。私と同じ軽量級の大先輩です。

その細川先生にある日、「練習への取り組みが甘い」と叱咤されました。

「おまえは時間を気にしすぎている。残り時間を考えて、その時間の練習を乗り切ることしか考えていない。それでは、練習をこなすための練習だ」。ピシャリと、そう指摘されました。

その頃の私は「今日はやりたくないな」「面倒くさいな」「しんどいな」という思いも、時おり頭をもたげていました。練習に対する「甘さ」と「慣れ」が出て、一生懸命にやっているつもりの時もありました。その姿勢を見破られたのです。

「練習を練習と思うな。6分×13本の練習をすべてこなそうとしなくてもいい。その代わり、1本目から試合を意識しろ。最初から全力を出し切れ」

それ以降、1本目から全力で取り組むようにしました。残り時間など気にせず。何本目かが終わって、「先生、もう限界です」。そう言うと、「なんだ、おまえ、そんなもんか」と。

ふざけるな!……言葉はよくないですが、胸の内で思わず叫んでいました。心に火がついて、なにくそ!の思いで、全力で1本、2本、5本、8本……と、さらに練習を重ねていきました。

このがんばりによって、壁を一つ二つ乗り越えられた実感がありました。限界だと思っていた限界を突き抜けた感覚です。結果がついてくるようになったのは、この後からですね。

とはいえ、振り返ると、まだまだ私には甘さがありました。それを実感したのは、大学4年生でアトランタオリンピックの代表選手として臨んだ合宿やオリンピックの試合で、さらに上の世界、もっと厳しい世界があることを知ったからです。その上で、アトランタで戦いながら強くなっていったという実感もあります。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年9・10月号、特集「自分流を貫く」より、その一部を抜粋したものです。

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