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歴史街道書評から

『歴史街道』編集部

2010年12月10日 公開 2022年08月17日 更新

『新徴組』

佐藤賢一 著
本書は新選組・沖田総司の義兄で、新徴組組頭を務めた沖田林太郎を主人公に据えた歴史小説である。 林太郎は蟠りを抱えていた。入婿の自分が沖田家を継ぎ、長男を儲けたことで、本来家を継ぐべきだった総司を、家に居辛くさせてしまったのだ。総司が林太郎の反対を押し切って新選組に加わることにより、その思いは決定的となる。総司への引け目から、林太郎は物事にどこか本気になれない性分になっていた。やがて新徴組隊士となった林太郎は、運命を変える人物と出会う。新徴組を預かる庄内藩重臣・酒井吉之丞である。吉之丞は顔も性格も総司に似た人物で、そんな彼に惹かれてともに戊辰戦争を戦ううち、林太郎は本当の自分を徐々に取り戻していく。
 知られざる英雄・酒井吉之丞の描写も魅力的だが、本書の見所は何といっても、林太郎の葛藤である。血こそ繋がらぬものの、林太郎は総司を本当の弟として、思いやり続けた。時代を動かした人物が注目を浴びる幕末にあって、主義主張よりも家族を第一とした男の姿に、深く胸打たれる。

『城下町時代MAP 関東編』

新創社 編
江戸、宇都宮、川越、水戸、小田原など、関東の城下町の成り立ち、歴史、都市機能、見所をオールカラーで緒介。古地図の上にトレーシングペーパー(半透明)の現代地図を重ね合わせると、昔の町割が一目瞭然で、眺めるだけでも楽しい。

『山口多聞』

松田十刻 著
第二航空戦隊司令官・山口多聞ほど、その死が惜しまれる提督も少ない。本書は真珠湾攻撃とミッドウェー海戦を軸に、卓越した戦闘指揮官に至るまでの生涯を追いながら、空母飛籠一隻で米機動部隊に挑んだ「闘将」の最期の姿を描き出す。

『橘花抄』

葉室 麟 著
筑前黒田藩士・立花重根と弟・峯均の物語。藩主の没後に始まった粛清で窮地に立たされた兄弟2人、また重根に引き取られた娘・卯乃が、己の信ずる道を貫き粛々と運命を受け容れていくさまが清々しい。峯均と剣士・天馬との決戦の場面も鮮やか。

『東京の古墳を歩く』

大塚初重 監修
東京タワーのほど近くに、大型古墳があることをご存じだろうか。古墳といえば近畿が有名だが、実は都内にも数多く残り、東京は古墳王国といっても過言ではないほど。本書は、そんな都内の古墳を紹介。地図と写真が充実しているのがうれしい。

歴史街道 2011年1月号

「ロシアは、全くのところ愚弄的というより他に表わしようのない態度で、徹頭徹尾、日本を取り扱っていた」。ドイツ人医師ベルツの言葉です。明治37年 (1904)初頭、南下するロシアは満洲を不法占拠した上で、朝鮮半島支配に乗り出しました。存亡の危機に日本は交渉による解決を望みますが、ロシアは聞く耳持たず、極東への戦力を増強させます。当時ロシアの海軍力は日本の2倍、陸軍力は15倍。大人と子供でした。しかし、それを承知で日本は同年2月、開戦に踏み切ります。まず勝ち目のない戦いに、政治家、軍人、民間人を問わず、一丸となって起ち上がった「日露開戦」。その時、日本人を突き動かしたものが何であったのかを探ります。第二特集は「忠臣蔵の真実Q&A」です。

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