「偏差値バカ」いらない――人の心を動かす言葉のつくり方とは?
2018年03月13日 公開 2022年06月07日 更新
※本記事は、川上徹也著『伝わる人は「1行」でツカむ』(PHP文庫)より、一部を抜粋編集したものです。
「強い言葉」を生むために、最低限おさえきたい2つのポイント
言葉にも強い弱いがあります。強い言葉とは、「印象に残る」「心に刺さる」「行動したくなる」言葉のことです。逆に弱い言葉とは、「手垢のついた」「ありきたり」「心が動かない」言葉です。
読み手に「自分に関係がある」と思ってもらうためには、強い言葉を使う必要があります。弱い言葉では右から左にスルーされてしまうからです。
そのためには、まず具体的に書くことと、常套句をできるだけ使わないことから始めましょう。
では、強い言葉とはどんな言葉でしょうか?
たとえば、以下の見本は『AERA』の「東大特集」の号につけられたキャッチコピーです。
「偏差値バカ」という言葉が強いですよね。これは言葉の組み合わせによる化学反応によっておきています。
次の見本は、光文社発行の女性誌『STORY』の表紙に載っていたキャッチコピーです。
こちらも「断私離」という言葉が強いですよね。これは、もともとあってブームになった「断捨離」という造語から造語をつくるというテクニックです。
この「強い言葉」をつくるためのテクニックは他にもあり、関心のある方は拙著『伝わる人は「1行」でツカむ』(PHP文庫)をお読みいただきたいのですが、言葉の強い弱いは、その言葉が使われる場面によっても大きく変化することも心に留めておいてください。ある場面では強い言葉が、違う場面では弱い言葉になることも珍しくありません。
前記の例も、雑誌の見出しだから「強い言葉」になり得ましたが、状況によっては弱い言葉になる場合もあります。この単語を使えば必ず強いフレーズができる、という「魔法の言葉」は存在しないのです。
しかし最低限、以下の2つを頭の隅に置いて書けば、強い言葉になる可能性は高まります。
1)ついつい書いてしまう常套句を避ける
2)できるだけ具体的に書く
※1)と2)は共通する場合も多いです
人間は意識している、していないにかかわらず、毎日膨大なフレーズに接しているので、知らず知らずに影響を受けています。何も考えずにキャッチコピーを書くと、ついついそれらしいフレーズを書いてしまいがちです。たとえば、私たちがよく利用する飲食店だと、「こだわりの」「厳選された」「独自の製法」「旬の」「くつろぎの空間」「隠れ家」といった言葉が常套句です。
十数年前までならともかく、残念ながら現在の日本では、このような言葉では読み手の心に何ひとつイメージを残すことができません。どこの店でも使っているような手垢のついた常套句だからです。
これでは何も言ってないのと同じ。存在に気づかれない空気のような存在「空気コピー」と言ってもいいでしょう。