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生き方

好きなことをして暮らしていい

岬龍一郎(「人間経営塾」主宰)

2011年10月13日 公開 2023年01月05日 更新

己の魂に忠実に「好きに生きる」

わたしは何もここで、サラリーマン諸氏に脱サラのすすめをしているのではない。あくまでも自分に合った人生を歩んで欲しいと思っているだけである。

人生50年時代ならいざ知らず、いまや人生80年時代である。先は長い。それなのに、会社の仕事が本当に好きであるならまだしも、不平不満をならべ、ただ給料のためにルーティン・ワークをこなし、好きなことも放棄して、じっと定年を待っている。

だが人生はその後もあるのだ。これでは一生がもったいないではないかと思うが、何の行動も起こさない。これは精神が老朽化しているからである。新渡戸稲造博士がこんなことを言っていたのを思い出す。

目の前の現実社会から離れて、しばらくのあいだ人生を理想化し、理想の天地を追うという美点は、年をとるにつれて次第になくなっていくように思われる。
このように理想が減って考え方が実際的になってくると、すぐそれを着実と呼んで賞賛する者もいるが、私にいわせると、それは俗化して若さがなくなっただけの話である。(『自分のための生きがい』)

人は誰しも"人生は一度きりだ"と思いながらも、一度安定した世界に身を置くと、精神もまたそれにならって怠惰になっていく。仕事に対する感動はとっくの昔に薄れ、多くの人はそれを「もう俺も若くないから」と年齢のせいにし、人生を半分あきらめてしまうのである。

映画王といわれたチャップリンは「人生で大切なことは、少しの希望と、少しのマネーと、そして少しの勇気である」といっているが、少しのマネーだけ抱いて、少しの希望も、少しの勇気も忘れてしまった姿がここにある。

とはいえ、もちろん現状の生活を維持しながら他を望むというのも虫がよすぎる。革命を起こしたあとはかならずその反動がくるように、新しいものを得るためには何かを捨てる覚悟も必要である。その覚悟をチャップリンは「少しの勇気」というのである。

前に述べたように、人間にとって最高の宝は財産でもなく地位でもなく名声でもない。おのれの魂に忠実に「好きに生きる」ということであり、生きている実感を日常の中で得ることである。

ある哲学者は「奴隷がもっとも悲惨なのは、奴隷たる生活に甘んじたとき」といっているが、現代人の多くはみずからの自由なる意思を放棄した日常を送っているといえはしまいか。

 

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