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田坂広志 叡智を発揮する「賢明なもう一人の自分」を呼び起こす技法

田坂広志

2018年05月09日 公開 2024年12月16日 更新

誰にも備わる「論理を超えた鋭い直感力」と「データベースを超えた膨大な記憶力」

誰もが身につけたいと願う、「深く考える力」。

それは、決して、長い時間をかけて考えることや、
一生懸命に頭を絞って考えることではない。

それは、あなたの中にいる「賢明なもう一人の自分」、
その自分と対話することに他ならない。

そして、その「もう一人の自分」が、我々の思考を深め、思索を深めてくれる。
実際、この「賢明なもう一人の自分」は我々の想像を超えた素晴らしい能力を持っている。

一つは、論理思考を超えた「鋭い直観力」。
もう一つは、データベースを超えた「膨大な記憶力」。

では、どうすれば、その「賢明なもう一人の自分」が心の奥深くから現れてくるのか。そして、その叡智を発揮し始めるのか。

そのための技法として、「五つの技法」を『深く考える力』(PHP研究所)で述べたが、本稿ではそのうちの、二つを、分かりやすく述べたい。

 

考えを文章に表すことで、「もう一人の自分」が新たな視点を囁きはじめる

第一の技法は、まず、一度、自分の考えを「文章」にして表してみることである。
それだけで、自然に、「賢明なもう一人の自分」が現れてくる。

すなわち、あるテーマについて、自分の考えや思いを「文章」にして書いてみる。次に、一度、心を静め、しばらくしてそれを読み直す。

すると、心の奥深くから「賢明なもう一人の自分」が現れてくる。そして、この「もう一人の自分」が、違う視点から見るという形で、考えを深めてくれる。

例えば、夜、ある一つの考えを思いつき、文章にしていく。そのときは、自分の考えをうまく文章にできたと思い、この文章を明日の会議で発表しようなどと考える。しかし、一晩寝て、翌朝、心を整え、その文章を読み返すと、ふと「もう一人の自分」が現れてくる。

そして、「いや、この考えだけではない。他の考えもある」と語りかけてくる。

そのとき、昨夜の考えが、どこか一面的になっていたことに気がつく。すると、「もう一人の自分」が、「こうした視点から考えてみることも必要では」と囁きかけてくる。

その結果、新たな視点、異なった視点で、そのテーマを考えてみようという気持ちになる。
こうした経験を持つ読者は、多いだろう。
しかし、ここで大切なことは、こうした思考のプロセスを「明確な技法」として身につけることである。

では、「明確な技法」とは、何か。
それは、次の二つの技法である。

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アウトプットの先にある「空」の状況に、アイデアは待っている

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